電話応対でCS向上事例
-電話応対技能検定 指導者勉強会レポート-電話応対実技教育に必要とされる模擬応対者の役割とは
医療における“模擬患者のあり方”を通しての考察
電話応対技能検定(もしもし検定)や電話応対コンクールにおいては、受検者、参加者の相手となる「模擬応対者」の存在が欠かせません。2020年1月に行われた「指導者級資格保持者 品質向上研究会」では、その模擬応対者の望まれるあり方について、考察を深めました。
▲日本医科大学医学教育センター 助教 井上 千鹿子氏
講師として登壇した井上 千鹿子氏(日本医科大学医学教育センター助教)と市川 恵氏は、ともに日本大学藝術学部演劇学科在学中の2000年頃から“模擬患者のあり方”を探求、現在はこの分野での第一人者として活躍中です。
講演の冒頭、まず井上氏から「模擬患者とは?」について、紹介がありました。
「医療教育においては、患者さんや高齢者の気持ちを体験するため、採血や挿管など手技を練習するため、さまざまな形式のシミュレーション教育が行われています。模擬患者が活躍するのもそうしたシミュレーション教育の一つで、医療を学ぶ学生が実際の現場に出る前に患者さん役(模擬患者)とのシミュレーションを通じて話し方や診察について学ぶ手助けをするものです。こうした仕組みにより、学生は安全に、かつ繰り返しての学びが可能となります。難易度も変更できますし、失敗してもその理由を考察できます」
こうした模擬患者は、現在医学部のほか、歯学部、薬学部で授業や試験で活用されているとのことです。
同じ内容を同じ速度で答える「標準模擬患者」の重要性とは
市川 恵氏
「試験用の模擬患者、いわゆる『標準模擬患者』は、複数名で一人の患者の役を演じるため、学生の質問に対してどの標準模擬患者も同じように答えることが求められます。例えばどのような痛みかを伝える時でも、きりきり痛いとか、しくしく痛いなど表現が異なると、公平な試験とならないためです。そのため標準模擬患者には『シナリオの読み合わせ』『シナリオすり合わせ』『演技練習と標準化』を行い、返答する内容だけでなく、速度も同じレベルとするなどの習熟が求められるのです」
次に井上氏は、こうした模擬患者と、電話応対における模擬応対者との共通点について話を進めました。
「誰にでも等しく接することが求められるのは、標準模擬患者も、模擬応対者も同様です。例えば受検者が沈黙した時に“助け船”を出したり、意図的に受検者を試す、誘導する行為は、公平性、公正性に欠け、採点結果に影響します。また受検者の印象により手加減したり厳しくしたりする行為も同様です」
「沈黙が続いたらどうする?」など、模擬応対の課題を真剣に討議
講演の終盤では、こうした“問題”が含まれると思われる音声データを参加者全員で聞き、どこに問題があるかをグループに分かれ話し合い、発表するワークショップも行われ、活発な意見交換がなされました。さらに「もし受検者の沈黙が続いたら、どうする?」といった、現実に即した課題についても真剣な討議が行われました。
最後に井上氏は今アメリカで主流となっている「模擬患者養成者の標準化が、模擬患者の標準化に大きな影響を与える」という考え方を基に、「電話応対においても指導者の標準化が模擬応対者の標準化において重要である」という意見を示しつつ、以下のように講演をまとめました。
「2020年は模擬患者の養成に公的な予算が付くなど、医学教育分野では大きな変化が見られる年となります。電話応対教育も、そうした変化を迎える時期に来ているのではないかと、大いに期待しております」
今回の講演は、指導者級資格保持者にとって、「模擬応対の重要性」をあらためて実感する機会となりました。
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