電話応対でCS向上事例

-株式会社アステム-
正確性とスピードの課題をチーム制で解決、応対スキル向上のため研修の積極活用を進める

記事ID:C20105

株式会社アステムは、病院や診療所、調剤薬局や福祉施設へ医薬品や医療機器などを提供しています。応対場面で正確性とスピードが求められる「なでしこーる」の取り組みについてお聞きしました。

事業概要についてお聞かせください。

DX営業部 部長
「なでしこーる」センター長
堀之口 裕樹氏

堀之口氏:当社は、九州地域と山口、広島エリアの医療・福祉機関に向け、医療用医薬品、医療機器・設備、医療用消耗品、検査試薬、 介護用品などの卸売販売及び修理・メンテナンスを行う企業です。大分に1拠点、福岡に1拠点あるコールセンターは「なでしこーる」の名称でお客さまに親しまれており、約50名のオペレーターが、病院やクリニック、薬局など約2万軒の得意先からの問い合わせに応対しています。この業界における受注業務はWeb システムを介して行われることが主なのですが、薬品の在庫有無と納期については、電話での問い合わせ確認を望まれる得意先が多く、業務全般に関するさまざまな内容についてもお答えできる範囲で対応しています。また、当社では、得意先に流通情報を共有するウェブサイトを提供しており、DX 営業部と現場担当者が連携し、病院の先生や薬剤師などへオンラインを活用しながら、導入や活用を促進しています。ちなみに、「なでしこーる」という名称は、なでしこの花のように寄り添って皆で作り上げていこうという意味を込めて、命名されたと聞いています。

チーム制でオペレーターの精神的負担を解消

電話応対に関する課題とその対策について教えていただけますか。

「なでしこ―る」のフロア全景。電話応対では重要な箇所は復唱を行うなど、正確さを担保するための取り組みが欠かせない

堀之口氏:製品を正確に、得意先の元にお届けすることが私たちのミッションと考えています。「なでしこーる」で受け付ける内容ですが、この業界独自の傾向がいくつかあります。まず、医療品はその取り扱いにおいて常に正確さを求められます。それは、やり取りで生じたわずかなミスが原因となり、生命に関わるような事故につながらないとも限らないからです。ただ、電話の向こうのドクターや薬局の方の中には、早口で製品名を言わず「いつもの」といった感じで注文するケースも少なからず見られました。しかし、たとえ急がされても最初から最後まで丁寧に復唱し、分からないことはその場で聞くことを徹底するようにしています。一方、1日の入電件数が非常に多いため、オペレーター1人が1日に応対する件数は200件近くなり、スピードを重視した応対が必要な側面もあります。正確性とスピードの双方が求められる中、応対現場における課題として精神的な負担を感じるというオペレーターの声が徐々に増えてきていました。もう一つ、電話応対は常に1対1の状況となり、困ったことが起きても多忙な職場であるため気軽に相談できる環境になく、オペレーターが孤立しがちという状況が見えてきました。

社内打ち合わせの様子

 そうした中、2024年4月の組織変更で、得意先の課題に対して営業とコールセンターが同じ目線で解決に臨むという方針のもと、「なでしこーる」が営業部門に所属することになり、課題解決の取り組みを開始しました。その一環として、業務負担を一人で背負うのではなく、チームで解決する取り組みを始め、まずは大分県にあるコールセンターで、応対の難しい問い合わせをチームの共通課題として捉え、全員で向き合うことができる体制を実現しました。具体的には、電話に出ない時間を可能な限り作り、その時間内で、チームとしてヒューマンエラーの共有や対策、応対向上のための取り組みを行っています。処理する情報量が増えるとヒューマンエラーが起きやすいので、ミスやアクシデントを未然に防ぐための取り組みで、チーム制と合わせて効果が出てきていると感じています。

