電話応対でCS向上事例

-株式会社SBI 証券-
オペレーターの個性を活かす教育方針で、「企業電話応対コンテスト」のゴールドランク企業に

記事ID:C20004

「顧客中心主義」の経営理念のもと、オンライン総合証券の先駆者として業界トップの地位を築いてきたSBI証券。店舗を持たない同社にとって、唯一の総合的な顧客接点ともいえるカスタマーサービス部(CS部)の取り組みをお聞きしました。

御社の特色について教えてください。

  • カスタマーサービス部 課長
    酒井 智子氏

     SBI証券は1999年10月にインターネット取引サービスを開始し、口座開設数は累計で540万口座を超える、業界トップの証券会社です。弊社は、店舗を持たない証券会社のため、お客さまとの唯一の接点が私たちカスタマーサービス部門と言えます。今、CS部は『不満ゼロへの挑戦』というスローガンのもと「“できない”のない応対」を心がけています。(酒井氏)

最重要KPI※1に「ありがとう率」を設けることで、真の顧客中心主義への転換を図る

「“できない”のない応対」に向け、具体的に取り組んでいることを教えてください。

  • カスタマーサービス部 次長
    長島 佳子氏

     日本電信電話ユーザ協会の『電話応対コンクール』『企業電話応対コンテスト』に参加することはもちろん、毎年少しずつ変化する『企業電話応対コンテスト』の評価基準を参考に、オペレーターのモニタリング指導を行っております。具体的には、お客さまとの応対音声をランダムに抽出して、初期対応から問い合わせへの回答、クロージングといった一連の応対をオリジナルの指標で点数化するものです。結果は、評価者のコメントと合わせてオペレーターにフィードバックされ、日々の業務改善に活かしています。また、これはオペレーター表彰制度の評価軸の一つにもなっています。(長島氏)

オペレーター表彰制度の評価軸には、ほかにどのようなものがありますか。

 評価軸をKPIと呼んでいますが、最重要KPIは「ありがとう率」です。「ありがとう率」は、お客さまから「ありがとう」と言われた回数を数え、その数を一ヵ月の応対件数で割って算出しています。ネット証券がスタートした頃は、格安な手数料を背景に口座開設が急増したため、お客さまからの入電が爆発的に増えました。とにかく電話を受けなければならないという状態だったので、当初は、着信数に対して放棄した数を算出した「放棄呼率」を最重要KPIにしていました。ただし、単に電話に出るだけではお客さまにご満足いただける応対とは言えません。SBI証券は経営理念に『顧客中心主義』を掲げていますが、実際には「自己中心主義」な応対になってしまっていたのです。そこで、KPIをお客さま視点にぐっと振り向けるために「ありがとう率」を最重要KPIに設定しました。(長島氏)

「ありがとう率」を最重要KPIとしたことで、何か変化はありましたか。

 従業員がお客さまに向かう姿勢が変わりました。お客さまから「ありがとう」をいただくために自分たちが何をするべきか考えるようになり、自然とお客さま本意の応対を心がけるようになったと思います。また、お客さまからの評価も高まっています。「評判通りの対応だね」と、預けている資産を他社から移されるお客さまも少なくありません。(酒井氏)

応対品質を高めるためには、トークスクリプト※2に依存せずに自分の言葉で話すことが大事

2019年度の「企業電話応対コンテスト」では、「ゴールドランク企業」に表彰されています。高い評価を受けるヒントを教えてください。

  • カスタマーサービス部長
    河田 裕司氏

     最重要KPIを「ありがとう率」に変えた時、トークスクリプトをすべて排除しました。お客さまのお話に合わせて臨機応変に対応することが、顧客満足度を高める上で最も重要だと考えたからです。トークスクリプトがあると、それに載っていることを回答しようと、質問の意図を取り違えてしまうことがあります。それよりも、オペレーターそれぞれが持っている個性を発揮し、自分の言葉で話ができるようになることが重要だと考えます。また、業務上の無駄なものは徹底的に排除すべきですが、お客さまとの会話はいくら時間をかけてもいいという方針です。例えば、電話後のアフターコールワークなどは、自動化するなどして徹底的に効率化し、その分の時間をお客さまとの会話にあてています。ただし、会話をダラダラ続けても、お客さまの意向と合っていなければ「ありがとう率」は上がりません。分かりやすく簡潔に説明するためにはどうすればいいかを考えると、自然と通話時間も短くなります。このように、自分たちで物ごとを考え、改善し続けられるような教育方針をとっています。(河田氏)

