電話応対でCS向上事例

-指導者級資格保持者のための品質向上研究会レポート-
もしもし検定がオンライン受検できるようになったことを受け指導者級資格保持者に向けた「オンライン講師養成講座」を実施

記事ID:C20023

2021年7月2日(金)と7月3日(土)の2回、電話応対技能検定(もしもし検定)の指導者級資格保持者を対象とした「品質向上研究会」が行われました。今回は、コロナ禍でオンライン研修対応が必須となっている指導者級資格保持者に対し、「オンライン講師養成講座」と題して、対面研修との違いやオンラインだからこそ気をつけるべき点についての講演がありました。

時代が変わる今こそ、オンライン研修に取り組んでほしい

専門委員会 委員長
中京大学法務総合教育研究機構教授
稲葉 一人氏

 はじめに、事務局より2020年12月にもしもし検定の実施細則を改訂し、3級から1級の講習をウェブから受けられるようになったこと、そのため、本研究会を企画したとの説明がありました。
 その後、専門委員会の委員長の稲葉 一人氏より、大学のゼミにおけるZoom活用方法のレクチャーがありました。
 「10分前にはZoomを開場しておくこと」「ZoomのURLは毎回同じものにすること」という基本ルールに加え、進行の仕方として「個人的なこと、関心を持った社会事象について自分の言葉で語らせること」「口で説明するだけでなく、チャットで意見を書かせること」「話しにくいテーマの時は、次に誰が指されるのかが分かるよう『ネクストバッターズサークル方式』を取ること」など、具体的で示唆に富んだオンライン研修のコツをご紹介いただきました(図1、図2参照)。また、今の時勢を捉えて「これを機に、日本語やマナー自体が変わるかもしれない。そういう時代にいることを意識して指導にあたってほしい」と締めくくられました。

 続いて、株式会社アクシアの岩野氏により「オンライン講師養成講座」と題して、127名の参加者を対象に、約2時間の講演がありました。

オンライン研修の四つの基本ルールとは

講師
株式会社アクシア 代表取締役社長
岩野 敬一郎氏

 冒頭、オンライン研修のルールとして「カメラはオンに」「音声はミュートで」「反応は大きく」「質問などはチャットでいつでも」という四つの項目が挙げられました(図3参照)。「カメラはオンに」は、画面の向こうが見えにくいオンライン研修で、参加者に集中してもらうために必要なルールで、募集の段階から伝えておくことがポイントとなるとのお話でした。「反応は大きく」は、手を振ったり、手で丸を作ったりすると、参加意識が高まるだけでなく、リラックス効果があるとのことで、岩野氏の「練習しましょう」というかけ声で、参加者全員が大きく丸を作ったり、手を振ったりしたところ、緊張していた参加者の表情が一気に和やかになりました。

 次に、これまで対面研修を行ってきた講師が、オンライン講師として力量を高めるためには、一に「練習!練習!練習!」、二に「いい感じで割り切る」ことが大切というお話がありました。
 特に、「参加者のオンライン環境を講師がどこまで面倒を見ればよいのか」という問いに対しては、望ましい環境を説明して用意してもらうように依頼はできても、設定することまではできない、最後は相手に任せるしかないので、割り切りも大切だという言葉に、参加者は深くうなずいていました。

リアル研修とオンライン研修のどちらが効果的か?

 続いて、「リアル研修とオンライン研修のどちらのほうが、効果があるの?」というテーマで、参加者によるオンライン投票を行いました。結果は、「どちらとも言えない」が約6割で最多でしたが、4割弱が「リアル(対面)研修」と回答しました。これに対して、岩野氏からは、研修の目的、特徴に合ったプログラム設計が重要であり、リアルの研修をそのままオンラインに置き換えるとうまくいかないこと、一方で、身体接触の効果が高い研修以外は、オンラインで十分に対応できること、さらに、オンライン研修をリアル研修の代替手段だと思っている主催者の研修は学習効果が落ちるし、そう思って参加する人の学習効果も低くなるという解説がありました。
 また、オンライン研修のメリットとして、全員の顔が画面上で等距離にあるので、一人ひとりの反応が分かりやすく、慣れると「この人はよく聞いている、この人はほかのことを考えている」ことが、対面よりもよく分かるとのことでした。反対に、オンライン研修だからこそ気をつける点として、疲れやすいので1時間に1回程度の休憩を入れること、発言するのは勇気がいるので、チャット機能や反応ボタンを活用すること、そして、講師は常に画面をよく見ておくことなどが挙げられました。特に、オンライン研修の講師は、参加者のボタン反応やチャットの質問を見落とさないようにすることが大切で、そのためには一にも二にも経験を積むこと、また、相手に完璧なリアクションを求めないことが大切だという指摘がありました。

ブレイクアウトルームによる、グループディスカッションのコツ

 その後、Zoomの特徴でもある「ブレイクアウトルーム(参加者を少人数のグループに分けてミーティングを行う機能)」を使って、グループディスカッションを実施する際のポイントについてお話がありました(図4参照)。重要なのは、明確で分かりやすい指示をすることで、自分が思っている以上に「今、何をするんでしたっけ」と理解していない人がいること、その前提で、各ブレイクアウトルームを回って、テーマに沿ったディスカッションができているかを確認すべきというお話がありました。

 オンライン研修では、講師はパソコンを2台用意して、資料の共有や回線不調に備えたほうが良いこと、事前のリハーサルは入念にやったほうが良いが、本番では回線が切れるなどさまざまな理由で離脱する人がいることを肝に銘じて、一度研修が始まったら、参加している人に集中することがコツであることをうかがいました(図5参照)。

 午後の部では、指導者部会から、もしもし検定の「模擬応対者」に向けたハンドブックを作成しているとの活動報告があり、その後、電話応対の品質向上に関する勉強会が行われました。もしもし検定の実技試験問題を使って、応対音源をオンラインで採点するというもので、クレーム電話への応対を聞いて採点した後、「ブレイクアウトルーム」を使って13のチームに分かれ、審査のポイントを議論しました。
 審査後の講評では、どの観点で捉え、なぜその評価にしたのかを明確に伝えること、採点者間でしっかりと話し合って、認識を合わせることが大切とのお話があり、実技試験をオンラインで採点することの難しさと可能性について受講者それぞれが体感する内容となりました。

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