電話応対でCS向上事例

-東日本電信電話株式会社 東京事業部-
インサイド×アウトバウンドチームにおける効率的なリレーション維持・向上と生産性向上の両立

記事ID:C20102

東日本電信電話株式会社 東京事業部では、インサイドセールスを主軸とした営業組織を2024年に設立しました。東京ビジネスイノベーションセンタ(東京BIC)の皆さんに新たな営業手法が定着するまでの取り組みについてうかがいました。

東京BICの成り立ちや業務内容、業務上の課題と導入されていたシステムついてお聞かせください。

センタ長 井澤 英則氏

井澤氏:私たちの会社ではこれまで、リレーション(継続的な取引など)のあるお客さまからの引き合いが商談につながることがほとんどでした。しかし、年々引き合いをいただくことも少なくなり、「エリア(支店)最適」「フィールドセールス※1中心」の営業体制を続ける限り、サステナブル(持続可能)な活動の維持は困難ということが明らかになってきました。そこで従来のフィールドセールスだけではなく、インサイドセールス※2手法を取り入れた「ハイブリッド営業スタイル×エリアフリー」で、より多くのお客さまとのリレーションを守り、お客さまの期待に応え続けていくため、「東京ビジネスイノベーションセンタ(東京BIC)」を2024年11月に設立しました。現在、約430名のスタッフが約14,000社の法人のお客さまの課題解決に取り組んでいます。構成は、今まで培ってきた体制を基にした「インサイド×インバウンド」チーム、訪問が必要なお客さまへの提案などを行う「フィールド×インバウンド」チーム、新たにインサイド手法でアウトバウンド活動に挑戦する「インサイド×アウトバウンド」チームから成ります。「インサイド×アウトバウンド」チームは約50名のスタッフで構成され、お客さまとの接点拡大とお客さまへの体験価値向上に向けた取り組みを始めました。

及川 理人氏

及川氏:このチームでは、決まったスタッフがお客さまを担当する従来の体制ではなく、お客さまの真の課題を把握し、有用な情報を提供してチームで課題解決へ導くことを目指しています。よく社内で飛び交う言葉に「Ourカスタマー」という造語がありますが、これは我々のチームのスタイルを示すキーワードです。また、リレーションを維持しつつ生産性を向上させることもチームの目標となっています。対面から非対面へ営業方法を変革するということで、東京BIC発足時にはすでにコールセンター向けシステムを導入し、在宅時も架電が可能で勤務スタイルを柔軟に選択できる環境が整っていました。ただ、環境があれば効率的な組織運営が進む訳でもありませんでした。

システム活用が十分でなかった理由と、その後の取り組みをお聞かせください。

及川氏:アウトバウンドコールでは、少しでも興味を持っていただけるよう、接触履歴から課題を洞察し、困りごとのあるお客さまに寄り添う活動が中心になります。そうした中、営業スタッフ側の課題としてコミュニケーションの非対面化に対する心理的不安という点が顕在化してきました。インサイド×アウトバウンドのチームには、50~60代のベテラン層から20代の若手まで幅広い年齢層のスタッフがいます。ほとんどのスタッフがこれまで対面が主であったため、非対面の営業手法は戸惑うことが多かったのです。また、インサイドセールスにおいては多くの社内メンバーやステークホルダーと連携しながら、案件を進める必要があります。しかし、お客さまとの会話内容や知見を口頭やテキストといったアナログな方法で共有するケースが多く見られ、また、在宅時に業務用の携帯電話を使い通話してしまうと会話自体が暗黙知化され、重要度や注意事項、会話のニュアンスなどが伝わらないため情報に齟齬が生じるなど、チーム内での情報連携に限界を感じていました。

斎藤 裕三子氏

斎藤氏:前述の通り、インサイドセールスを担うメンバーの多くは、以前、訪問営業を行っていました。当然ですが、訪問先で話す内容は同行者以外に聞かれることもなく、内容について指摘されることもありませんでした。ところがインサイドセールスに変わった途端、会話を録音され、内容を公開されるようになったのです。自らの営業スタイルがオープンになる抵抗感は非常に強かったと思います。

郷家 章人氏

郷家氏:私も、当初は営業トークを他者に“見られる”ことに対する不安がありました。

及川氏:インサイドセールス活動における抵抗感を少なくし、組織としてノウハウをどのように蓄積し、スキルを向上させていくかが次の課題でした。そこで注目したのが、コールセンター向けシステムの機能を活用して行う「モニタリングコーチング(モニコチ)」でした。

取り組みの具体的な内容と効果について教えてください。

【図1:モニタリング・コーチングの流れとポイント
モニコチとは自身や他人の通話録音を一緒に聞いて、応対を振り返る取り組み

【図2:対話分析の画面】
応対内容の可視化だけでなく、「会話の比率」や「お客さまの感情」も定量化(デジタル化) することができる

斎藤氏:モニコチとは、自身や他人の通話録音を一緒に聞いて、応対を振り返る取り組みです(図1参照)。システムを使えば場所や時間を問わず客観的に応対の振り返りができ、「会話の比率」「お客さまの感情」が可視化でき、精度の高い分析・フィードバックも可能なので(図2参照)、その機能を最大限活用しました。また、心理的安全性を重視し「Good& Motto & Next」を組織全体で実行することで、取り組みに弾みがつきました。「Good & Motto & Next」とは、応対を分析する際は必ず最初に「良かった点」を述べ、次に「こうするとさらに良くなる点」を伝え、最後に本人が自ら「次はここにチャレンジする」と宣言する、3段階で振り返るモニコチの姿勢です。これにより抵抗感が少なくなり、取り組みの効果が出てきたと実感しています。

【図3:通話分析(モニコチの様子)】
「会話の比率」「お客さまの感情」が可視化できるので、精度の高い分析・フィードバック が可能

郷家氏:モニコチに取り組むことで、自身の応対についての気づきを得られ、また第三者の意見やアドバイスを聞くことで、次の応対に活かすことができるため、スキル向上につながっていることを実感しています。さらにお客さまの課題・ニーズの再確認や、社内で他組織などとの連携時にも、通話音声を共有することでお客さまの温度感まで伝えることができ(図3参照)、関係構築が円滑に進められるようになったことも効果として挙げられます。

CX向上に向けた今後の予定を教えてください。

井澤氏:これまで築き上げたお客さまとのリレーションを維持するため、お客さまへの応対品質の向上を図り、個々のスキルアップに着手した結果が、ようやく表れてきています。今後は、AIやテックタッチの活用なども取り入れ、エリアごとに異なっていた業務フローの標準化、DX化といった新しい仕組みにチャレンジし、CX向上を追求していく予定です。例えば、デジタル接点やお客さまの事業・プロファイル情報から、まだ気づかれていない課題を洞察し、必要なタイミングで必要とする情報を提供し課題解決へ導くことで、お客さまに寄り添い続ける組織を実現していきます。

K25-0009【2504-2604】

※1 フ ィールドセールス
お客さまを訪問し、直接会って対面で商談を進める営業手法。
※2 インサイドセールス
電話・Eメール・オンライン会議ツールなどを用いて商談を進める営業手法。
会社名 東日本電信電話株式会社
設立 1999年(平成11年)7月
所在地 東京都新宿区西新宿3-19-2
従業員数 4,700名(NTT東日本グループ:34,250名)(2024年3月31日時点)
事業内容 東日本地域における地域電気通信業務及びこれに附帯する業務、目的達成業務、活用業務
URL https://www.ntt-east.co.jp/
〔ユーザ協会会員〕

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