電話応対でCS向上事例
-株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ-お客様センターにおける言語生成AI導入で 要約業務の品質向上と業務負荷削減
記事ID:C20084
北陸から近畿・中国・九州北部エリアの通勤・通学輸送を行うJR西日本。そのグループ企業である同社では、一日約6,000件のお問い合わせなどに対応しています。通話内容の要約業務に言語生成AIを導入した経緯やその効果についてうかがいました。
御社の業務内容についてお聞かせください。
(写真右)取締役 第1オペレーション事業部長 岩﨑 隆利氏(写真左)第1オペレーション事業部 尼崎コンタクトセンター課長 林 美智
岩﨑氏:当社は、JR西日本のグループ会社として「JR西日本お客様センター(以下、お客様センター)」の運営のほか、忘れ物・インターネット予約サポート、ジパング倶楽部、SMART ICOCA、モバイルICOCA、WESTERなどJRの各種サービスに関する応対サービスを行っております。コンタクトセンターに電話やメール、チャットなどで寄せられるお問い合わせの数は一日合計約6,000件で、お客さまとJR西日本グループとの架け橋として、高品質な応対サービスの提供を目指しています。お客様センターを運営しているのは、尼崎コンタクトセンターと広島コンタクトセンターの2拠点で、規模としては尼崎が82席で人数が100名、広島が27席で33名が在籍しています。尼崎は2004年に開設され、当初は京阪神の駅の問い合わせ窓口という役割を担ってきました。その後、広島コンタクトセンターが2017年に開設されました。
林氏:お客さまからのお電話は、鉄道全般に関する「お問い合わせ」と「ご意見・ご要望」の二つに大きく分類できます。比率としては、お問い合わせが97%、ご意見・ご要望が3%ですが、どちらも内容は多岐にわたります。例えば、時刻や運賃など比較的簡単なお問い合わせから、駅の設備や新商品に関するご要望、鉄道営業制度に関わる質問など高度な内容までさまざまです。最近では車いす介助に関するご要望が増えてきています。また、平日の場合、通勤ラッシュの朝と夕方の時間帯が特にコール数が多く、曜日では週の後半、木曜から金曜に向けて徐々に多くなる傾向があります。そうしたタイミングで輸送障害が発生すると着電数も急増し、応対に追われる状況になることもあります。
個人差の出やすい応対記録のテキスト要約
お客様センターでは、これまでどのような課題があったのでしょうか。
オペレーターによる応対の様子
岩﨑氏:尼崎・広島両コンタクトセンターでは、電話やメールでの応対後、お客さまへのスムーズで正確な応対やサービス改善に結びつけるため、応対記録をテキストで要約し、それをスーパーバイザー(SV)がチェックして社内の関連部署と情報連携することを義務づけています。しかし、1 つの項目に対し、ある応対者は1行だけなのに別の人は3~4行のコメントが記入されているなど通話内容の要約に個人差がでており、この「要約のばらつき」が問題となっていました。また、「後処理時間が長いこと」や、それを確認する「サポート者であるSVの負荷増」、そして、「VOC分析※が不十分」といった弊害も出ていました。ちなみに、ご意見・ご要望についての分析はそれまでもできていたのですが、数の多いお問い合わせについては手つかずの状態でした。さらに、オペレーターの人材確保が難しくなっており、特にコロナ禍でもコンタクトセンター業務を継続しなくてはならなかったため、運営状況が大変厳しい時期もありました。そうした中で、オペレーター一人ひとりの生産性をどうやって上げるかといった課題が浮き彫りとなっていたのです。
オペレーター一人ひとりの生産性向上のために
AI導入までの経緯をお聞かせください。
岩﨑氏:要約業務の品質向上と業務負荷削減のために目をつけたのが、言語生成AIの活用でした。そこで、メールの応対の関連で以前からお付き合いのあった言語生成AIの開発を行う企業に相談し、通話内容の要約業務における実証実験を2023年5月から8月の3ヵ月間、言語生成AIサービスを使って検証を行いました。我々の間でも理想の要約結果について検討したところ、いわゆる5W1Hとお客さまのお申し出内容、オペレーターの回答を一つのフォーマットとして出力できる形が見えてきましたので、その方向で調整を進め、同年9月後半から、尼崎・広島両コンタクトセンターで本格的に導入を開始しました。
図 :電話要約AIの利用画面(※内容はサンプル)
AI導入によりお客さまの声に耳を傾けることに注力
言語生成AI導入でどのような効果がありましたか。
岩﨑氏:コールセンター業務でのKPI(重要業績評価指標)の一つとして「AHT(平均処理時間)」がありますが、AI導入初期である2023年10月の月間AHT と2024年1月のそれとを比較すると、1件あたり平均74秒も短縮できました。ひと月のオペレーターの通話実績が約5万件ですので、約1,028時間分、お客さまへのサービスに振り向ける時間を生み出せたと考えています。また、SVの業務にも効果が表れました。SVの超過勤務の実績について、2023年10月と2024年1月で比べたところ、約1割ほど減少しています。もちろん要約結果についても、単語や文章のつながりを適切に予測してテキスト生成 が 行われており、驚くほど高精度な要約ですので、オペレーターの間でも大変好評です。
図:AI 導入前後の業務フローの変化
最後に、今後の展開について教えてください。
岩﨑氏:お話ししました通り、通話内容の要約については他部署との情報連携に十分なアウトプットが可能となりました。今後はVOC分析の観点からより細やかな分析ができるよう、自動でタグづけやカテゴリー分けを行い加工することを検討しています。当社は中期経営計画において、戦略拠点としてお客様センターのありたい姿を掲げ、コンタクトチャネルの拡充、オペレーション支援、VOC分析の深度化を進め、顧客体験の向上を目指しており、これらの実現のためには言語生成AIを活用した業務の高度化が不可欠です。今回の取り組みはそのスタートとして位置づけており、これからもコンタクトセンターの業務全体の効率化、高度化を進めていく予定です。
- ※ VOC分析
- VOCは「Voice Of Customer」の略。顧客の意見や声を収集・分析して企業活動に活かす分析手法。
会社名 | 株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ |
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設 立 | 2009年(平成21年)8月3日 |
所在地 | 兵庫県尼崎市潮江一丁目2番12号 |
代表取締役社長 | 堤 恵理子 |
事業内容 | コールセンター運営及びテレマーケティングに関する受託業務、教育、研修、コンサルティング業務及び市場調査・分析 |
社員数 | 529名(2024年6月1日現在)※派遣社員含む |
URL | https://www.jw-cr.co.jp/ |
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