電話応対でCS向上事例

-一般財団法人 日本財団電話リレーサービス-
きこえない人ときこえる人をつなぐ電話リレーサービスがスタート

記事ID:C20025

2021年7月1日より、聴覚障がい者、難聴者、発話困難者(以下、きこえない人)とそれ以外の方(以下、きこえる人)を通訳オペレーターが手話や文字チャットと音声で通訳することにより、電話での双方向の通話を可能にした「電話リレーサービス」が始まりました。同サービスを利用した通話は、一般の事業者や個人にもかかる可能性があるため、ぜひとも知っておきたいサービスです。そこで、今回はサービスを提供する一般財団法人 日本財団電話リレーサービスの業務企画調整チームの廣瀬 正典氏と、通訳オペレーターの育成を担当する根間 隆行氏に話をうかがいました。

2021年度内に1万4千人の利用者登録を目指す

  • スマートフォンやパソコンの画面のオペレーター が手話や文字での通話内容を通訳し、きこえる 人へは音声で伝えます ※画像はイメージです。実際の利用者ではありません。

     電話リレーサービスを利用するには、ダウンロードした専用アプリからの利用者登録が必要です。利用者登録をしたきこえない人は、このアプリを立ち上げ、相手先の電話番号を入力して、手話か、文字か、希望する通話方法を選択し、オペレーターにアクセス。手話または文字で話した内容はオペレーターが音声で相手に通訳し、それを受けたきこえる人の返答は、再度オペレーターが通訳してきこえない人に伝達するという仕組みになっています(図参照)。

    廣瀬氏:この電話リレーサービスは、海外ではすでに25ヵ国で実施中。その用途は、仕事などの電話、警察や病院への緊急通報のみならず、普段の会話やレストランの予約などにも使われています。日本では同サービス開始からおよそ2ヵ月で5 , 2 8 2名の利用者登録が完了。2021年度中に1万4千人の登録を目指しています。

民間のモデル事業から公共インフラになり利便性が飛躍的に向上

廣瀬氏:電話リレーサービスが発足したきっかけは東日本大震災で、当時、被災したきこえない人の情報コミュニケーション遠隔支援をしていたのですが、その際に最もニーズが高かったのが電話リレーサービスでした。そこで、2013年に民間のモデル事業としてスタート。その後、山や海できこえない人の遭難事故が続いた際に、通訳オペレーターが機転を利かせて命を救ったことから、サービスの必要性が強く認識されるようになりました。そして、2020年に法制化され、公共インフラとして整備されることになりました。
 公共インフラになったおかげで変わったことは、大きく三つあります。一つ目は「24時間365日いつでも使えるようになったこと」、二つ目は、「緊急通報がかけられるようになったこと」、三つ目はきこえない人からきこえる人への一方通行ではなく「双方向の電話サービスになったこと」です。モデル事業は民間の活動だったため、朝8時から夜9時までの利用に限られており、命の危険に関わる緊急通報は受けつけることができないという状況でした。それが公共インフラとなったことで、きこえない人がいつでも電話ができるようになり、飛躍的に利便性が向上しました。
 また、モデル事業では、きこえる人からきこえない人へは電話ができなかったのですが、050から始まる電話番号をきこえない人に付与することで、双方向で電話をかけられるようになりました。その一方で、以前はきこえない人が発信するときの通話料が無料でしたが、一般の電話サービスと同様に通話料がかかるようになりました。サービスに登録している利用者に電話をかける場合の通話料は特別な料金は不要で、契約している電話会社の料金が適用され、IP電話(050番号)へ発信する際の電話料金が適用されます。

電話が使えると、いつでもコミュニケーションが取れるという安心感を持てる

業務企画調整チーム
ディレクター 廣瀬 正典氏

廣瀬氏:7月のサービス開始後、SNSなどで様々な意見があげられています。例えば、名刺に電話番号を載せて渡せるようになったというエピソードや、宅配便のドライバーに直接電話をかけたり、ピザを電話で注文できるようになったという意見が多いですね。また、このご時世だと、新型コロナウィルスのワクチン副反応で熱や急変があった際に、電話をしたいという一人暮らしのニーズにも対応できるようになりました。従来のように、メールやFAXだと相手がいつ確認してくれるのかわからないのですが、電話だとすぐに連絡がつくので、安心材料の一つになっています。

