電話応対でCS向上事例

-京阪電気鉄道株式会社-
電話応対教育を通じてCSマインドという価値・文化の醸成につなげる

記事ID:C20094

写真中央の一番高いビルである「ステーションヒル枚方オフィスA」内に本社を置いている。

京阪電気鉄道株式会社は、大阪と京都、滋賀・大津市にかけて路線網を持つ鉄道会社です。お客さまセンターにおける係員の応対スキル向上のための取り組みについて広報部の渡辺 成紀氏と安田 良子氏に話をうかがいました。

事業概要についてお聞かせください。

広報部 お客さまセンター
マネージャー 渡辺 成紀氏

渡辺氏:京阪電気鉄道株式会社は、大阪と京都、滋賀の大津地区における鉄道事業のほか、遊園地事業としてひらかたパークの経営を行っています。2007年に鉄道をご利用いただくお客さまへのサービス向上のため、「お客さまセンター」が設立され、電話応対に取り組むようになりました。現在、当センターにはオペレーターが5名おり、鉄道利用に関するお問い合わせ全般を受け付けています。電車の時刻や所要時間、乗り換え経路、定期券の購入の仕方といった内容で、そのうち90%以上は電話によるものです。1日平均で150件前後のお問い合わせがあります。また、淀屋橋駅や京橋駅など、一部の駅でも電話によるお問い合わせを受け付けています。

広報部 お客さまセンター
トレーナー 安田 良子氏

安田氏:通常の鉄道利用以外にもさまざまな問い合わせがあります。例えば、弊社ではお客さまに楽しんでいただくためにラッピング車両を走らせるといったイベントを実施しています。最近では“きかんしゃトーマス”のキャラクターを描いた電車を運行しており、小さなお子さまのいらっしゃるお客さまから運行予定や時間についてのお問い合わせを数多くいただいています。

キャリアアップ教育の場としてのお客さまセンター

電話応対に関する考え方や取り組みについて教えていただけますか。

お客さまセンターでの電話応対の様子

渡辺氏:お客さまセンターは設立当時から、駅係員のキャリアアップ教育を実施する場として活用するという狙いがありました。これはほかの鉄道会社のコールセンターには見られない点ではないかと思います。お客さまセンターにオペレーターとして配属されるのは、駅業務を2年以上経験した者が対象です。この場で多様なお問い合わせに応える経験を積み、応対技術・マインドを習得した係員は、再び駅業務においてお客さまの気持ちに寄り添った応対を行い、周囲の模範となっています。
 お客さまセンターを経験した係員の応対を時折、目にすることがありますが、声による応対に習熟すると、駅での対面応対にもその経験が活かされています。お迎えする言葉や、共感する言葉、気遣いの言葉=「声」に気持ちを込めて伝える時、表情にもその気持ちが表れて、お客さまの心に届いています。

安田氏:私自身にも同じような経験があります。私が本格的に電話応対に取り組み始めたのは、お客さまからいただいた一通のハガキがきっかけでした。定期券の運賃のお問い合わせを受けた私はいつも通りご案内したのですが、後日その方から「感謝の言葉、気づかいの言葉に驚きました。君のその心、これからもずっと続けてくださいね」と思いがけないお褒めの言葉をいただき、嬉しさとともに驚きを感じました。なぜそれほどに満足していただけたのかを私なりに考えてみたのですが、心を声に込めて届けることができれば、お客さまは心で応えてくださるのだと悟らされました。その経験があってから日常業務でも、この方は今どう思っているのだろう、喜んでいただくにはどうすれば良いのかと常に考えるようになりました。

応対スキルを基本から見直す機会に

電話応対コンクールなどにどのように取り組まれていますか。

電話応対に関する研修の様子

渡辺氏:当センターの電話応対について社内外から一定の評価をいただけるようになりましたが、私としては応対レベルの客観的な把握ができていないことに課題を感じていました。そのような中、業種の異なる関西のコールセンターへ見学に行った際、その企業では電話応対コンクール(以下、コンクール)に取り組んでいることを聞き、同行したオペレーターと話す中で「うちでもやってみよう」ということになりました。2016年に初参加しましたが、その時は一次予選で全滅という結果でした。その悔しさをばねに本腰を入れて取り組み、2017年から3年連続で大阪大会優勝という実績を残すことができました。また、コンクールを通じて、オペレーターの応対スキルに関する客観的な評価を得られ、それを基に個々が技術向上に取り組むことができ、結果として本人の自信につながっていくという好循環が生まれました。こうした点がコンクール参加の大きなメリットだと感じています。

安田氏:実は私もコンクール初挑戦メンバーだったのですが、先の通り、一次予選で落ちてしまいました。ちょうど全国大会が大阪で開催される年だったので見学に行ったのですが、選手たちの競技を目にして実力の違いに圧倒させられました。それから発声や滑舌の練習を本格的に始め、自分の声も徐々に良くなってきたのかなと感じています。コンクールへの取り組みを通じて、敬語を含めた言葉の選び方や、発声、滑舌、気持ちの伝わる声の表情などの「電話応対の基本を見直す」ことができるので、日常の電話応対にも明らかな変化が表れます。電話応対向上のための普段の取り組みでは得られない変化です。その意味で、コンクール参加は電話応対の飛躍のチャンスであり、意義のあるものと捉えています。

駅窓口での対応

渡辺氏:企業電話応対コンテストについては、普段の電話応対そのものに対する評価をお客さまセンター内で共有し、振り返り、全体のスキルアップにつなげることを目的に実施しています。また、電話応対技能検定の活用については、検定実施機関となり、現在までに2級~4級までを24名が合格しました。そのほかに、安田さんが指導者級の資格を得たことで駅係員ほか、ホテル、流通、不動産などのグループ従業員に電話応対研修、ビジネスマナー研修、クレーム応対研修を実施し、約800名が受講しました。

安田氏:企業電話応対コンテストについてですが、専門家の方から客観的な評価を受けて、私たちの良いところや、足りないところを見つめなおす機会を得ています。他企業と応対レベルを比較し、素直に評価を受け入れることで個々のレベルアップにつなげることができる有効な取り組みだと考えています。

お客さまに、応対してもらって良かったと思っていただけるように

今後の取り組みについてお聞かせください。

駅でのインターホン応対

渡辺氏:ここ数年の社会構造の急激な変化により、鉄道業界でもさまざまな影響が生じています。駅の現場では係員の対面応対がインターホン応対へシフトする場面が多くなりました。しかし、そうした状況でもインターホンでのお客さま応対に電話応対スキルを活かすことはできます。私どもお客さまセンターは、京阪ブランドを代表するCSの提供を目指し、お客さまに「この人に応対してもらって良かった」と思っていただけるよう、取り組み続けます。そして、グループ企業におけるCSマインドという価値・文化の醸成に役立ちたいと考えております。

駅でのインターホン応対

安田氏:現在、私はオペレーターとしての役割を果たしながら、指導者として電話応対などの研修も行っています。ある意味、オペレーターの気持ちを理解し、それを研修に活かすことができるというのは自分の強みかなと思っています。一人でも多くの社員に自身の応対力を高めることで、電話応対の面白さややりがいにつながることに気づいてほしいという思いで取り組んでいます。今後は電話応対技能検定やコンクールを京阪グループの中で定着させ、グループ全体の応対品質向上を目指してまいります。

会社名 京阪電気鉄道株式会社
所在地 大阪府枚方市岡東町19番1号 ステーションヒル枚方オフィスA内
創業 1906年(明治39年)11月
代表取締役社長 平川 良浩
URL https://www.keihan.co.jp/
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