電話応対でCS向上事例
-甲賀農業協同組合-「電話応対コンクール」を通じて職員の電話応対品質向上を追求 “お客さまとJAこうかの絆”の構築を目指す
記事ID:C20068

甲賀農業協同組合(JAこうか)は、滋賀県南東部の甲賀市・湖南市を活動区域とする農業協同組合です。電話応対に対する考え方や取り組み、電話応対コンクールに参加し続ける背景や効果などをうかがいました。
事業概要と電話応対の体制をお聞かせください。

総務部 教育人事課
課長 山下 耕平氏
山下氏:当組合は、滋賀県甲賀市・湖南市の農業者、地域住民の方々が組合員となり、相互扶助を共通の理念として運営しています。地域農業の発展と豊かな地域社会の実現を目的に、農業関連事業はもとより、信用事業や共済事業といった総合的な事業展開を行っています。地域内には、金融業務を行う支所や、農産物の販売などを行う店舗、営農指導を担う営農経済センターなどの事業所を構えています。電話応対については、支所や営農経済センターなどの全職員が応対する体制となっています。農業関連をはじめ金融、葬祭、旅行など事業内容が多岐にわたりますので、お問い合わせ内容に応じてそれぞれの担当者が応対しています。なお、急を要する葬祭や自動車事故対応に関しては、営業時間以外にも連絡を受けられる体制をとっています。電話以外のお客さま対応ツールとしては、ウェブサイトにお問い合わせフォームを設けています。
一枚のハガキが電話応対品質を見直すきっかっけに
電話応対に対する考え方や取り組みについてお聞かせください。

職員の行動指針をまとめた「レインボーロード」(左)と、JAこうかの広報紙「こうか」(右)
山下氏:10年ほど前のことですが、電話応対品質を見直すきっかけとなった出来事がありました。当組合では、組合員の方に向けて広報紙を毎月配布しており、その中にご意見などをお寄せいただくハガキを添付しています。ある時、組合員さまから「電話応対の感じが悪い」と書かれたハガキが届いたのです。それが契機となり、お客さま満足向上のために、応対品質の向上が急務となりました。そこで取り組んだのが、電話応対コンクール(以下、コンクール)への参加です。さらに、入組前の内定者に対して、ビジネスマナー習得の一環として、電話応対を学ぶ研修を実施しています。
当組合には、JAこうか職員マニュアル「レインボーロード -7つの原点-」というものがあります。ちなみにその7つとは、「ロード1.気持ちの良いあいさつ」「ロード2.きちんとした身だしなみ」「ロード3.心からの接客」「ロード4. 電話応対者はJA の顔」「ロード5.整理整頓」「ロード6.ゆとり出勤」「ロード7.まわりの声を感じよう」です。このように、マニュアルにおいても電話応対に対する当組合の考え方が明示されています。さらに、職員の資質向上を図る目的で、「もっと向上委員会」という組織を立ち上げました。この組織は、職員マニュアルに基づく啓発ポスターなど作成し、事務所や研修室に掲示するといった活動を行っています。

総務部 教育人事課
副担当者 辻 優希氏
辻氏:お客さまは高齢化が進んでいる農業従事者が中心のため、50歳代以上の方が比較的多くなっております。そこで、できるだけ分かりやすい言葉ではっきりと話すことを心掛けています。また、同じ内容を繰り返し聞かれることもありますが、そのような場合には、同じ言葉を使わずできる限り平易な表現に言い換えるなど、お客さまにより理解していただけるような応対を意識しています。

総務部 教育人事課
主担当者 岡本 小百合氏
岡本氏:保険や共済など契約が伴うサービスにつきましては、契約時にお客さまとの間に「言った、言わない」といったことが発生しないよう、きっちりと明確にお伝えすることが大事です。そこで、電話でお伝えするだけでは不安な場合は、ご自宅に訪問し、対面で図表などをご覧いただきながら説明することもあります。また、コロナ禍で、対面で話すことが難しかった際は、サービス内容のご理解を促す補足資料を作成してご覧いただくということも行っていました。基本的に共済や貯金関係などは個人情報になりますので、ご本人にしか話せないのですが、その方がご高齢でご自分だけで説明を聞くのが不安という場合には、例外的にご家族の方にも説明させていただくというような対応も行っております。
2015年以来、コンクールは入組1年目と5年目の職員が全員参加
「電話応対コンクール」に対する取り組みと成果を教えてください。

電話応対の様子
山下氏:コンクールには、2015年から毎年十数名が参加しています。参加者は、入組1年目と5年目の職員全員で、現在まで延べ133名を数えます。1年目の職員は基本的な電話応対スキルを学習してもらい、5年目の職員には5年間の集大成として参加してもらいます。成果としては、まず電話応対についての苦情がなくなったということが挙げられます。また、コンクールの出場者が毎年増えていき、さまざまな部署に配属されますので、そうした出場経験のある先輩が後輩に教えたり、練習に付き合ったりするようになり、職場一体となって出場者をサポートするような良いサイクルが生まれています。これらを通じて、教える側も周囲の職員も電話応対に対する意識や技量が向上していると感じています。

ビジネスマナー研修
岡本氏:私が昨年教育係として関わっていた、入組1年目の男性職員の話です。彼はこれまで固定電話にほとんど触れたことがなく、事務所に電話がかかってきた際に、「その子機に出て」と言われ、「子機って何ですか」と質問したほどでした。コンクールに参加する際も、予選会では事務所に直接審査員の方から電話がかかってくるのですが、試験の30分前ぐらいから泣き出してしまったんです。知らない番号からかかってくる電話に恐怖を感じてしまったんですね。何とかなだめて試験を受けたところ、すごく上手に話せて、予選も突破できました。それ以来、電話を取ることに対する恐怖心が薄れていったようで、やはりコンクールに参加する意義は大きいと感じました。
辻氏:私自身、入組1年目と5年目にコンクールに参加し、1年目は予選で敗退しましたが、5年目は県大会に進み優良賞をいただけました。振り返ると、1年目の時はご案内するだけで手いっぱいで、電話応対に対して苦手意識がありましたが、5年目の時には1年目のリベンジではないのですが(笑)、県大会での表彰を目指してトレーニングしてきて結果が出たので、自信を持って電話応対ができるようになりました。とはいえ、相手の真意など、深いところまで読み取って対応するという部分については、まだまだスキルが足りてないなという気づきも得られました。
電話応対は会社のイメージを決める重要な顧客接点、今後も品質向上を図っていく
最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。

窓口での対応
山下氏:昨今、LINEやチャットなどの急速な普及により、問い合わせする手段も多様化しています。利便性が向上している反面、企業や団体にとっては電話でのコミュニケーションが減少することで、顧客とのつながりが希薄化しているように感じています。甲賀市・湖南市を活動域とする当組合は、地域から選ばれる存在になるために、電話応対を通じてお客さまの心と記憶に残り、“人と人との絆”を感じていただける存在でありたいと願っています。そのための一助として、今後も継続してコンクールへの出場を続けて、職員の電話応対品質の向上に努めたいと考えています。

組織名 | 甲賀農業協同組合 |
---|---|
設立 | 1994年(平成6年)4月 |
所在地 | 滋賀県甲賀市水口町水口6111-1 |
代表理事組合長 | 池村 正 |
事業内容 | 信用・共済・購買・販売・指導・利用・観光・資産管理・葬祭、その他総合農業協同組合としての多岐にわたる事業 |
URL | https://ja-kouka.shinobi.or.jp/ |
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