通訳オペレーションチーム
ディレクター 根間 隆行氏

根間氏:名刺のエピソードはよく聞きますね。以前も、名刺に携帯電話番号を記載する人はいたのですが、電話ができないので「携帯電話番号(メッセージ)」とする人が大変多かったのです。その場合は、テキストでのやり取りになるので、文字を打つ時間がかかる、緊急性があるときには役に立たない、メールと変わらないなど、マイナスイメージが強かったようです。この電話リレーサービスによって、ご自身の言葉で、リアルタイムに会話できるようになったので、名刺に携帯電話番号を記載する人が増えるのではないでしょうか。

きこえる人に、もっと「電話リレーサービス」を理解してもらいたい

廣瀬氏:現状の課題は、きこえる人にもっと知ってもらうことです。現在、広報活動にも力を入れていますが、一般の認知度はまだまだ不十分です。そのため、同サービスのことを知らない相手に電話すると「間違い電話」や「いたずら電話」と誤解され、切られてしまうことがあります。一度でも電話を受けていただければ、同サービスの意義を理解してもらえると思いますので、まずはきこえる人への周知を進めたいと思っています。

根間氏:通訳オペレーターの立場からすると、以前は金融機関などの本人確認時に「そのサービスは知らない。本当に本人がいるのですか?」というやりとりに手間取りました。しかし、最近はサービスを知ってくださる方が増えたこともあり、少しずつ壁がなくなってきました。それでも、まだ課題はあります。例えば、「〇〇と伝えてもらえませんか」と代弁や伝言を頼まれることがあるのですが、通訳オペレーターは相手の会話をそのまま伝えるのが仕事であり、代理代弁、伝言をする立場ではなく、通訳として対応しているということを知っていただきたいです。

次は、会話の内容を字幕で表示する「字幕つき電話」を実現させたい

廣瀬氏:次の目標は、字幕つき電話の実現を考えています。手話や文字チャットだけだと、手話ができない人、携帯電話のメールに慣れていない人にとっては、使いづらいサービスになってしまいます。字幕つき電話は、自分が話したことはそのまま相手に伝わり、相手が話したことが画面上に字幕として出てくるので、きこえない人だけでなく、発話が困難な人やきこえにくい人にも使っていただきたいですね。耳が聞こえるので自分には関係ないと思っていても、加齢で聴力が弱くなってしまうこともあります。その可能性は誰にでもあるので、幅広い人に知ってもらい、使ってもらえるサービスにしていきたいです。

根間氏:字幕付き電話が普及すると、通訳オペレーターが不足するかもしれません。現在も行っている文字チャットによる通訳の場合でも、通訳者は、話し手の言葉を要約することもありますが、臨場感を伝えるためにできるだけ全文を打つようにしています。さらに、文字を打つだけではなく、話している人に相づちをするなど、反応も通訳技術の一つになります。そのため、話を聞いて、理解して、文字を打って、反応してなど、多くの作業を一度にやっているのです。最初は、やはり誰にでもできることではないので、OJTや研修を組み合わせて訓練し、ステップを踏んで通訳技術を向上させています。字幕つき電話の実現に向けて、通訳オペレーターの育成にさらに力を入れていきたいですね。

(インタビューは2021年7月に行ったものです。)

組織名 総務大臣指定 電話リレーサービス提供機関 一般財団法人日本財団電話リレーサービス
設 立 2020年(令和2年)8月4日
本社所在地 東京都千代田区神田錦町3-22 テラススクエア8F
代表者(理事長) 大沼 直紀
事業内容 きこえない人ときこえる人の双方 向な電話サービスを「手話・文字・ 音声」の通訳によって行う電話リ レーサービスの提供
URL https://nftrs.or.jp/

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