電話応対でCS向上事例

-京都生活協同組合-
「頼もしき隣人たらん」という理念をコールセンターでも実践したい

記事ID:C20038

京都府の生協として購買、共済、福祉、葬祭などの事業を行う京都生活協同組合。「隣人に対する心持ちを薄れさせず、お互いに頼もしい隣人となりましょう」という意味の「頼もしき隣人たらん」という理念に基づき、宅配サービスの一環で高齢者の見守りも行っています。今回は組合員コールセンターに、電話応対において留意していることをお聞きしました。

事業概要についてお聞かせください。

組合員コールセンター
センター長 西森 裕幸 氏

西森氏:京都生協の購買事業には、宅配の支部が10ヵ所、店舗が18ヵ所あります。購買以外にも、共済、福祉や葬祭など、暮らしに関連する事業を手がけています。従業員約1,600名のうち、組合員コールセンターには、パート・アルバイトの42名に加えて、私ども正規職員が6名、計48名で組合員からの電話やメールの問い合わせに応対しています。問い合わせの内容は時期によって異なりますが、通年で多いのは、商品に関すること、配達時間や箱の回収など、配達に関するものが多いですね。生協の組合員の平均年齢は約60歳で、年代別構成比は70歳以上が全体の約1/3を占めています。高齢の方からの問い合わせが多いことが特徴といえます。

現場の配達員と連携を取り、見守りの役割も担っている

高齢の方への応対で、気をつけている点をお聞かせください。

組合員コールセンター
お問合せ担当 船岡 敬一 氏

船岡氏:高齢の方は高い声を聞きとりにくいことがありますので、なるべく低い声でゆっくりと、分かりやすい表現で話すことを心がけています。また、最近は認知症の方も増えてきており、話がかみ合わない、同じ話を繰り返すといった方もいらっしゃいます。意思疎通が難しい場合は、電話だけで完結するのではなく、現場の事業所や配達員と連携して応対しています。配達員は地域の見守りの役割も担っており、配達時間に誰も出てこなかったり、ポストに新聞や郵便物が溢れていて、違和感を感じた配達員が、家の中で倒れている組合員を発見した事例もあります。

組合員コールセンター
お問合せチーフ 樋口 哲也氏

樋口氏:認知症の方など、電話応対に苦慮する場合もありますが、私たちは組合員の「この方は、こういう事情がある」という情報を持っています。電話がかかってきた際に、「この方は認知症なので、ご家族に連絡してください」などとシステム上に表示されるので、状況に合った応対ができています。生協の宅配は地域に根づいたサービスでもあるので、行政などとも連携して、組合員に寄り添ったサービスを提供していきたいですね。

「頼もしき隣人たらん」という理念の実現に向け、クレドミーティングを実施

電話応対教育の基本方針や、実際に取り組んでいることを教えてください。

店舗接客の様子

西森氏:京都生協は、『頼もしき隣人たらん』という理念を掲げています。相手を気にかけ、困っていることは、ともに考え行動し、暮らしに寄り添い、支え合っていく「頼もしき存在」であり続けるというものです。それを実現するために、八つの行動指針を掲げています(下記参照)。また、この行動指針に沿った活動ができているかを、「クレドミーティング」というコミュニケーターの少人数の会議で定期的に確認しています。そこで出た意見や実践例は、週2回の正規職員の会議で共有するだけでなく、担当のスーパーバイザーから個々のコミュニケーターへ伝えたり、パソコンの掲示板などで応対のヒントやアドバイスとして掲載したりしています。

京都生協らしい電話応対というのはあるのでしょうか。

船岡氏:京都という土地柄を考慮する必要があると思います。京都の人は本音と建て前を使い分ける傾向があるとよく言われますが、私たちは言葉の裏にある要望や気持ちをくみ取ることを意識しています。私たちのコールセンターには、京都に住んでいる正規職員やコミュニケーター(パート)が多いため、同じ京都人同士で理解しあえる部分があります。加えて、コミュニケーター自身が京都生協の組合員でもあり、実際にサービスを利用しているので、利用者の視点を持って応対することができます。今、多くの企業は事業拠点とは離れたところにコンタクトセンターを構えているようですが、京都生協は地域密着型で、京都の人の気持ちに心を寄せた応対ができていると思っています。

話応対技能検定(もしもし検定)を活用して、組織全体の応対力を高めていきたい

もしもし検定は、どのように活用していますか。

組合員コールセンターの コミュニケーター

船岡氏:もしもし検定は学ぶことが非常に多いので、正規職員はもちろんコミュニケーター(パート)にも4級取得を推奨しています。合格者には、3級、2級の受検を呼びかけており、現時点で、1級1名、3級11名、4級12名の資格保持者がいます。また、受検に向けた講習会も業務として扱っており、費用も京都生協が負担しています。もしもし検定は、単に電話応対だけではなく、敬語やマナーなどの一般常識も学べるので、社会人として必要な知識を得る良い機会だと思います。4級に合格すると本人も自信がつき、実技がある3級を受けたいと思うようになります。実技の講習会では、専門の先生から自分に合う指導を受けられるので、成長が実感できるのだと思います。その姿を見て、周りの人も刺激を受けて、組織全体がスキルアップするという好循環が生まれています。

組合員の不満の声を分析し、現場とコールセンターの双方で活用したい

最後に、今後の目標についてお聞かせください。

配達準備を行うスタッフ

西森氏:基本的な考えとして、つながりやすく、的確にお答えするコールセンターを目指しています。昨今、問い合わせは電話だけでなく、メールやウェブサイトでのFAQ も含まれるようになりました。実際にメールなどテキストでのお問い合わせは週に50件前後あります。その特徴として、問い合わせ内容を非常に丁寧に書かれる方がいらっしゃる一方で、言葉足らずで、何を問い合わせているのかわかりにくい場合もあります。電話であれば、すぐに詳細をお聞きして解決できることも、メールだと時間がかかり、的外れな回答につながる恐れもあります。そのため、商品カタログやチラシの紙面の工夫など、組合員が電話をかけなくても分かるような仕組みづくりが大切だと思っています。

樋口氏:コールセンターの役割は、組合員からの問い合わせに回答するだけでなく、さまざまな声を集約する役割も持っています。問い合わせの多くは、何かにご不満がある場合が多いので、組合員の声を分析し、何が要因かを突き詰めて現場の応対力向上につなげていきたいですね。今も、配送品質の苦情があれば、配送現場の管理者に報告していますが、現場とコールセンターの応対力をさらに引き上げることができれば、組織としての総合力が高まり、組合員により満足してもらえるサービスになると思います。

組織名 京都生活協同組合
設 立 1964年(昭和39年)
本部所在地 京都府京都市南区吉祥院石原上川原町1-2
理事長 畑 忠男
事業内容 宅配事業、店舗事業、共済事業、葬祭事業、福祉事業
URL https://www.kyoto.coop/
〔ユーザ協会会員〕  

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