電話応対でCS向上事例
-萩市役所-電話応対コンクールの事前研修を新規採用職員向けの応対品質向上の取り組みに活用
記事ID:C20090
山口県の北部に位置する萩市は、豊かな自然と歴史的な町並みが印象的な城下町です。萩市役所には、住民の方に加えて観光客からも多くのお問い合わせが寄せられます。今回は、電話応対をはじめとする職員の接遇に関わる研修を担当する山中 智子氏に話をうかがいました。
萩市とご自身の担当業務についてお聞かせください。
総務部人事課
課長補佐
山中 智子氏
萩市は山口県の北部に位置する城下町であり、世界遺産「明治日本の産業革命遺産」を構成する萩反射炉や恵美須ヶ鼻造船所跡、松下村塾をはじめ、町中の至るところに文化財が散見されます。さらに火山によって引き起こされた自然の見どころも多く、2018年には「日本ジオパーク」に認定されています。萩は「まちじゅう」に豊かな文化や歴史、自然の「おたから」が点在する屋根のない広い博物館=「まちじゅう博物館」であるとして、まちづくりや観光地づくりを推進しています。
私が所属する総務部人事課は、職員の採用や研修、給与など人事に関連する業務を行っており、市役所に新規採用で入庁した職員向けに電話応対をはじめとする研修なども行っています。
全職員が“市役所を代表している”という自覚を持って応対する
電話応対の体制や考え方、取り組みについてお聞かせください。
電話応対の様子
萩市役所では、部署ごとの電話回線以外に代表電話を設けています。代表電話は電話交換業務を委託しているスタッフが受け、それぞれの担当に振り分けています。各部署の電話については担当者が直接応対しています。特に電話応対をする職員は決めておらず、基本的に全職員が応対する形となっています。市民の皆さまからの暮らしに関わるさまざまなお問い合わせに加え、市外からの観光に関するお問い合わせも数多くあります。電話に出る際は、全職員が市役所を代表しているという自覚のもと応対してもらうよう、「萩市役所 人事課 山中です」などと、必ず自分の所属と名前を名乗るように指導しています。
なお、前述のように萩市は観光の町でもありますので、新規採用の職員は電話応対研修とは別に「観光地案内研修」という取り組みも行っております。この研修は、実践型の研修で、実際に自分たちで萩市の観光案内を行うというものです。研修内容は、萩市に観光に来られた方にどのように案内をするかというシミュレーションになります。まず職員を数名ずつ4つの班に分けて、1か所につき1つの班が案内役、その他の班が観光客役となる形で行います。新規採用職員は、近年は毎年20名程度ですが、中には萩市の出身ではない職員もいます。接遇について学ぶことに加えて、萩市のことを知ってもらう機会にもなっています。
電話応対コンクールの事前研修を日々の電話応対に活かす
電話応対コンクールに対する取り組みを教えてください。
電話応対コンクールの事前研修の様子
電話応対コンクール(以下、コンクール)は、萩市が合併した2005年以降は毎年参加しており、2016年ごろからは、毎年20名ほどの新規採用の職員がほぼ全員参加しています。コンクール参加にあたって、日本電信電話ユーザ協会に事前研修をしていただくのですが、職員の電話応対の研修として非常に役立っています。昨今の若手職員は、コミュニケーション手段がメールやSNS が中心となっていて、電話を苦手とする傾向があります。ましてや、誰からかかってくるのかが分からない電話に出るのはハードルが高いようです。事前研修は実際の受話器を使って、6〜7名ごと半日ほどかけてみっちり行います。はじめに職員が普段通りに電話応対を行い、それに対して講師の方が、話すスピードから言葉づかい、最初に名乗る際の間の取り方、自分では気づきにくい口ぐせまで、マンツーマンで指導してくださるので、実践的な学びになると実感しています。萩市の場合、コンクール参加の目的は大会で結果を残すというのではなく、事前研修で得た経験を実践に応用する、つまり日々の電話応対に活かすことを第一としています。
ツールのデジタル化は進んでも最後は電話応対がカギ
最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。
電話応対の様子
萩市では3年ほど前にDX 推進室を立ち上げ、デジタル化による業務改革を進めています。2021年には、チャットツールを使ったアプリケーションである萩市総合アプリ「はぎなび」の運用を開始しました。
このツールは、例えば「道路が陥没している」など、道路施設や観光・文化財施設、公共施設などに不具合があった時に、市民の方が気軽にスマートフォンで連絡できるものです。その連絡を受けて、市役所は迅速に適切な対応を行うことができます。2022年には災害発生情報や避難所情報などが分かる防災情報機能、2023年にはごみ収集日の通知や分別方法が検索できるごみ出し便利機能を追加し、より便利に使いやすくアップグレードし、今後も機能拡充を進めていく予定です。そのほかには、2023年に市役所の総合窓口の混雑情報をスマートフォンやパソコンで確認できるサービスも開始しています。例えば、年度末の前後は窓口の順番を待つ市民の皆さんで市役所内の椅子が埋まってしまうほど、混み合うこともあります。そういった際に、駐車場など市役所付近の場所で待っていただきながら、スマートフォン等で自分の順番を確認するといった使い方ができます。
新人研修の一環として観光地案内を体験。実践的な研修を通して接遇を学んでもらう
今後は、市民の皆さまや観光客とのコミュニケーションに関して、ますますデジタル化が進んでいくと思われます。例えば、市役所の開庁時間にかかわらずお問い合わせを受けつける体制を構築したいと考えても、近年の働き方を踏まえると窓口や電話応対に職員を配置することは困難でしょう。その際、チャットボットを設置してFAQへ導くことで、24時間対応を可能にするということが考えられます。とはいえ、込み入った相談などはデジタルツールだけで解決するのが難しいことも多々あります。
市民一人ひとりに寄り添った応対をするために、電話応対の果たす役割はますます重要になっていくと思われます。新規採用職員への研修や電話応対コンクールへの参加など、電話応対の質の向上に向けた取り組みを今後も継続していきたいと考えております。
組織名 | 萩市役所 |
---|---|
所在地 | 山口県萩市大字江向510番地 |
市長 | 田中 文夫 |
URL | https://www.city.hagi.lg.jp/ |
〔ユーザ協会会員〕 |
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