電話応対でCS向上事例
-東京海上日動火災保険株式会社-「接続品質、業務品質、応対品質」の三つの品質を高め顧客に寄り添う
記事ID:C20042
岐阜のカスタマーセンター受付
CX※1(カスタマーエクスペリエンス)とDX※2(デジタルトランスフォーメーション)という二つのキーワードを掲げて、コンタクトセンターの業務の変革に取り組んでいる東京海上日動火災保険株式会社。コロナ禍以降に重点的に取り組んでいることや、今後の目指す姿について話をうかがいました。
業務内容と電話応対の体制についてお聞かせください。
CX・プロセスデザイン部
コンタクトセンターグループ
課長(岐阜カスタマーセンター長)
佐伯 智章氏
佐伯氏:当社には、池袋、福岡、岐阜の三つのカスタマーセンターがあり、岐阜カスタマーセンターは、約150名体制で1日1,000件ほどの電話問い合わせに対応しています。問い合わせ内容は、自動車保険の契約内容確認や保険料の支払いに関するものが多いですね。いずれのセンターもコロナ禍以降は、CX(カスタマーエクスペリエンス)とDX(デジタルトランスフォーメーション)をキーワードに掲げて、業務の変革に取り組んでいます。具体的には、「お客さまごとの“最適”に応えるため、デジタルも徹底的に活用しながらスピード感をもって変革に挑戦し、あらゆる環境変化や有事にも柔軟に適応できる、盤石なコンタクトセンターを実現する」ことを目指しています。
顧客満足度向上のための教育と、課題解決のための取り組み
電話応対教育においてはどのようなことを大切にしていますか。
CX・プロセスデザイン部
コンタクトセンターグループ
課長代理 山本 真帆氏
山本氏:外部の評価機関から、当センターは、お客さまのニーズを引き出す傾聴力や正しく説明する力に強みがある一方で、音声表現やお客さまに寄り添った応対に課題があると指摘されました。そのため、この1~2年はソフトスキル、つまりお客さまの心情に寄り添い、顧客満足度を高める教育に努めてきました。お問い合わせ内容をそのまま受け取るのではなく、そこに至った経緯をヒアリングして共感し、より良い未来の姿をお客さまと一緒に導き出すというメソッド※3を取り入れました。また、私自身も岐阜県出身なのですが、岐阜は他の地域と比べてアクセントの位置が異なるようで、方言が強かったり、語尾がきついと指摘されることがあります。そのため、言葉に気持ちをのせるテクニックや、お客さまが発する言葉への共感力を高めることを意識しています。他にも、新規加入のお客さまに対して「私たちはお客さまが加入してくださることをこんなにも心待ちにしている」と、気持ちが伝わるようなスクリプトをチームごとに作成するなど、ソフトスキルの向上に取り組んでいます。日々、お客さまの気持ちに寄り添い、過去から現在、未来へとお話をつなげて理解を深めることやお客さまの言葉に共感する応対力を高めてきたことで、実際に顧客満足度も高まってきていると感じています。
CX・プロセスデザイン部
コンタクトセンターグループ
オペレーションマネージャー
鈴木 晃郎氏
鈴木氏:デジタル技術の活用という点では、顧客満足度調査にモバイルアンケートを導入しました。以前は、電話で調査していたのですが、お客さまの時間を長くいただくことになってしまったり、30秒のフリーコメントでは聞き取れないといった課題がありました。一問一答式で答えやすいモバイルアンケートに切り替えたところ、以前は年に1,700件ほどだった回答が、約2万件と大幅に増やすことができました。今後は、それをどう分析して業務に反映するかが課題です。これまでのところ、お問い合わせに対する課題解決率が顧客満足度向上に大きく影響することが分かってきました。また、新入社員の応対は、受け答えがたどたどしい場合でも顧客満足度は高いという結果も出ています。つまり、音声表現として一生懸命さが伝わると、満足度につながるということになります。課題解決率を高めるというテクニックも重要ですし、同時に音声表現を高めていくことも必要だと感じています。
電話応対コンクールは、品質向上のみならず組織の一体感を生み出す取り組み
