電話応対でCS向上事例

-JCOM 株式会社-
1万人の有人顧客対応の強みにデジタル技術をのせ、顧客体験の向上につなげる

記事ID:C20021

通信事業者でありながら、全国約1万人のスタッフによる有人の顧客対応が強みとなっているJCOM 株式会社(通称:J:COM)。スタッフの応対スキル向上に加えて、デジタル化を推進して、顧客体験※1の向上を図っている湘南カスタマーセンターにデジタル化のポイントについてお聞きしました。

事業概要についてお聞かせください。

湘南カスタマーセンター
センター長 山村 聡氏

山村氏 J:COMは、1995年(平成7年)にケーブルテレビ事業で創業し、固定電話、インターネット回線事業を手がけるようになり、今では携帯回線事業、エネルギー事業、保険事業も行っています。また、エンターテインメント分野では、コンテンツの配給だけでなく、制作やテレビショッピング『ショップチャンネル』の運営など、人々の日々の暮らしに必要なプラットフォームを担っています。カスタマーセンターは全国5拠点2,800名体制で、湘南カスタマーセンターには約380名が勤務しています。ここでは、湘南エリアのお客さまだけでなく、全国各地からさまざまなサービスに関するお問い合わせにお答えしています。

約1万人の有人顧客対応に加え、デジタル技術を活用して応対力を強化

J:COMの接客応対にはどのような特徴がありますか。

山村氏 一言でいうと、通信事業者でありながらも「face to face」(対面)の対応ができることが強みです。全国66拠点には営業スタッフ2,600名とアフターサポートのスタッフ600名がおり、お客さまのもとへ直接訪問してサービスを提供しています。また、電話では解決しないお問い合わせには、4,100名のサービスエンジニアが訪問して解決しています。そこに、私たちカスタマーセンター2,800名のコミュニケーターが加わり、約1万人が有人で対応をしているというのが我々の強みです。

湘南カスタマーセンター
マネージャー(品質担当、CX担当)
太田 聖二氏

太田氏 有人顧客対応に加えて、2年ほど前からDX※2を推進すべく、新たに二つのツールを立ち上げました。一つは、J:COM のさまざまなサービスをお客さまにワンストップでご利用いただくための『MY J:COM』というスマホのアプリで、もう一つは、営業やアフターサポート、カスタマーセンターなどのさまざまなお客さまとの接点をつなぐ顧客応対システムです。このシステムを活用することにより、例えば訪問アポイント時に、過去の問い合わせ履歴などが表示されるので、一人ひとりのお客さまの状況を深く理解して、新たなご提案につなげることができます。いずれも導入して間もないのですが、今後はお客さま一人ひとりに寄り添ったサービスで顧客体験を向上させたいと思っています。

人による応対をシステムが補完することで、顧客満足につなげたい

顧客体験向上の取り組みとして、ほかにどのようなことをしていますか。

太田氏 企業やブランドに対する信頼度の指標であるNPS※3を、目的を達成するための達成度を示すKPI※4に設定し、分析や取り組みを行っています。お客さまがご連絡をくださった際、時間帯によってはカスタマーセンターで応対できないこともありますが、簡単な調べものであれば即時解決できるよう、スーパーアプリ※5やチャットBOT※6などのデジタル技術も積極的に活用しています。それにより、お客さまの行動履歴(何にお困りで、どこを調べてお問い合わせに至ったか)が記録されるため、カスタマーセンターではお客さまの状況を理解した上で効率良く、またお気持ちに寄り添った問題解決が可能になります。つまり、デジタルの接点を経てもお客さまの満足度を下げることなく、むしろお客さまの意図をくみ取った丁寧な応対が可能となりますので、一層強い関係性が構築できると考えています。

コロナ禍で、業務に何か変化はありましたか。

山村氏 全社的に「face to face」の強みにデジタル技術を融合させた仕組みづくりが加速したと考えています。全てのお客さまとの接点において、お客さまの行動履歴、応対履歴といったアナログの履歴をデジタルデータとして残していきます。そのデータを使って、お客さまの困りごとやサービスが必要なタイミングを的確に捉えて、一人ひとりのお客さまに寄り添ったきめ細やかな応対ができるようになると考えています。コロナがなければ、それを実現することがもう少し先になっていたかもしれません。全社員がデジタルの活用をしっかりと意識できるようになったので、中期的な目標を前倒して実現できると考えています。

