電話応対でCS向上事例

-アメリカンホーム保険会社-
社長直轄のSSPD部を設け顧客接点を横断的に訓練

  • 静かな職場に丁寧な電話応対の声が重なり合う。

  • キャンペーンなどではチーム毎に成績を競い合う。“明るい競争”はセンター全体にも良い影響を及ぼしている。

 アメリカンホーム保険会社は、営業担当者や代理店による販売ではなく、CMなどの広告で商品を訴求することによってお客様からの申し込みを促し、申し込みに応じて保険サービスの通信販売を行う損害保険会社です。申し込みや保険金支払い時の手続きなどでお客様から電話を受けることは非常に多く、電話応対品質には細心の注意を払っていましたが、2012年4月、社長直轄のSales & Service Performance Development部(以下、SSPD部と略)を設け、顧客とコンタクトを取る部門の横断的なトレーニングを始めています。

お客様に選ばれる会社になることを目指す

 アメリカンホーム保険会社は1899年の設立で、アメリカのニューヨーク市に本社を置く損害保険会社です。日本には、1960年に損害保険事業の免許を取得して進出。テレビCMや新聞、雑誌、ウェブサイトに広告を多く出稿しており、「アメリカンホーム・ダイレクト」の名称を見聞きした経験がある人は多いでしょう。
 
 同社のビジョンは「常にお客様視点で考え、お客様の信頼を得て『お客様に選ばれる会社』になることを目指す」というもの。「社員同士は普段からこの点を確認し合い、トップ自らが本気で取り組む姿勢を見せています。お客様視点に欠けた言動があると、互いに注意し合う社風です」と経営企画部 広報・CSR課 課長の只友真理氏は語ります。

 通信販売であるため、電話による問い合わせが多く、また加入者から保険金の請求手続きなどについての問い合わせを受けることも多々あります。そのため、同社は従来から電話応対の品質向上に努めてきましたが、いっそうのCS 向上のため、2012年4月に社長直轄のSSPD部を立ち上げました。

SSPD部の訓練で顧客満足度を高める

 同社には、顧客とコンタクトを取る部門として、保険金請求関連の電話を受ける複数の保険金サービスセンターと、それ以外で顧客とコンタクトを取るカスタマーリレーションシップセンター(富山市・那覇市)があり、別々にトレーニングしていました。しかしSSPD部を設けることで、これら全てのセンターを横断的にトレーニングする体制にしたのです。「SSPD部では、カスタマーリレーションシップセンターを対象に、スクリプト(台本)を作ってトレーニングをし、OJTで電話応対の内容を聞いて指導しています。現場リーダーの育成にも力を入れており、スキルだけでなく考え方もしっかり指導するようにしています。また、保険金サービス本部に対しては、新人教育のために日報のチェックとフィードバックを充実させるなど、いっそう細やかな指導をしています」と只友氏は語ります。

 一般的にダイレクトマーケティング事業におけるコールセンターは、かかってきた電話に対し、言われた通りの事務処理を行います。しかし同社のカスタマーリレーションシップセンターでは「コンサルティング」の意識で応対します。「お客様のご要望やお悩みなどをお伺いし、お客様の立場になって考えます。その結果、A保険でなく、B保険の方がふさわしい場合もあり、お客様に最適な保険をお勧めすることができるのです。この販売方法は、お客様と二重奏を奏でるという意味で、DUO(デュオ)と呼んでいます」と只友氏。実際、DUOによって顧客満足、契約率ともに向上したと言います。SSPD部は、電話応対を通じたコンサルティングの品質向上にも大きく貢献しています。

社外のコンテストで高い評価を受ける

  • 担当毎に「現在のCS率」が表示される。

     同社はSSPD部を立ち上げる以前から、電話応対品質の向上に努めており、その一つが、日本電信電話ユーザ協会の企業電話応対コンテストへの参加です。3年前に初参加し、2回目の参加となる2011年には傷害・火災保険金サービス部火災新種保険金サービスセンターが優良賞を受賞。翌2012年には医療保険金サービス部医療保険金第二サービスセンターが同社として2年連続で入賞を果たすなど、社外でも高い評価を受けています。