電話応対コンクールはどのように活用されていますか。
CX・プロセスデザイン部
コンタクトセンターグループ
研修・コンクール担当
白木 麻美氏
白木氏:2016年に応対品質向上を目的としたプロジェクトを立ち上げ、3拠点合同で、電話応対コンクール参加への取り組みを精力的に推進しています。具体的には、社外講師を招いた研修や出場経験者との交流会、スクリプトのアドバイスなどを行っています。全体研修などで応対の基本的な考え方を理解できても、それを実践することは簡単ではありません。電話応対コンクールに参加することで、細かい発声方法や発音などについて個別で指導を受けられるため、参加者からは「今まで気づかなかったことを指摘してもらえてありがたい」という声があがっています。年を追うごとに参加者が増え、2021年には70名ほどが参加しました。それに伴って入賞者も増え、おかげさまで毎年都・県大会に出場しています。今後は、一人でも多くの人に取り組んでもらい、それを励みに各自のスキルアップしてもらえるとよいですね。コンクールの課題に取り組むことで、本人がスキルアップするのはもちろん、センター内でスクリプトやトークの表現をアドバイスし合えるので、組織としての一体感が生まれたり、職場全体のモチベーションアップにもつながっていると感じています。
在宅コールによる接続品質向上に加え、業務品質、応対品質の向上を図る
コロナ禍で業務に何か変化はありましたか。
CX・プロセスデザイン部
コンタクトセンターグループ
オペレーションマネージャー
五十嵐 茂承氏
五十嵐氏:当センターでも政府・自治体の要請に基づいて出社人数を減らして運営していたので、せっかく電話をしたのにつながりにくいというお叱りの声もありました。それを踏まえて、オペレーターが自宅でもお問い合わせに対応できる在宅コールの体制を整えました。導入前の説明会の際は、「家で電話なんてできるの?」「会社で受電するほうが安心」といった不安の声のほうがポジティブな意見より多かったです。研修を行い、操作方法を繰り返し丁寧に説明し、研修終了後には、会社の会議室で実際の在宅コールシステムを用いて何度も練習をしました。また、直前には、オペレーターに個別指導を行うなどして、しっかり準備を行った結果、最終的には挑戦する気持ちになってくれ、自宅で電話を取る際もあわてずに自信を持って対応できたと思います。
最後に、今後の目標についてお聞かせください。
佐伯氏:CX を高めるためには、カスタマーセンターの品質を高める必要があります。品質は「接続品質、業務品質、応対品質」の三つに分かれると思います。「接続品質」では、応答率90%以上を目指しており、在宅コールの導入だけでなく、アフターコールワークの削減、混雑時のシフト改善を行っています。「業務品質」は、地道な取り組みですが、やはりミスをなくすことが重要だと思います。「応対品質」では、教育に力を入れています。共に育つと書いて「共育」という言葉をよく使いますが、自身が学ぶこと、そして学んだ知見を皆に広めていく取り組みに力を入れていきたいですね。
- ※1 CX(カスタマーエクスペリエンス)
- ある商品やサービスの利用における顧客視点での体験。
- ※2 DX(デジタルトランスフォーメーション)
- 進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革すること。
- ※3 メソッド
- 方法・方式のこと。
会社名 | 東京海上日動火災保険株式会社 |
---|---|
設 立 | 1879年(明治12年)8月 |
本店所在地 | 東京都千代田区大手町二丁目6番4号 |
資本金 | 1,019億円 |
代表取締役社長 | 広瀬 伸一 |
事業内容 | 損害保険業、業務の代理・事務の代行、確定拠出年金の運営管理業務、自動車損害賠償保障事業委託業務 |
URL | https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/ |
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