電話応対コンクールは選手の成長だけでなく、部門全体の底上げにつながっている

電話応対コンクールに出場されていますが、どのような成果を感じていますか。

湘南カスタマーセンター
マネージャー(品質担当、CX担当)
添石 浩氏

添石氏 湘南カスタマーセンターでは10年前から毎年参加しています。ほかの業種、ほかの会社の方が、どのような話し方をしているのかを知ることが非常に勉強になると思い、参加し始めました。ここ4~5年はコンスタントに県大会に出られるようになり手ごたえも感じています。また、上位に入賞するには、選手の努力もさることながら、サポート側の意識も高くなければならないので、指導者を含め部門全体の底上げにつながっていると思います。コンクールで応対力が身につくと、日々の電話でもお客さまに喜んでもらえるようになりますので、自分自身の成長を感じることもできます。そういう意味で、コンクールが従業員のやりがいやキャリア形成につながっていると感じます。また、コミュニケーターの成長の先にお客さまの顧客体験向上もあるので、相乗効果が期待できる良い取り組みだと思っています。

ここ4~5年で県大会出場者が増えてきたのはどうしてだと思いますか。

山村氏 スキルの高いメンバーがいて、その人に引っ張られて他のメンバーも練習を重ねてきた成果が出ているのだと思います。職場の雰囲気をみても、電話応対コンクールに対する熱量が他のセンターとは違う感じがします。もちろん、どのカスタマーセンターもとても真剣に取り組んでいるのですが、湘南カスタマーセンターには「この実績を元に、来年も入賞するぞ」という熱気を帯びた文化のようなものが醸成されていると感じます。2020年に全国大会で優秀賞を取ったメンバーも、前回、その前の大会から少しずつ成長してきたのですが、そういった機運がうまく組織内で連鎖して、湘南カスタマーセンター全体で入賞者が増えているのだと思います。

お客さまを知り、何が必要とされているのかを徹底的に考えることから始める

最後に、今後の目標をお聞かせください。

山村氏 J:COM では、一般的な業務改善の手法である「PDCAサイクル※7」ではなく、「STPDサイクル※8」を重視しています。PDCAとの大きな違いは「Plan」の前に、「See」と「Think」があることです。まず、「お客さまをよく知り、何が必要とされているかを考えるところから始めよ」と、企業理念のように提唱しています。デジタル化が進めば、お客さまの履歴データが蓄積されるので、困りごとや商品が必要なタイミングなどが見えてきます。一人ひとりのお客さまに沿ったきめ細かい提案ができるようになるので、中期的にはデジタル活用でお客さまの顧客体験を今よりも数段上げていきたいですね。

※1 顧客体験:顧客が商品やサービスを体験し、顧客の視点での価値を評価すること。CX(カスタマーエクスペリエンス)とも呼ぶ。
※2 DX:デジタルトランスフォーメーションの略。進化したIT 技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のこと。
※3 NPS:ネット・プロモーター・スコアの略。顧客推奨度とも言われており、「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を数値化する指標のこと。
※4 KPI:キーパフォーマンスインジケーターの略。目的を達成するための達成度を数値により指数化したもの。
※5 スーパーアプリ:日常生活のあらゆる場面で活用できる統合的なアプリ。
※6 チャットBOT:自動的に会話を行うプログラム。
※7 PDCAサイクル:品質管理などの業務管理における継続的な改善手法。Plan(計画する)→Do(実行する)→Check(評価する)→Action(改善する)の4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善すること。
※8 STPDサイクル:PDCAの後から提唱された手法。See(事実を見る)→Think(よく考える)→Plan(計画する)→Do(実行する)の4段階で成り立つ。

会社名 JCOM 株式会社
設 立 1995年(平成7年)1月18日
本社所在地 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN 館
資本金 376億円
代表取締役社長 石川 雄三
事業内容 ケーブルテレビ局の統括運営を通じた有線テレビジョン放送事業及び電気通信事業、ケーブルテレビ局及びデジタル衛星放送向け番組供給事業統括
URL https://www.jcom.co.jp/
〔ユーザ協会会員〕  

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