電話応対でCS向上事例
-オタフクソース株式会社-CTI・CRMシステム、AIとFAQサイトの充実で食を通じて「笑顔があふれる社会」に貢献する
記事ID:C20086

ソース、酢、たれなどの調味料の開発・製造・販売を行うオタフクソース株式会社。同社の商品は、「お好み焼き」や「焼きそば」に合う調味料として世界中で愛用されています。今回は、お客様相談室室長の丹千恵氏に、お客さまの声を商品開発に活用する取り組みなどについてうかがいました。
御社の業務内容についてお聞かせください。

マーケティング部
お客様相談室 室長
丹 千恵氏
当社は、醤油類の卸小売業として1922年に広島市内で創業しました。現在は持株会社制となり、お多福グループ各社がそれぞれ強みを発揮し、「鉄板粉もの文化の普及を通じて世界中の食卓に美味しさを届け、笑顔をデザインする」というビジョンのもと、新たな価値の共創に挑んでいます。2022年に創業100周年を迎え、今期は「共感と連携」を経営方針に掲げています。
国内グループ企業の商品に関する問い合わせ全般を受け付けるのが、オタフクソースマーケティング部に籍を置く私たちお客様相談室の役割です。問い合わせ件数は年間約5,500件で、そのうち8割が電話経由なのですが、それらを3名体制で対応しています。

「お好みソース」(左)「らっきょう酢」(右)
電話のコール数は季節によって増減があります。例えば、初夏の時期は「らっきょう」に関する問い合わせが多く、当社の商品を使って「らっきょう」を漬ける方からの質問にお答えすることも仕事の一つとなっています。私はお客様相談室へ4年前に着任したのですが、その際に驚いたのがお問い合わせの内容でした。お客さまの声の多くが「オタフク愛」に溢れたもので、電話やメールで問い合わせしてまで商品を購入したいという熱意を強く感じました。そうしたお客さまの想いを、経営層をはじめとする他部署へどのように伝えるかを考えながら業務に取り組んでいます。
また、当社には「お好み焼士」制度というものがあります。これは、初級インストラクター、中級コーディネーター、上級マイスターの三段階からなる「お好み焼士」マイスター制度を社内資格として導入したもので、社員は入社研修時にお好み焼きの作り方を学び、全社員が年一回の筆記試験と実技試験を受けられます。初級は基本に沿って焼けることが基準となり、中級はお好み焼き店を開業される人に指導できるレベル、上級になると会社を代表するお好み焼きの専門家として「マイスター」を名乗ることができます。私は初級に合格後、数年かけて中級に合格することができました。
業務上の負担となる日々の起票作業
お客様相談室ではどのような課題があったのでしょうか。

お客様相談室の様子
お客さまから寄せられるご意見は商品開発や改善のための重要な情報となっています。品質保証部に所属していたお客様相談室が2年前からマーケティング部の管轄になったことも、お客さまの声を商品開発に活かそうという経営方針を踏まえたものでした。全社員がお客さまの声を閲覧できるようにしているほか、経営層へ向けた「月度報告」の情報源としても活用しています。月度報告は、1ヵ月間の問い合わせ件数などの数値のほか、トピックスとして具体的な内容をピックアップし、どのような指摘があってそれが対策へどう導かれたのかが分かるように記載しています。また、商品開発に関わる部門が集まって年に4回開催されるVOC(VoiceOfCustomer)検討会のための資料作りにも活用し、電話やメールで受け取ったご意見などの中から開発につながるのではないかというアイデアや、改善のヒントとなる情報を社内に伝えられるようにしています。
こうした情報の収集・整理は企業経営に欠かせない大切な業務ですが、半面、起票作業は多大な時間と労力を要するものとなっていました。電話での問い合わせを受けた際は、通話中に書いたメモや事情・背景などの補足情報を一件一件追記する必要があります。先ほどお話ししました通り、季節や曜日によってコール数が増減し、らっきょう漬けの問い合わせが増える初夏にかけてはメールも含めて問い合わせの対応に追われる時期になります。そうしたなかで、録音データを再度確認して入力する必要も生じますので、そうしたことが応対者の負担となっていたのです。また、お客さまの過去履歴を着信時に確認したいといった要件に対し、従来システムの改修対応にも限界を感じていました。
過去履歴の自動表示と通話音声のテキスト化を進める
導入までの経緯をお聞かせください。
まず、着信相手の過去の履歴を画面に自動表示ができるよう、検討を進めました。同時に、起票に時間がかかるという課題についても解決策を探りました。そして、カスタマーサポートに特化したいくつかの製品を比較検討し、2022年11月に、電話、メールや手紙など複数チャネルからのお客さまの声を集約することのできるCTI・CRMシステム※の導入に踏み切りました。また、お客さま情報が記された「チケット」を着信時に自動起票させることができるクラウド型コンタクトセンターサービスも導入し、さらにAI音声認識APIを活用して、通話音声を終話後に自動でテキスト化する環境を整えました(図参照)。これは、APIとCTI・CRMシステムの機能とを連携することで実現できたものです。

【図:お客様相談室で導入したシステム構成図】
AI音声認識技術の活用で残業時間の削減に
システム導入でどのような効果がありましたか。

商品棚のあるお客様相談室。お問い合わせに対して迅速に応対できるよう、それぞれの商品に貼られたラベルに注意点などが記載されている
過去履歴の自動表示により、お客さま応対の際にこれまでのやり取りを踏まえて的確な回答ができるようになりました。また、応対状況が可視化されたことで、応対が長引いている担当者がいれば、ほかのスタッフがフォローしやすくなった点も効果の一つです。そして、着信と同時にチケットが起票され、通話のやり取りが即時にテキスト化されてチケットへ書き込まれるようになったため、終話後の入力も最低限の作業で済むようになりました。このようにスタッフの負担軽減を実現し、残業時間の削減につながりました。今回のシステム構築によりテレワークの環境も整い、結果としてCS向上とともに、柔軟な働き方が可能になったことで社員満足度も向上したと感じています。
最後に、今後の展開について教えてください。
お客さま応対の面では、現在公開しているFAQをさらに充実させる方向で検討しています。必要とする情報を最短ルートで表示できるよう工夫を加え、お客さまが自己解決しやすい環境の整備を目指しています。ICT技術の活用では、お客さまの声を関連部署にタイムリーかつ効果的な情報提供ができるようにするため、分析ツールのさらなる活用も進めています。これからも「お客さまの声」を大切にし、新しい価値創造の一翼を担えるよう取り組んでまいります。
- ※ CTI・CRMシステム
- コールセンターや顧客サービス業務で使用されるシステム。CTIは電話通信をコンピューターと連携させて業務効率化を図り、CRMは顧客情報の管理と顧客対応の向上を図る。CTIとCRMを連携させることで顧客情報が一元管理され、コールセンター業務の効率向上と顧客満足度の向上が期待できる。

会社名 | オタフクソース株式会社 |
---|---|
創業 | 1922年(大正11年)11月 |
所在地 | 広島市西区商工センター7丁目4-27 |
代表取締役社長 | 佐々木孝富 |
事業内容 | ソース、酢、たれ、その他調味料の開発・製造・販売 |
社員数 | 574名(2023年10月現在) |
URL | https://www.otafuku.co.jp/ |
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