電話応対でCS向上事例

-ダイキン工業株式会社-
「AIチャットでサポート」による問い合わせの自動化で入電件数の低減と顧客体験価値の向上につなげる

記事ID:C20091

ダイキン工業株式会社は大阪市梅田に本社を置く空調機、化学製品メーカーです。ビルなどの業務用空調設備で40 %のトップシェアを誇る同社の、お問い合わせ対応における課題と取り組みについてうかがいました。

御社の業務内容と、コンタクトセンターにおける課題についてお聞かせください。

西日本コンタクトセンター
CS 担当課長
中尾 華子氏

中尾氏:当社では、主に家庭用・業務用の空調機、空気清浄機を取り扱っています。海外事業比率は8割を超え、世界170ヵ国へ事業を展開しています。コンタクトセンターには、空調機のユーザーや販売店、代理店などから、購入前の相談や修理受付など多種多様なお問い合わせが寄せられます。お客さまのお困りごとを迅速に解決するため、24時間365日、ワンナンバーで対応しています。コンタクトセンターは横浜と大阪の2ヵ所にあり、繁忙期は600名、閑散期は300名体制で運営しています。空調機は季節性のある製品ですので、年間の入電数約180万件のうち、おおよそ半分が6月から8月の夏期に集中するという特徴があります。2024年の夏は、猛暑により過去十年間で最多となる約40万件を超える修理の依頼を受けました。

コンタクトセンター
業務革新グループ
リーダー
松葉 美咲氏

松葉氏:課題についてですが、夏期に集中するお問い合わせのほとんどが人の対応が必要な電話とファックスによるものです。また、天候や気温によって入電件数が変動するため、月・日・時間帯ごとに繁忙、閑散の差が生じます。それらを踏まえて人を配置する必要があるのですが、予測は大変難しいものでした。繁忙期に備えて、毎年短期で新人のコミュニケーターを受け入れて体制を組むのですが、人が集まりにくく、コスト面や教育工数の増加、新人が応対することによる品質低下といった新たな問題も生じていました。

導入までの経緯を教えてください。

写真:「AI チャットでサポート」の画面
チャット画面から「製品」を選択し、不具合の内容を選び、さらに表示される質問に答えると故障かどうかが診断できる

松葉氏:入電件数を低減し繁閑差を少なくするため、電話とファックス以外のお問い合わせ窓口としてお客さまに合わせたデジタルチャネルの提供を2016年から本格的にスタートしました。自動化の比率では開始当時が10%程度と、人を介しての応対が主だったのですが、ちょうどその時期からデジタルというものがお客さまにも受け入れられてきたように記憶しています。そこで、まずはコミュニケーターを介さず自己完結することを目指して「AIチャットでサポート」を導入しました。(写真参照)
 チャット画面から、エアコンや空気清浄機など問い合わせたい製品を選択した上で、「運転しない」「冷えない」など不具合の内容を選び、さらに表示される質問に答えていくと、故障かどうかを自動で診断してくれます。最初は不具合だと思われた症状でも、製品の操作で解決されることが多くあります。実は、修理受付のWebサイトは以前から存在したのですが、「金額はいくらかかるのか」「修理は本当に必要なのか」といった疑問があっても問い合わせる機能がなかったため、あまり利用されていませんでした。そこで、今回のAI チャットでサポート構築の際にはお客さまに修理の前に、そうした気になるポイントも解決していただき、納得の上で受付に進めるよう設計しました。また、お客さまからいただいた質問をチャットボットに反映することで、次に別のお客さまから同様の問い合わせがあった際には最適な回答ができるようになり、それでも解決できなかった場合には有人チャットがやり取りを引き取るなど、シームレスに相談ができる環境の提供をトライアルで行っています。こうした取り組みにより、AI チャットでサポートの利用率はとても高く、修理窓口の入電件数削減につなげることができました。

家庭やオフィス、店舗など幅広く使用されているダイキン工業の空調機・空気清浄機

 また、販売店などのお客さまからの技術相談では、お客さまが機器の画像をSMSで送り、相談員がパソコン画面で確認しながら対応するといった活用を推進し、効率化だけでなくCX(Customer Experience:顧客体験・顧客体験価値)向上に寄与する取り組みを進めています。さらに人員体制強化の一環として、お客さまに合わせた商材やサービスを提案してソリューション体験を創出するインサイドセールスチームを設立し、閑散期の業務量確保を図りました。これは、ベテランのコミュニケーターが通年で働ける環境をつくることで、応対品質の向上につなげる取り組みとなります。

AI チャットボットの導入でどのような効果がありましたか。

コンタクトセンターでは、24時間365日、ワンナンバーでお客さまのお困りごとに対応

松葉氏:修理への納得度を高められるようになった結果、インターネット受付の完了率を約70% まで向上させることができました。また、ファックス受付のEDI活用や受付の後工程である日程調整を販売店さまやお客さまご自身で完結できるサイトの構築など、ほかのデジタル活用と合わせた効果としてですが、取り組み前と比較して入電件数が3割ほど削減できた点も挙げられます。さらに、修理で訪問したお客さまから5点満点で評価いただく「ふれあいアンケート」を実施し、顧客満足度の指標としていますが、そのアンケート調査において、4.5点の高い評価を受けることができました。ベテランコミュニケーターの通年雇用の取り組みも含め、応対品質と効率化を両立し安定したセンター運営を実現できたことが、こうした結果に結びついたと考えています。

中尾氏:ICTを活用したその他の取り組みとして、人材定着のための教育や働き方の見直しを進めました。1つ目は、オンデマンド型の E ラーニング研修です。これにより、新人の業務習熟度を上げることができ、また、管理者や スーパーバイザーの工数削減ができました。2つ目がテレワークの活用です。一定の基準を満たせば、雇用形態を問わず出勤時と同様の業務を在宅で行えるようにしたことにより、勤務の柔軟性を実現し、人員確保がしやすくなりました。

最後に、今後の展開について教えてください。

家庭やオフィス、店舗など幅広く使用されている 、ワンナンバーでお客さまのお困りごとに対応ダイキン工業の空調機・空気清浄機

松葉氏:コンタクトセンターでは、先ほど触れたアンケート調査のほかにもエンジニアが訪問する前に修理に必要な情報を確認できた割合(製品名・エラー内容)や応対モニタリングの点数、コミュニケーターの生産性などを管理指標として数値化し、その結果をもとに品質向上に取り組んでいます。そうした指標を活用しながら、今後も社内外のデジタルチャネルの整備を加速してまいります。一方で、デジタルを好まれるお客さまにはデジタル、人の対応を望むお客さまにはベテランのコミュニケーターによる温かい応対という形で、電話応対とデジタルを完全に切り分けるのではなく、ハイブリッドな応対を強化しCX向上につなげていきたいと考えています。

※ EDI
Electronic Data Interchange(電子データ交換)の略称で、伝票や文書を  通信回線を通じ、電子的かつ自動的に交換すること。
会社名 ダイキン工業株式会社
設立 1934年(昭和9年)2月11日
所在地 大阪市北区梅田1-13-1 大阪梅田ツインタワーズ・サウス
代表取締役社長 兼 COO 竹中 直文
事業内容 空調・冷凍機、化学、油機、特機、電子システム
社員数 7,654名(2024年3月31日現在)単独
URL https://www.daikin.co.jp/
〔ユーザ協会会員〕

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