電話応対でCS向上事例
-株式会社 宝石の玉屋-物販業からサービス業への変革に欠かせない、接客によるCS向上
華やかな宝石販売の世界でも、その裏にはお客さまにご満足いただくための地道な企業努力が隠されています。今回は北海道札幌市で宝石店を営む株式会社 宝石の玉屋に、そうした宝石販売、また金地金取引におけるお客さま応対についておうかがいしました。
泉さまは、御社の三代目の社長とお聞きしています。まず、泉さまが社長に就任されるまでの御社の沿革などについてお聞かせいただけますか?
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▲代表取締役 泉 研氏
「当社は1938年に私の妻の祖父が、創業いたしました。創業から戦後しばらくは、北海道内各地を巡り、仕入れた宝石を販売していましたが、やはり店舗の必要性を感じ、札幌に店舗を構えたそうです。
義父の代で、宝石に加えて田中貴金属工業の特約店として金地金を取り扱うようになり、私が入社したのは約20年前で、5年前から社長として会社の舵取りをしています」
(代表取締役・泉 研氏)
御社ではこれまでにさまざまな改革が行われたとお聞きしています。その改革とは、どういった内容だったのでしょうか?
「バブルの崩壊後の日本は、消費が落ち込み、物販業には厳しい時代でした。先代は展示会や外商に頼る商いをやめ、店売りにシフトする方針を固めました。そして私は『商品を売る』という固定観念にとらわれず、『お客さまにご満足いただくこと』で売り上げにつなげていこうと考えました。
じつは宝石という商品は、在庫期間が非常に長く、半年以上お店にある商品も珍しくありません。広告を展開し、店頭の商品を売るという他社と同じ戦略では、利益の出る体質づくりが難しいのです」(泉氏)
他のお店との差異化
つまり、他のお店とは業務内容を差異化されたということですね。その内容を具体的に教えていただけますか?
「まず、当社は北海道で唯一の田中貴金属工業の特約店です。そのため、道内で金を買いたいというお客さまを一手に引き受けることができます。お客さまのなかには、株や不動産などへの投資は行っているけれども、金についてはこれからという方も多くいらっしゃいます。そうしたお客さまからのファーストコンタクトは、お電話です。
このお電話でのお問い合わせがご来店につながるよう、他の金融商品や投資商品との違いや、金投資の特徴、メリットなど、スタッフの知識レベルの底上げを図ったのです。また宝石については、他のお店が手がけない分野に注力しました」(泉氏)
「他のお店が手がけない」というのは、宝石の販売以外の分野ですか?
「北海道、とりわけ札幌では、宝石販売における百貨店さまの力が非常に大きいのですが、ただその百貨店さまも、販売以外の部分、すなわち修理やリフォーム、また買い取りといった業務には、積極的ではありません。
私は、このお客さまと深いコミュニケーションをとり、お客さまにご満足を提供できる分野にこそ商機があると考えたのです。いまではこうした取り組みが実を結び、修理やリフォームのご相談に対しては、『玉屋さんなら、ご相談にお応えできるでしょう』といった形で、百貨店さまの宝石売り場からご紹介をいただけるようになりました。非常にありがたいことです」(泉氏)
そうしてご来店いただいたお客さまへの接客は、どのようなお気遣いをなされているのでしょうか?
「まずはお客さまのご依頼内容をしっかり伺うことです。そして次に、提案力です。ただ提案力は誰もが最初から持っているものではなく、お客さまとのご商談がケーススタディとなり、身についていくものです。
経験を積み重ね、お客さまにご満足いただくご提案ができるようになると、それがまた繰り返しのご来店や、他のお客さまのご紹介につながるという、いい循環を生み出すことができるのです」(泉氏)
物販業からサービス業へ
しかし、こうした方針転換を社内に浸透させていくのは、たいへんなことだったかと思います。
「おっしゃる通りです。やはり私が社長になったころは、『売ってこそ』という意識を持つスタッフが多くいました。私はまず、そうした考えをいったん取り払ってもらい『物販業からサービス業へ』という意識改革の実現を目指しました。スタッフの採用についても、販売経験がある人よりも、未経験者を採用しました。それは経験がないことが、逆にお客さまのご依頼をしっかり受け止めようとする想いがより強いからです。いろいろと苦労はありましたが、いまでは『信念を曲げずにやって来てよかった』と思えるまでになっています」(泉氏)
「物販業からサービス業へ」という変革により、お客さまにお届けできる“満足の質”も変わってきたのでしょうか?
