電話応対でCS向上事例

-新明和工業株式会社-
これからもワンランク上の「ありがとうと言われる対応」を目指したい

記事ID:C20049

戦前の航空機製造に始まり、100年以上もモノづくりの事業を展開してきた新明和工業株式会社。駐車場設備をはじめとするさまざまな機器の問い合わせに、24時間365日応対しているパーキングシステム事業部のお客様センターに、応対品質の改善への取り組みについて聞きました。

事業概要をお聞かせください。

修理の様子

井下氏:新明和工業は、兵庫県宝塚市に本社を置く輸送機器、産業機器の製造会社です。その歴史は長く、戦前の航空機製造にさかのぼります。以来、100年以上も「モノづくりを通じて社会に貢献したい」という想いとともに事業領域を広げてきました。現在は「航空機事業」に加え、働く車と言われる特装車事業、水環境の循環を担う流体事業、産業機械のシステム事業、パーキングシステム事業の5つの柱で事業を展開しています。その中で、私たちお客様センターは、パーキングシステムの故障受付や特装車、産業機械の緊急連絡などの業務を担っています。

コールセンター設置の経緯をお聞かせください。

パーキングシステム事業部
お客様センター センター長
井下 伸一氏

井下氏:弊社の製品は専門性の高い機械が中心で、以前は問い合わせといっても職員が点検に伺った際に顔見知りの担当者から相談されるというものでした。しかし、時代の変化により、立体駐車場などは一般の方が月極で利用したり、昼夜を問わず車を出し入れしたりするようになったことで、電話での問い合わせが格段と増えました。そこで、コールセンターが必要になり、関東と関西に1拠点ずつ設置されました。当時はそれぞれ複数台の電話機で対応していましたが、現在のクラウド体制に変更したのは8年ほど前からです。そのきっかけとなったのは東日本大震災です。当時は東京でも計画停電が行われていました。地震発生当時は、お客様センターが東京オフィスにしかありませんでしたので、万が一、地震の影響で東京オフィスが停電したり、閉鎖されてしまった場合は、お客さまからの電話をまったく受けられなくなってしまいます。BCPの観点からも、各拠点で同じ内容・同じ品質のサービスを提供できるよう、クラウドシステムが必要だという判断になりました。コロナ禍の今でこそ、コールセンターもオンライン化が進みましたが、弊社が仮想統合システムを導入したのは8年前ですので、先進的な取り組みだったのだと思います。

スローガンは「ワンランク上の≪ありがとうと言われる対応≫を目指して」

電話応対の体制と、大切にしている価値観をお聞かせください。

コールセンター(東京)

井下氏:現在、お客様センターは、東京、大阪、名古屋にオフィスを構え、総勢31名が24時間365日、3交代制で勤務しています。オフィスは3拠点ありますが、先述のとおり全国どこから電話が入っても共通の基盤で応対できるよう、画像と音声の仮想統合システムを構築して一つのセンターとして運用しています。そして私たちは、『ワンランク上の≪ありがとうと言われる対応≫を目指して』というスローガンを10年前に定めて、日々実践しています。お客様センターができる前は、機械の故障を復旧させる技術者が電話応対を担当していたため、応対品質は二の次という風潮がありました。ある時、お客さまから「技術者が応対するなんて、あなたの会社は大丈夫?」とお叱りの声をいただき、そこから本格的に応対品質の改善に取り組みました。

「ありがとう」の数をKPIにしているそうですが、どのような効果がありますか。

オペレーターリーダー
鈴木 恵利子氏

鈴木氏:お客さまからいただいた「ありがとう」の数は、オペレーターが自分でシステムに入力し、月に1回集計しています。結果はグラフで掲示され、ほかのスタッフの数値も見えるようになっているので、自ずと意識が高まりますね。成績上位者を目指すスタッフの存在が、ほかのスタッフにとって良い刺激となるようで、コールセンター全体のクオリティ向上につながっていると思います。