「電話応対コンクール」出場後はお客さまに向き合う姿勢が変わり、リーダークラスに成長

「電話応対コンクール」でも多数の入賞者を輩出しています。御社にとって、「電話応対コンクール」はどのような位置づけでしょうか。

 『電話応対コンクール』には、2008年から毎年参加していて、毎年入賞者が出ています。最初は、参加することに意義があると思っていましたが、回を重ねるごとに上を目指したいと考えるようになりました。全国大会にはこれまで6人が出場しており、現在の目標は全国大会で優勝することです。『電話応対コンクール』の課題は発声や応対品質だけでなく、説明が分かりやすいかなど、様々な評価基準がバランスよく組み込まれています。これらの観点を普段の電話応対でも意識して、日々応対品質を高めています。コンクールに出場した後は、お客さまに向き合う姿勢や考え方が大きく変わります。また、会社の代表として参加するので、会社に対するエンゲージメントも高まると思います。さらに、自分のスキルアップだけでなく、後輩を育てることやチーム全体を高めていこうという気持ちを持つようになるのだと思います。結果的に、電話応対コンクール経験者がチームリーダーになっていますね。(酒井氏)

コロナ対策も本社に先駆けて実施することで、オペレーターが安心して働ける環境を提供

今回のコロナ禍で、カスタマーセンター業務に何か変化はありましたか。

 弊社は店舗を持たないため、もともとカスタマーサービスセンターが重要視されていたのですが、コロナ禍で重要性がより強く社内に認知されたと感じます。ネットを通じてサービスを提供している企業は、コールセンター業務を止めることはできません。事業のライフラインともいえるので、本社に先駆けてウイルスを除去できる紫外線照射装置が設置されるなど、職場環境の整備に真っ先に取組みました。また、通勤は公共交通機関を使うことが義務付けられていましたが、コロナで電車に乗りたくないという意見も多かったので、一時的に自動車通勤を認めました。お子さんが家にいる場合などは時短勤務を認めたり、時短分の金銭的な保証も続けています。コロナ禍で働くことへの不安要素を可能な限り取り除いたので、不満の声はあまりなかったと思います。(長島氏)

アフターコロナは、テキストコミュニケーションに積極的に対応していきたい

アフターコロナの顧客接点について、何か準備していることはありますか。

 コロナ前は電話での問い合わせが9割でしたが、コロナ禍でコミュニケーション手段が増え、テキストコミュニケーションが浸透してきました。新型コロナウイルスは、インフルエンザのように季節性があると言われていますので、今後も一時的にカスタマーセンターの人員が足りなくなることが想定されます。お客さまにご迷惑をおかけしないためにも「チャットボット」などテキストコミュニケーションを加速させなければなりません。また、株取引のお客さまはご年配の方が多いため、スマートスピーカー※3のようにテキストを音声にすることも必要です。今後、大幅に変わっていくであろう新しい顧客サポートの形に、スピード感を持って対応していきたいですね。(河田氏)

※1 KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標。
※2 トークスクリプト:電話応対する際に、お手本となる台本(シナリオ)のこと。
※3 スマートスピーカー:音声の認識が可能な人工知能を搭載しているスピーカー。

会社名 株式会社SBI証券
設立 1999年(平成11年)4月26日
本店所在地 東京都港区六本木1-6-1
代表取締役社長 髙村 正人
資本金 483億2,313万円
事業内容 オンライン総合証券
URL https://www.sbisec.co.jp

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