 西川千陽氏は、2011年に優良賞を受賞したセンターに所属。火災や地震による家財の保険金請求、自転車事故などによる損害賠償請求の応対をしています。事故の場合、感情的になった被害者とコンタクトを取ることもあります。「加入者様は自分が事故を起こして不安でたまらないもの。まずは『大丈夫ですよ』と伝え、安心してもらうことを心掛けています。一方、被害者様の場合は感情をしっかり受け止めることが大切です」と語ります。

 事故センターに入った第一報をもとに、プロフィールや事故状況を確認。自分が電話する時には、第一声を聞いて、事務的な説明を求められているか、感情を受け止めてほしいのかを聞き分け、応対の大筋の方針を決めるといいます。「どのような電話でも、自分の両親からかかってきたと思えば、共感できます」と説明します。

 また、渡邉はるな氏は、2012年に優秀賞を受賞したセンターに所属。このセンターには、がんなどの病気を患い保険金を請求される方からの電話がかかってきます。「保険加入者は高齢者が多く、保険金申請の書類の書き方の問い合わせなどが多いです。注意点は、明るい声、聞き取りやすいスピード、ご高齢の方にも分かりやすい語彙(ごい)を使うことです」と話します。

 同センターは15名。渡邉氏らセンターのメンバーは、朝の声出しをはじめ、月に2~3回、4人チームで互いの電話応対のログ(記録)を聞き合い、注意し合うなど、コンテスト対策を積んできました。期間中、いつコンテストの電話がかかってくるかは分かりません。「加入者様が保険金請求の電話をかける行為は非日常的で、緊張されているはず。こちらが緊張しては、相手もますます緊張します。努めて明るく話し、気軽に質問できると思っていただく。そう心掛けて応対しました」と渡邉氏。このような姿勢が受賞につながったようです。

 SSPD部による部門横断的なトレーニングと、企業電話応対コンテストへの参加で、今後も各センターのレベルアップが期待できそうです。

お話をお聞きして

明るく広いフロアでは、皆さんが元気に電話応対していたのが印象的でした。新人からベテランまで幅広いスタッフがいて、お互い教え合い、励まし合っている様子が伺えました。

企業理念の浸透度    ★ ★ ★
組織的対応力      ★ ★ ★
コンテストへの挑戦度  ★ ★ ★

お話をうかがったのは…

経営企画部 広報・CSR課課長
只友 真理(ただとも まり)氏

どんな災害時でもお客様からの電話を受けられるよう、複数のコールセンターが相互にバックアップし合うなどBCP(事業継続計画)にも力を入れています。

医療保険金サービス部
医療保険金第二サービスセンター 所長
河井 竜人(かわい たつと)氏

医療保険金第二サービスセンターのメンバーの誰が応対しても、常にお客様にとって心地よい電話応対(サービス)をご提供できるよう、センター全体のレベルアップに努めています。

医療保険金サービス部
医療保険金第二サービスセンター
渡邉 はるな(わたなべ はるな)氏

ご家族のご病気でお力落としのお客様がほとんどですので、日ごろからお客様の身になり、いたわりの気持ち、お見舞いの気持ちを大切に電話応対をしています。

傷害・火災保険金サービス部
火災新種保険金サービスセンター
西川 千陽(にしかわ ちあき)氏

コンテストでは同じ説明を繰り返してしまうなど、「失敗した」と反省していただけに、受賞を知った時は驚き、喜びもひとしおでした。

会社名 アメリカンホーム保険会社
日本における代表者
会長
後藤 久雄
社長兼CEO 橋谷 有造
日本における支店 東京都港区虎ノ門4-3-20 神谷町MTビル
事業内容 損害保険業
日本における従業員数 1,142名(2012年9月末現在)
企業URL http://www.americanhome.co.jp/

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