DX営業部 「なでしこーる」大分分室
係長 加賀 晴美氏

加賀氏:「なでしこーる」で取り扱う製品は何万種類とあり、アイテム数の多さが当センターの特徴です。オペレーターという職務上、製品名を聞いただけで用途などが即座に分かることが理想なのですが、数多くの薬の中でそれがどんな治療に使われているのかすべてを把握するのは実際のところ非常に難しいものでした。そこで、チームミーティングで製品の特徴や起こったミスについて情報を共有し、メンバー間でミスの要因や対策を話し合ったり、Eラーニングを活用し、疾患や治療についての知識を得られるような取り組みを2025年から始めました。ドクターや薬剤師の先生方は、オペレーターの知識や対応について、信頼して電話をかけてくださっている面もあるため、その期待に応えようとする日々の応対のなかで「どうしても不安な声になり、それが隠せないときもあった」と面談で打ち明けてくれたオペレーターもいました。しっかり学ぶことで、不安な気持ちを払しょくでき、お得意先の目線に立って安心して電話できる環境が作れたのではないかと思います。

応対スキル向上のため研修の活用を検討

ユーザ協会の提供する電話応対教育事業への取り組みについて教えてください。

社内研修

加賀氏:2011年に電話応対コンクールへ参加したことがありますが、その後はオペレーターが受注業務以外の時間が割けず、残念ながら参加できていませんでした。ただ、ここ1年の組織変更によってコミュニケーション力の重要性に改めて注目が集まり、電話応対教育へ取り組む機運が高まってきています。最近では、ユーザ協会大分支部さんからの紹介を受けてオペレーター4名がクレーム研修を受講しました。また、電話応対技能検定についても、応対や接遇に関する基本の習得と応対品質の意識向上のために活用していきたいと考えています。今後は、より多くのオペレーターが研修などに参加できる体制を整え、応対スキルのステップアップのための取り組みを進めていきます。

社内連携の強化で新たなニーズの対応を目指す

最後に、今後の目標について教えてください。

営業スタッフとの交流会

堀之口氏:2024年4月から電話応対の部門を管理する立場になり、先ほど述べた以外にも営業と「なでしこーる」との交流会を行うほか、営業員が病院や調剤薬局の方々とどのように関わり関係性を築いているかを知るために、オペレーターが営業員と同行訪問するなど、情報共有のための施策を進めてきました。応対業務ではクレームを起こしたくない、ミスをしたくないという意識に囚われ、本来の役割や本質を見失ってしまいがちでした。しかし、僅かなミスはどうしても起きてしまうものです。今回のさまざまな取り組みで、ミスやクレームをマイナスとして捉えるだけでなく、次の行動にもつなげていこうとする前向きな方向にオペレーターの皆さんが意識を変えていってくれたことが、何よりの収穫だと考えています。私たちの役割は、九州と山口、広島エリアの医薬品提供体制を支える存在として地域医療へ貢献することです。現状、「なでしこーる」の業務は受注が中心ですが、今後は社内各部署との連携を強化して得意先の受注以外の困りごとなど幅広いニーズに対応できる組織へ成長できるよう、挑戦を続けていきます。

加賀氏:電話応対は、対面以上に高いコミュニケーション能力が必要と考えています。私たちの先に患者さまがいることを忘れず、寄り添う気持ちや会話の大切さをこれまで以上に意識したコミュニケーションをはかり、プライドを持って営業サポートにつながる業務に取り組んでいきたいと考えています。

会社名 株式会社アステム
設立 1948年(昭和23年)5月
本社所在地 (福岡本社)福岡県福岡市博多区東比恵3-1-2東比恵ビジネスセンター10F
代表取締役社長 吉村 次生
事業内容 各種医療・福祉機関に対する医療用医薬品、医療機器・設備、医療用消耗品、検査試薬、介護用品などの卸売販売及び修理・メンテナンス
従業員数 1,443人(2024年3月末)
URL https://www.astemf.jp/
〔ユーザ協会会員〕

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