電話応対でCS向上事例

-有限会社大串農園-
コミュニケーターも農作業に従事、「現場を知ること」で、お客さまに心からの言葉で商品の魅力を訴求

現社長が両親から小さな農園を受け継いで、約30年。お客さまに“美味しさ”を伝え続ける努力が実を結び、今では地域を代表する産地直販農家へと成長しました。

御社の事業内容について教えてください。

  • ▲取締役
    大串 生美氏

    「弊社は、高知県宿毛市や隣接する幡多郡黒潮町などで運営する約33haの農園で採れたミカン類を消費者の方に直接お届けする、直販農家です。従業員数は約20名で、『土佐文旦(とさぶんたん)』『夏小夏(なつこなつ)』など4品種と、オリジナルのジュースを季節に応じて販売しております」(大串氏)

ミカンを“キズ物”にした台風。しかしそれが、大いなる転機に

どのようないきさつやお考えから、現在の直販体制となったのでしょう。

 「大阪で働いていた現社長が、家業のミカン農家を継いだのは、30年ほど前のことです。当時の農園はわずか1.5haほどで、収穫したミカンはすべて農協に卸していました。ところが社長が戻ってきてすぐ、この地が台風に襲われ、多くのミカンが農協では引き受けてくれない“ハネモノ(キズ物)”になってしまったのです。仕方なく、そのミカンを軽トラックに積み、近隣の町の街頭で売ることにしたのですが、これが予想以上に好調で、ミカンは瞬く間に売り切れました。この経験から、翌年、農協への卸を止め、すべて直販へと切り替えることとしました。またミカンを入れる袋や箱には商品を紹介する手作りのチラシを入れ、電話での注文も受け付けることにしました。ここから事業は急速に拡大し、20年ほど前に、現在の体制となったのです」(大串氏)

そうした御社の成長と、電話応対品質には、どのような関わりがありましたか。

 「直販を始めた当初は、社長と私の二人だけで注文を受け、配送していたため、電話応対の品質などを考える余裕はありませんでした。ただ言えるのは、自らも農地に出て、ミカンの実り具合や美味しさを実体験したことが、心からお勧めできる言葉となり、お客さまに伝わったのだろうということです。そして口コミのおかげもあり、毎年のように新規のお客さまからもご注文をいただくようになりました」(大串氏)

6名のコミュニケーターも繁忙期には農園に出て、農作業に従事

現在の電話受け付け体制と、その特徴について教えていただけますか。

 「弊社にいる6名のコミュニケーターは、注文を受け付けるだけでなく、ほかの社員とともに農地に出て、農作業すべてにたずさわります。また、出荷作業も同様です。そのため、収穫と注文、出荷が重なる時期は、早朝から休む間もない忙しさになります」(大串氏)

そうした「現場主義」というお考えは、どのような理由があるのでしょうか。

 「やはり自分の実体験です。ミカンは気候や木の好不調などで、味も収穫量も大きく変わります。農園で働く私たちは、そうした動きを身体で感じながら、美味しいミカン作りに励むのです。コミュニケーターがオフィスから出ず、電話注文を受け付けるだけでは、そうしたリアル感を知ることはできません。自分自身が苦労したからこそ、お客さまに『この美味しいミカンを味わっていただきたい』という気持ちが生まれ、自分の言葉で伝えることができるのです。そのため弊社では、採用の段階から、『コミュニケーターであっても、オフィスで電話を受けることだけが業務ではない』ときちんと説明しています」(大串氏)

▲土佐文旦、でこぽん、夏小夏など、全部で33haの農園を所有

自らが考えて行動する。その目標を「電話応対コンクール」で明確化

応対技術向上などについて、具体的に気を配っていることはありますか。

 「毎朝6時35分からの全員参加の朝礼で、録音した応対ログを聞き、ディスカッションするという取り組みを続けています。しかし個別のコミュニケーターに細かい指導はせず、自分で考えることを徹底させています。命令で動くだけでは、自分の力になりません。『どうすべきか』を自分で考え、動くことが、『お客さまに味わっていただきたい』という心からのメッセージにつながるからです」(大串氏)

御社は「電話応対コンクール」にも参加されています。

 「やはり『どんな応対が、良い応対か』が分かることも必要だと考え、日本電信電話ユーザ協会に入会し、コミュニケーターに“外の世界の実力”を知ってもらうべく、コンクールへの参加も決めました。競技に向けての取り組みも主体性に任せましたが、結果よりも『ぜひ次回も参加したい』という申し出が、大きな成果だったと思います。つまり、コンクールで他社さまの応対を見て、“目指すべきお客さま応対の理想像”が明らかなイメージとして理解できたのでしょう。また、コンクールへの参加で他社のコミュニケーターとも交流が始まりました。これも将来的には、大きなプラスになってくると思います」(大串氏)

目指すものは収益ではなく雇用を通じた地域への貢献

今後の目標について、教えてください。

 「弊社は成長の過程で『利益よりも、雇用を通じた地域への貢献と人材の育成に努めたい』という理念を重視しました。来年には社屋を移転し、さらなる雇用の拡大を考えています。TPPに象徴されるように、日本の農業が今大きな転換点を迎えています。農業が“事業”として成熟し、流通などほかの大企業と力を合わせ発展していくところに、農業の未来があると考えます。そのためには、農家もあらゆる能力を高めていかなければなりません。そして電話応対スキルも、そうした能力の一つです。これからも、『自分の気持ちをお客さまに伝えること』『自分の頭で考えること』を重視し、さらなる電話応対品質の向上に取り組んでいきたいと思っています」(大串氏)

  • ▲夏の主力商品、夏小夏。収穫は4月上旬~中旬。一つひとつに袋をかぶせて、寒さと鳥被害から果皮を守ります

  • ▲大きな冷蔵庫を設置している出荷工場では、1年間で10万ケースを出荷

会社名 有限会社大串農園
設立 1996年(平成8年)8月
所在地 高知県宿毛市樺412-1
代表取締役 大串 謙二
資本金 300万円
事業内容 4種類の柑橘の栽培、果実やジュースの産直販売
URL http://www.gogo-oogushi.com/

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