電話応対でCS向上事例
-株式会社 桃谷順天館-母子3世代が愛用する化粧品だからこそ、年配者の声を大切にしたい
記事ID:C20018
1885年(明治18年)に創業し、創業者が“にきび”に悩む妻を思って開発した「にきびとり美顔水」が日本化学会化学遺産にも認定された株式会社桃谷順天館。その商品をはじめ、母子3代で愛用されている商品も多く、高齢のお客さまからの問い合わせが8割を占めているという同社のお客様相談室に、電話応対のコツをうかがいました。
慶長年間から続く薬種商
事業概要についてお聞かせください。
コーポレートブランディング部
企業広報
シニアマネージャー
塔筋 雅美氏
桃谷順天館グループの源流は、慶長年間から続く薬種商です。1885年に創業者の桃谷 政次郎が順天(天に順い、人々に奉仕する)の教えに感銘を受け、人々の役に立ちたいという一心で西洋医学医の桜井 郁次郎氏に師事し、化粧水という概念がまだなかった時代に一本の化粧水を開発したところから始まりました。この『にきびとり美顔水』は、日本初の西洋医学処方の化粧水として「日本化学会化学遺産」に認定されました。近年は化粧品だけではなく、サプリメントや健康食品、繊維、フードなど美と健康のカテゴリーで幅広く事業を展開しています。(塔筋氏)
お客様相談室はお客さまの代弁者 若い開発者に年配者の声を届ける
御社の接客応対の特徴についてお聞かせください。
品質保証室
マネージャー
甲野 有美氏
お客さまは親子代々で使ってくださっている方が多く、お母さま、おばあさまが使っていました、というエピソードを多くいただきます。電話応対の8割は高齢のお客さまなので、商品名がカタカナだと長年愛用されていても「商品名が分からない」ということがあります。最初に商品を特定するために、見た目、色、目につきやすい文字をお聞きするよう心がけています。また、説明が長いと伝わりにくいため、できる限り短く区切って説明するようにしています。反対に、若い方からはメールやLINEでのお問い合わせが多くなります。お客様相談室の窓口が電話だけだった頃は、高齢の方が圧倒的に多く、若い世代のお客様からの問い合わせが少ない状況でした。LINEを導入してからは、スタンプや文章の特徴などから若い方だと推定でき、気軽に質問してくださる方が増えたように感じます。ただ、電話よりもカジュアルにやり取りができる分、LINEでは失礼な表現や対応にならないよう心がけています。(甲野氏)
品質保証室
室長
西山 将司氏
弊社では、お客様相談室を「お客さまの代弁者」と位置づけています。その一例として、いかに高齢者が化粧水などのキャップを開けにくいか、色が見えにくいかなどを体験する取り組みをしています。見えにくいメガネをかけたり、体に重りをつけて杖をついてみたりと、近隣の社会福祉協議会の方とタイアップして定期的に体験いただく機会を設けています。この取り組みから、開けやすい容器に変えたり、見やすい文字フォントにしたりなど、年配の方が使いやすい商品の開発につなげています。社員の平均年齢が若いので、若い世代にとって便利なものが高齢の方にとって不便なものにならないように、お客さまの声をしっかりと社内に届けることが大切だと思っています。(西山氏)
「電話応対コンクール」は甲子園のようなイベント 全社の取り組みにつなげていきたい
電話応対教育について取り組んでいることを教えてください。
漫画で編集された社史
「桃谷順天館物語」
電話応対教育を「土台、自信、おもてなし」の3ステップで考えています。土台として、電話応対技能検定(もしもし検定)の3級の取得を必須としています。ここで基本的な応対やマナーを身につけ、会社の歴史や商品を知ることで応対の自信をつけ、その上で初めてお客さまに満足いただける対応ができるという考え方です。基本を身につけることは大切ですが、マニュアル化しすぎるとロボットのような応対になってしまうので、トークスクリプト※1は作成していません。また、お客さま応対を時間で区切ると、せわしなくなると同時にお客さまに「早く終わらせなければ」と思っていることを見透かされてしまうので、時間制限は設けていません。ただ、無駄に長く話をしているわけではなく、もしもし検定で学んだことを活用して、お客さまから効率よくお話を聞き出し、求めてられていることを提案できるようにと、意識しています。もしもし検定などで習得した土台の上に自信がつけば、自然とお客さまの課題を臨機応変に引き出し、それぞれのお客さまのニーズに沿った提案ができるようになります。(西山氏)