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▲応対模様
「これまでの物販では、たとえば商品をご覧いただいた上で、『その商品をご購入いただけるのか、いただけないのか』『いただけないとしたら、ほかに別のものはご提案できるのか?』という商談になりがちでした。
しかしリフォームであれば、ご覧いただく商品をお買い上げいただく必要はなく、あくまで完成品の“見本”としてご判断いただけます。また『これ気に入ったけど、予算がこれくらいだから』というご要望を採り入れることで、そこにしかない、そして末永く続くご満足、つまり『体験型の消費』を味わっていただけると考えています。次回以降のご来店の際に前回応対させていただいたスタッフの『ご指名』が、そのご満足の証明だと思っています」(泉氏)
御社は、電話応対のスキル向上にも尽力していらっしゃるとのことですが、その取り組みについてもお聞かせいただけますか?
「当社は、私も含め店舗にいるスタッフが、そのまま電話応対しています。そのため、リフォームや買い取り、金の売買などでのご来客が重なり、多忙なときに電話がかかってくることもあるわけです。しかし、電話の向こうのお客さまには、店舗の状況が見えません。忙しいからといっておろそかな応対をすると、大切なファーストコンタクトが悪い印象となってしまいます。そのため、どんなに忙しくても、言葉遣いに気を遣い、ご依頼事項の復唱なども忘れずに行うよう、スタッフと共に実践しています。
また同時に、『わかる』『聞いたことがある』と『できる』の違いを共有し、どれだけ知識として知っていても、実践でできなければ意味がないことを繰り返し経験を積んでいます。目標は、お客さまにマイナスの印象を抱かせないこと。その上でプラスを目指し、さらにはお客さまが感動して再来店いただくくらいまで、プラスを伸ばしていくことです。外部の講師の方を呼んで行う電話応対や話し方の研修も、単に研修をこなすのではなく、こうしたプラスにつながるようなメニューを組んでいただいています。また、当社の店舗は年中無休なので、一般的な研修のように、スタッフ全員が一堂に集まり、1日コースの研修を受けることはできません。そのため研修のスタイルも、講師の方に店舗にお出でいただき、30分とか1時間という限られた時間で効果的な内容にしていただかなければならず、いわばセミオーダー的なお願いをしています」(泉氏)
全員が「もしもし検定4級」取得
御社は、スタッフ全員が「もしもし検定4級」を取得されかつ3級取得に向け日々トレーニングされているとのことですが。
「『もしもし検定』のスクリプトは、お客さまのご要望を短い時間で的確にくみ取り、適切にお答えするシーンに非常に効果的なトレーニングだと思います。当社は毎朝15分、朝会を行っていますが、そのなかで定期的に3級のスクリプトを課題にしています。スタッフの誰かが発表し、その内容について意見を交わすのです。このような反復は『他者との違い』への『気づき』を生みます。教材がしっかりしていることで、その効果がわかりやすくなっていると思います。こうした取り組みを3年ほど続けて、仕事に実践的な反映ができるようになってきていると思います」(泉氏)
そのほかに、気をつけていることはございますか?
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▲田中貴金属工業株式会社 金地金特約店の証
「とくに金投資での電話応対については、お客さまに敬意を持って接するようにしています。金へ投資される方から、金というものについて話を聞きたいというお電話をいただくわけです。ここでしっかりと応対し、信頼関係をつくれば、必ず長いおつきあいにつながります。そもそも、信頼関係ができなければ、資産を任せていただけるわけがないのです。そうした方々が、『金のことは玉屋さんに聞けば大丈夫だから』と、将来資産を相続されるお子さん、お孫さんとともにご来店いただくこと、それが何よりの信頼のゴールだと思っています」(泉氏)
会社名 | 株式会社宝石の玉屋 |
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設立 | 1953年(昭和28年)2月 |
店舗所在地 | 北海道札幌市中央区北2条西3-1 敷島ビル1F |
代表者 | 代表取締役 泉 研 |
資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 10名(男3名・女7名)平成26年3月現在 |
事業内容 | 貴金属・宝飾品の販売 田中貴金属工業(株)特約店 |
URL | http://www.houseki-no-tamaya.co.jp |
電話応対技能検定実施機関
有限会社エスパス・ マナーアカデミー
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