電話応対でCS向上事例
-SOMPOダイレクト損害保険株式会社-顧客データ一元化とオペレーション標準化で品質向上CDP構築による応対改革
記事ID:C20114
自動車保険や火災保険を取り扱うSOMPOダイレクト損害保険株式会社。保険をよりわかりやすく、より簡単に、合理的で納得感のある価格で提供することを目指し、コンタクトセンターの業務変革を進める取り組みについてうかがいました。
御社の業務内容とお客さま応対部門の課題についてお聞かせください。
お客さまサービス部
担当役員 川橋 洋平氏
川橋氏:「デジタルで保険を体験することが当たり前の世界を作り、お客さまの豊かな人生の実現をサポートし続ける存在」をミッションに掲げる当社は、SOMPOグループにおいて通販型損害保険事業を展開しています。自動車保険や火災保険などの商品が主となり、「おとなの自動車保険」の契約数は約135万件の実績があります。
コンタクトセンターは東日本に1拠点、西日本に2拠点あり、主にお客さまからの契約手続きのご要望やお問い合わせ、Web操作支援などの対応をしています。お客さまからかかってくる電話への応対(インバウンド)ですが、例えばご理解を得られなかったり、保険の手続きなどで後工程が発生してしまったりした場合、アウトバウンドでの対応を行うこともあります。繁忙期は1月から3月で、ピークの3月は通常よりも約3割増しの入電数となります。問い合わせの数量にかかわらずお客さまに満足いただける応対が行えるよう、応対時間や一次応対完了率、放棄呼率※1などの一般的指標に加えて、シフト遵守率、退職率などのスタッフィング関連の指標についても品質向上のための指標として管理しています。
お客さまサービス部
お客さまサービス企画室
課長 飛澤 優也氏
飛澤氏:これまで私たちのコンタクトセンターでは、保険商品の種類やお客さまとの接点ごとにシステムが別々になっていたため、コミュニケーターがオペレーションをする際には複数のシステムを立ち上げてシステムを行き来しながら対応し、対応後は別々のシステムにそれぞれの履歴情報を残す必要もありました。また、商品の数や内容が複雑化するにつれ、一人のコミュニケーターが把握、提供できる情報の量に限界が生じ始め、対応できる範囲が狭くなっていました。そのため、折り返し対応や担当窓口の変更などでお客さまをお待たせするケースが多く発生し、お客さまにご満いただける対応ができていないのではないかと考えていました。
導入までの経緯を教えてください。
会話する管理者とコミュニケーター
川橋氏:新しいシステムを検討する上で、私たちは実現すべき三つの方針を掲げました。まず、情報の集約です。システムごとに個別に保管されている情報を集め、お客さまが必要とする広範囲な情報を一つのコンタクト窓口で迅速に伝えることを目指しました。次に、コミュニケーションチャネルの集約です。電話やチャット、メールなど有人のプラットフォームを一元化し、コミュニケーターがチャネル間を簡単に行き来することでスムーズなお客さま対応を実現するとともに、ご案内に適したチャネル選択が可能な環境を作るということです。そして、基幹システムとの連携強化です。基幹システムにある情報との同期や連携の動線を作ることで、コミュニケーターの生産性向上を目指しました。
CX・データ戦略部
CX変革グループ
課長 森藤 学氏
森藤氏:2020年度から全社を挙げての計画が始まり、2021年に開発がスタートしました。そして、2022年9月、金融サービス向けの顧客管理システムに実装した会員専用のWebサイトと、Amazon Web Services(AWS)上に整備された独自の顧客データ連携基盤「Customer Data Platform(CDP)※2」から構成されるCRMシステム※3の導入に至りました(図参照)。このシステムに決めた理由は、統合的なCRM機能に金融機関向けの機能がすでに組み込まれている点です。保険は決まった形のある商品ではありません。商品に付随して必要な資料などがあるため、通常のCRMシステムでは対応が難しいのですが、このシステムは業界に特化し、バンキングや資産管理といった機能が充実しているので、導入後も最小限の開発領域で活用することが見込め、今後の当社の事業計画にも適合していると会社から判断されました。
Amazon Web Services (AWS)上に、独自の顧客データ連携基盤「Customer Data Platform(CDP)」を整備。リアルタイム性を備えたデータ連携を実現した
ソリューション導入でどのような効果がありましたか。
森藤氏:情報が一元化されたことで、一回のコンタクトで提供できる情報が増え、お客さまをお待たせすることが目に見えて減りました。あわせて、確認に伴う社内の業務連携もスムーズになり、生産性の向上につながっています。また、導入システム以外の要素もあるとは思いますが、平均処理時間(AHT)の短縮という傾向も見られます。さらに、オペレーションの際に立ち上げるシステムの数が少なく、操作の仕方が分かりやすくなったため、コミュニケーターへの教育・研修も以前より短い期間で実施できるようになりました。
飛澤氏:導入当初は、使い慣れた環境が変わることに不安を感じるコミュニケーターの声も聞こえてきましたが、「お客さまにより利便性を体験してもらうための取り組みで、ビジネスを変えることが目的」という点を丁寧に説明し、理解を得られました。システム導入により、操作手順の標準化という点でも改善できたのではないかと感じています。また、別の取り組みになりますが、Webの問い合わせのサポートとして、ブラウザ画面を同期させてコミュニケーターがお客さまの閲覧しているWebページを遠隔操作しながら案内を行う機能を活用し、お客さまから好評を得ています。
CX向上に向けた今後の予定について教えてください。
川橋氏:今後は、お客さまが問い合わせしなくても解決できることを目標に、さらなる利便性の向上とパーソナライズしたデジタル接点の構築を検討しています。前述したコンタクトセンターにおけるCRMシステム導入についても、一人ひとりのコミュニケーターの経験や感性のみに頼るのではなく、データに基づく改善活動を実施するための体制構築の一環といえます。お客さまデータを収集・分析し、データドリブン※4をベースとした業務改善を推進した結果、お客さまの満足度向上と全社的な品質改善の面でさまざまな効果が上がってきています。こうした取り組みが実を結び、公益社団法人企業情報化協会が主催する2025年度のカスタマーサポート表彰制度で、優秀賞を受賞することができました。これからも、有人チャネルに問い合わせいただいた際の体験価値を高めるため、デジタルを活用したコミュニケーターへのサポート強化をさらに進めたいと考えています。
- ※1 放棄呼率
- オペレーターにつながる前に顧客によって切断された電話の割合。
- ※2 Customer Data Platform(CDP)
- 顧客の属性や行動履歴などのデータを収集し、管理・活用する基盤。
- ※3 CRMシステム
- 顧客情報の管理と顧客対応の向上を図るため、コールセンターや顧客サービス業務で使用されるシステム。※4 データドリブン(Data Driven):売上データやマーケティングデータ、Web解析データなど、データに基づいて判断・実行すること。
| 会社名 | SOMPOダイレクト損害保険株式会社 |
|---|---|
| 設立 | 1982年(昭和57年)9月 |
| 本社 | 東京都新宿区西新宿1-26-1 |
| 代表取締役社長 | 中川 勝史 |
| 事業内容 | 通販型損害保険事業 |
| 従業員数 | 1,058名(2025年3月31日現在) |
| URL | https://www.sompo-direct.co.jp/ |
| 〔ユーザ協会会員〕 |
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