トークスクリプトを作らないのはなぜでしょうか。詳しく教えてください。
大規模なコールセンターでは、サービス品質を担保するためにトークをマニュアル化する必要があると思います。弊社は数人で対応する小さな部署なので、マニュアル化しすぎるとどうしても機械的な応対になってしまいます。商品の歴史と比べると、私たちスタッフの社歴は短いので、長期でお使いいただいているお客さまから教わることも少なくありません。お話の内容も多岐にわたるので、お客さまから教えていただくという意味で、あえてスクリプトを作らないという意図もあります。また、過去に販売されていた商品について聞かれた時も、「それは何のことですか」とならないように、塔筋が所属するコーポレートブランディング部がまとめた過去の資料データを参照して、日々商品知識を習得するよう努力もしています。(甲野氏)
電話応対コンクールにも参加されていますが、成果を感じていますか。
2019年から参加し始めました。2020年は創業の地である和歌山県から出場し、県代表として全国大会にも出て、優秀賞をいただきました。電話応対コンクールに出場するために、電話応対技能検定(もしもし検定)で学んだことを何度も何度も練習して、体に染み込ませたことが成果につながったと思います。それまでは、分かっていたつもりでもできていなかったことが、日々の電話応対の中で無意識にできるようになりました。(甲野氏)
全国大会は、コロナ禍によりウェブ配信があったので、社員全員で固唾を呑んで見守りました。社長も含め皆で応援して、まるで甲子園に出場したかのように一致団結して盛り上がったので、社内に私たちの取り組みを理解してもらえたと思います。そして、他の部署の社員にも、「資格を取りたい、コンクールに出場したい」と思ってもらえるようになると、個人個人もスキルアップし、それが会社全体のレベルアップにつながるのだと思います。今後は、検定やコンクールを新入社員研修に活用したり、人事部とタイアップして応対指導を行うことで、理念に沿った「おもてなし」がより深くできるようになると考えています。このような取組みを、お客様相談室に限定するのではなく、会社全体で取り組んで「さすがは桃谷順天館」と思っていただける応対品質にしていきたいと思います。(西山氏)
デジタル化、グローバル化を進めつつ、お客さまとは心と心で会話をしたい
最後に、今後の目標についてお聞かせください
デジタル化の波に乗り遅れることがないよう、チャットボット※2を活用したり、オンラインカウンセリング※3にも取り組みたいと思っています。その上で、お客さまと心と心で会話できるような、人が応対するからこそできることは何かを追求したいですね。また、コロナ禍ではありますが、グローバルのチャネルやプラットフォームも充実してきたので、海外からの問い合わせ対応も課題になっています。まだまだやることはたくさんありますね。(西山氏)
※1 トークスクリプト:電話応対する際に、お手本となる台本(シナリオ)のこと。
※2 チャットボット:自動的に会話を行うプログラム
※3 オンラインカウンセリング:インターネットを用いた遠隔カウンセリング。
会社名 | 株式会社 桃谷順天館 |
---|---|
創 業 | 1885年(明治18年)6 月 |
本社所在地 | 大阪府大阪市中央区上町1丁目4番1号 |
代表取締役社長 | 桃谷 誠一郎 |
事業内容 | 化粧品及び医薬部外品の企画・製造、販売及び輸出入・健康食品の販売及び輸出入など |
URL | https://www.e-cosmetics.co.jp/ |
〔ユーザ協会会員〕 |
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