電話応対でCS向上事例

-佐川急便株式会社-
業務の全てに精通し高いビジネス力も兼ね備えた、電話応対

400箇所以上の営業所で全国ネットワークを構築する運送会社大手の佐川急便株式会社は、「電話応対コンクール」で毎年多くの入賞者を輩出するなど、そのすぐれた電話応対能力でも知られています。今回は東京本社で、CS向上への取り組みや心がけなどについてうかがいました。

現在の御社の概要と電話の受け付け体制について教えていただけますか?

  • ▲執行役員 営業担当 森下 琴康氏

     「私たちは、全国各地に432の営業所を置き、お客さまには統一の番号ではなく、それぞれの地域を担当する営業所のお電話番号をご案内しています。そしていただくお電話もコールセンターに集約するのではなく、各営業所が個別に応対しております」(執行役員 営業担当・森下 琴康氏)

では営業所には、電話受付を専門に担当するスタッフがいらっしゃるのでしょうか?

 「いいえ、弊社には電話応対専門のスタッフという考え方はありません。営業所で働くスタッフが、あくまで業務の一環としてお電話に応対しています。そのため『オペレータ』や『コミュニケータ』といった職種もなく、スタッフはみな『カスタマーサービス課』という立場です。営業所のスタッフは、そうしたお電話だけでなく、窓口に直接お越しになるお客さま応対、さらには営業所内での事務や荷物の仕分けなど、日常業務全般を担当しています。つまり、営業所にいるスタッフがみな等しく電話応対していると思っていただければいいでしょう。ここは、電話応対コンクールに参加されている他の企業さまと、大きく異なるところかもしれません」(森下氏)

言葉を変えると、そのような「電話応対専門ではないスタッフの方」が、電話応対コンクールで上位に多数進出されています。その背景には、なにか御社独特の教育、研修といったものが役立っているのでしょうか?

  • ▲カスタマーサービス課員による電話応対の様子

     「私たちは、スタッフのそもそもの“ビジネス力”、つまり顧客対応力やコミュニケーション能力、提案力、問題解決力などを重視し、それを日常的に高めていることが、コンクールでの成績につながっていると思っています。物流の現場は、業務の幅も広く、そして毎日が同じことの繰り返しではありません。そのため、スタッフは弊社の業務のすべてに精通し、いただいたお電話に適切に応対する能力が求められます。そうした環境での鍛錬が、さきほど申し上げたビジネス力を高め、コンクールでも上位を狙う実力を磨くことになるのです」(森下氏)

高いビジネス力とは、電話でいただく問い合わせの中身をしっかりくみ取ってお待たせすることなく的確にお応えし、さらなるご提案もできるということですね。

 「すべてのスタッフがそのレベルに達しているとは言いません。しかし、ベテランであれば、多くがそのような対応で、お客さまにご満足いただいていると思います」(森下氏)

営業所にいただく電話の内容は、どのようなものが多いのでしょう?

 「やはり荷物についてのお電話がほとんどになります。集荷の依頼、配達についてのお問い合わせ、再配達の依頼などです」(森下氏)

そうしたお問い合わせへの応対で、気をつけていることはありますか?

 「お客さまが何を求めているのか、ニーズがどこにあるのかを、いち早く把握することが大事だと思っています。たとえば荷物の配達であれば、伝票番号がわかればおおまかな所在を弊社ホームページで調べることができるわけです。しかしお客さまから直接お電話をいただくということは『より詳細な配達時間を知りたい』など特別な理由があるわけで、スタッフはそうしたお気持ちをいち早く察知し、お応えすることが必要です。またときには伝票番号もなく、『知人や親類の方から荷物が届くはずなんだけど』といった漠然としたお問い合わせをいただくこともあります。そんな場合でも、出荷担当と思われる営業所に問い合わせたり、その地域担当のセールスドライバーがそうした荷物を持っているかどうかを確認したりなどの方法で、お客さまをできるだけお待たせせず、ご満足いただくお応えができるように心がけています」(森下氏)

そうした日々の集荷や配達といった問い合わせのほか、もっと大きな物流関係の問い合わせが寄せられることもあるのでしょうか?