他に、貴社で応対力向上のために力を入れていることを教えてください。

研修の様子

井下氏:外部講師を招いた研修も重要ですが、新明和工業では内部研修を重視しています。内部研修は、皆で創意工夫をしながら作り上げるというもので、手作り感はありますが、共通意識を持って取り組めております。その一例として、最近では「アンガーマネジメント」に取り組みました。課題に沿った質問やその解答案、トークスクリプトまで自分たちで作成しています。業務改善の場として、月に1回スーパーバイザー(SV)を中心にリーダー会議があるのですが、内部研修のテーマはリーダー会議の話し合いの中で決められ、決定事項をメンバーに伝える形で活動しています。これは、上司から言われてしぶしぶ始めたことではなく、リーダーが自発的に取り組んだことです。リーダーが自発的に考えて実行することで、組織全体の責任感も高まっていると感じています。

電話応対コンクールを通じて、相手の気持ちに寄り添った応対が浸透

電話応対コンクールに取り組まれたきっかけを教えてください。

井下氏:2017年から参加しています。以前は上長が応対品質の改善を指示しても、本人は「クレームがあるわけではないから変える必要がない」と考え、改善につながらないといったこともありました。そこで、対外的な電話応対コンクールに出場して評価してもらうことが必要だと判断しました。結果はD 判定という一番下の評価で、自分たちのレベルの低さを自覚せざるを得ませんでした。そこから、電話応対力の定期点検を目的に、毎年参加しております。最近は、東京のコールセンターに在籍するメンバーが東京都大会に出場するまでになり、どこに出しても恥ずかしくないレベルになってきたと感じています。

オペレーターチーフ
大日向 敦子氏

大日向氏:以前は早期に故障を解決することが重要で、それがお客さまの満足につながると考えていました。もちろんそれも大事ですが、電話応対コンクールを通じて、お客さまが急いでいる状況を理解し、気持ちに寄り添うことが大切なのだという意識が浸透してきました。「お急ぎのところ申し訳ございません。早期に解決したいので現在の状況を教えてください」と、一度お客さまの気持ちを受け止めてから、故障対応につなげてきたので、電話応対コンクールでも評価されるようになってきたのだと思います。

「電話応対技能検定(もしもし検定)」も活用されていますが、どのような効果を感じますか。

オペレーターリーダー
金田 美紅氏

金田氏:もしもし検定の出題内容は、必ずしも故障受付の業務に直結するものばかりではありません。ただ、そうした一般的な応対の知識マナーや常識を学ぶことが貴重な機会になると感じています。基本ができていないと、咄嗟の時に応用が利かないので、お客様センターだけでなく、パーキングシステム事業部では、営業職を含む直接お客さまと接する部門の新入社員は全員、もしもし検定を受検しています。検定のお墨つきをもらうことで、応対力に自信が持てるようになりました。

お客さまだけでなく、社内からも「ありがとう」と言ってもらえるセンターにしたい

最後に、今後の目標についてお聞かせください。

井下氏:他社のコールセンターに見学に行くと、「あなたの会社ではコールセンターは部ですか、課ですか、係ですか」と聞かれることがあります。弊社では部に昇格しました。部になることは、社内でお客様センターの地位が向上したことを意味しますし、何より会社がお客さまに向き合う姿勢の表れだと思います。これからも、一人ひとりがお客さまからワンランク上の「ありがとう」と言ってもらえる応対を目指すだけでなく、自然な形で周囲を巻き込み、社内からも「ありがとう」と言ってもらえるセンターにしたいですね。

※ KPI
Key Performance Indicatorの略で「重要業績評価指標」のこと。目標の達成に向かってプロセスが適切に実行されているかどうかを計測する役割を持つ。
会社名 新明和工業株式会社
設 立 1949年(昭和24年)
本社所在地 兵庫県宝塚市新明和町1-1
取締役社長 五十川 龍之
事業内容 輸送用機器製造業
URL https://www.shinmaywa.co.jp/
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