電話応対でCS向上事例

-株式会社前田産業(前田産業ホテルズ)-
新入社員全員が「電話応対コンクール」に参加 顧客接点の要である電話応対を重視し応対品質の向上を目指す

記事ID:C20063

1986年に設立し、沖縄本島北部を中心に6館のホテルと商業施設を運営している前田産業ホテルズ。コロナ禍も相まって顧客接点の手段が変化しつつある中、同ホテルグループの応対品質向上の取り組みについてうかがいました。

事業概要と電話応対の体制をお聞かせください。

上席執行役員ホテル事業本部
本部長(兼)事業戦略推進室長
石井 昭夫氏

 前田産業ホテルズは、NHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』の舞台となった、自然豊かな沖縄本島北部のやんばる地域を中心にホテル事業と商業施設事業を展開しています。1989年に名護市に開業した「ホテルゆがふいんおきなわ」を皮切りに、沖縄美ら海水族館のある本部(もとぶ)町に4館、那覇空港に近い浦添市に1館のホテルを運営し、さらに「アラマハイナ コンドホテル」に併設された商業施設である「オキナワ ハナサキマルシェ」を運営しています。客室は全館で約700室を数え、従業員は全体で約300名ほどです。電話応対は、コールセンターなどを設けず、基本的に各ホテルのフロントや予約スタッフが応対するスタイルです。主に各種問い合わせが中心で、宿泊予約についてはオンラインによる受付が主流となっています。

ホテルアラクージュ オキナワ 9階ロビー

 ちなみに電話応対の内容については、ここ2年ほどはコロナ禍の影響を強く受けています。2022年は、とくにレンタカーに関する問い合わせが多かった印象があります。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年春以降、沖縄でも緊急事態態宣言やまん延防止等重点措置が何度も発令されて観光客が激減し、それにより観光業界全体が大きな打撃を受けました。レンタカー会社も事業を縮小して、保有する車の台数を大幅に減らしましたが、2022年になると徐々に行動制限が緩和されて観光客が戻ってきたので、沖縄全域でレンタカー不足となってしまったのです。また、2022年の秋ごろからは、全国旅行支援に関する問い合わせが多くなりました。旅行支援は規定がたびたび変更されたため、スタッフがその都度、内容を把握するのに苦心しました。このように、一口に問い合わせといっても時節によって変化しますので、そうしたニーズにお応えできるよう、心がけています。

固定電話を知らない世代や外国人スタッフに対して電話応対の基本から指導

電話応対の取り組みについてお聞かせください。

電話応対の様子

 毎年、十数名の新入社員を採用しているのですが、近年では固定電話になじみがない、不特定多数の方からかかってくる電話を受けたことがないという人が増えています。そこで10日間の新入社員研修プログラムのうち、半日程度を電話応対の研修に充て、配属先にかかわらず、新入社員全員が電話応対の研修を受けられるようにし、電話応対の基本から指導しています。電話は姿こそ見えませんが、「態度や姿勢が声に出る」ことがあります。それを実感してもらうために、まず目の前に鏡をおいて笑顔で話すトレーニングを行います。次に、お客さまとスタッフとのやり取りをロールプレイングして、講師として立ち会う先輩スタッフが気づいた点をアドバイスします。新入社員はネパールやインドネシア出身の外国人スタッフもいますので、敬語の使い方も必須項目です。ただし、外国人スタッフに対して、敬語についての正確さを求め過ぎると電話への苦手意識が芽生えてしまいますので、最低限お客さまに対して失礼にならない範囲で言葉づかいを覚えてもらうようにしています。研修後は、配属先で実務を中心としてOJTで学んでもらうことになります。

「電話応対コンクール」は新人全員が参加 上手な応対から得られる気づきがポイント

「電話応対コンクール」に取り組まれた経緯、成果を教えてください。

研修の様子

 電話応対コンクール(以下コンクール)には、十数年前から継続して参加しています。当初は希望者のみが参加していたのですが、ここ数年は新人研修の電話応対同様、新入社員全員に参加してもらっています。そのきっかけは、以前コンクールに参加した社員が地区大会で表彰されたことに由来します。その社員は、自分の頑張りが客観的に評価されて、より一層頑張ろうというモチベーションが得られたようです。そのような姿を見て、周囲のスタッフも刺激を受けていました。そこで、こういったチャレンジは、全員が経験すべきだという考えに至りました。ちなみに、その社員は前述の新入社員研修の講師を務めるなど、弊社の電話応対をけん引する立場になっています。
 また、これは別の社員ですが、新入社員の頃にコンクールへ参加した際、ほかの企業の参加者が応対する様子に刺激を受けたと言っていました。声のトーンの変え方やクッション言葉の使い方など、レベルの高い応対を目の前で見聞きすることで大きな気づきを得られたようで、その後も続けてコンクールに参加していました。ホテルのフロント業務には資格制度のようなものがないので、コンクールでの評価は、身近な目標となりやすいのではないでしょうか。

電話応対は顧客接点の“最後の砦” 今後ますます応対品質が求められる

最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。

対面での接客

 コロナ禍では非接触のコミュニケーションが注目され、ホテル業界でも人間を介さずにチェックインや精算をするシステムなどが登場しています。従来電話で行われた問い合わせについても、パソコンやスマートフォンのチャットボットで完結するケースも増えてきています。弊社も人手不足の問題とお客さま満足の観点から、より精度の高いチャットボットの導入を検討しています。しかしながら、今後も電話応対がなくなることはないでしょう。電話以外のツールでことが足りるようになっても、電話でのコミュニケーションを求める一定数の方がいます。そうした方が何を求めているのか、よく考える必要があります。例えば、デジタルが苦手な高齢の方や外国人の方を想定すると、一層丁寧で分かりやすい説明を工夫する必要があります。また、デジタルツールが使いにくいという不満をかかえて、電話をかけてくるケースも十分考えられます。そのような前提に立つと、電話応対は顧客接点の始まりであり、最後の砦でもあります。ですから、これまで以上に応対品質が問われてくるのではないかと考えています。

※ クッション言葉
相手に言いにくい言葉の前につける心配りの言葉のこと。何かをお願いする時やお断りする時などにクッション言葉を使うと、相手の印象を和らげることができる。(例:「恐れ入りますが」「よろしければ」「差し支えなければ」など)
会社名 株式会社前田産業(前田産業ホテルズ)
ホテル・施設名 ホテルゆがふいんおきなわ、ホテルゆがふいんBISE、ホ テルマハイナ ウェルネスリゾートオキナワ、アラマハイ ナ コンドホテル、ロイヤルビューホテル美ら海、ホテル アラクージュ オキナワ、オキナワ ハナサキマルシェ
設立 1986年(昭和61年)3月
本社所在地 沖縄県名護市港2-6-5(4F)
代表取締役社長 前田 裕子
URL https://www.maedasangyo.net/
〔ユーザ協会会員〕

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