 「はい、ございます。そうした大きな案件については、カスタマーサービス課員が受け、営業担当にエスカレーションすることになります。ただその際にも、弊社およびロジスティクスなどを担当する弊社のグループ会社がどのようなサービスをご提供できるのかを理解した上で、まずお電話でお客さまにご案内できるよう、教育しています」(森下氏)

そうしたオールマイティな対応力を身に付けるため、御社ではどのような研修を採り入れているのか、教えていただけますか?

 「弊社のカスタマーサービス課員として配属されたスタッフは、主に3つの研修プログラムを受けることになります。まずひとつ目が『新人研修』です。これは社会人としての礼儀やあいさつ、また知っておかなければならない会社の目標、企業理念などを2泊3日で学ぶものです。続いて『基礎実務研修』です。この研修では、応対業務をロールプレイなども含めた実習形式で、シーン別に学びます。最後に『ひとり立ち研修』です。ここでは実際のお客さま応対を、シナリオのある、なしを含め、実践的に習得します。この研修が終わったのちに、晴れて電話応対ができるようになるのです」(森下氏)

そうした研修スタイルのメリットを教えていただけますか?

  • ▲カスタマーサービス課員によるOJTの様子

     「やはり、業務の内容を知らないと、お客さまにご満足いただける受け応えができません。そうした意味では、OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング:企業内で行われる企業内教育・教育訓練手法のひとつ)での教育よりも、集合教育のほうが、即戦力につながると思っています。また従来は地域ごとの教育でしたが、10年ほど前にこうした形に改めたことで、応対品質の均質化が図れたと考えています」(森下氏)

ドライバーの方についてはいかがでしょう?

 「弊社のセールスドライバーは、お客さま対応の最前線です。そのため、接客全般についての研修を行っています。またお客さまからドライバーに直接電話をいただくこともあるため、そうした研修のなかに電話応対教育も採り入れています」(森下氏)

最後に、電話応対コンクールが、御社のCS向上にどのように役立っているのか、教えてください。

▲第53回電話応対コンクール全国大会で優秀な成績を収められたカスタマーサービス課員の皆さまを会社として表彰しています。

 「電話応対コンクールは、スタッフが目標に向かって一丸となって取り組めるいい機会だと考えています。弊社は冒頭申し上げたように全国に拠点がありますが、今年は合計1,113名が地区大会にエントリーし、県大会にも100名以上が進みました。全国大会前には参加者が2泊3日で合宿を行うのが恒例となっていますが、ここで生まれた交流が、普段は別々に働いている地域の営業所同士を結びつけ、組織を活性化しています。たとえばコンクールに向けては、業務が空いているときに、ある営業所のスタッフが“お客さん”になって他の営業所に電話をかけ、トレーニングするなどの試みが自発的に行われ、それが何年も続いているのです。また同じ業務を担当する人間同士が寝食をともにすることで、業務における課題について深く話し合い、それが社内の課題解決に役立つような例も報告されています。現在、このように全国それぞれの地区から代表を送り出せるようになったことは、コンクールへの参加が弊社全体のCS向上に役立っていることを示していると思います」(森下氏)

大会会場へは応援FAXも、毎年数多く寄せられていますね。

  • ▲東京本社

     「はい。それは参加選手に人望があり、面倒見もいいからだと思います。この大会参加には、それぞれの営業所に一体感を持たせ、モチベーションを高めてくれるという効果もあるのです。そういう意味で、この大会を主催するユーザ協会には感謝をしています」(森下氏)

コンクールが御社のCS向上、そして職場の一体感の醸成に役立っていることは、まことに喜ばしいことだと思います。最後になりましたが、2014年の優秀な成績に、あらためてお祝いを申し上げるとともに、2015年以降のご健闘もお祈りしています。本日はありがとうございました。

会社名 佐川急便株式会社
設立 1965年(昭和40年)11月24日
本社所在地 京都府京都市南区上鳥羽角田町68
代表取締役社長 荒木 秀夫
資本金 112億7,500万円
従業員数 45,985人(平成26年3月期現在)
車両保有台数 24,470台(軽自動車含む)
業務内容 宅配便など各種輸送にかかわる事業
URL http://www.sagawa-exp.co.jp

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