電話応対でCS向上事例

-株式会社オリエントコーポレーション-
業務の効率化と生産性向上を目的にしたコールセンター向けAIソリューションの導入

記事ID:C20112

大手信販会社の株式会社オリエントコーポレーション。債権に関する対応業務を担当する東京第一サービスセンターの皆さんに、応対品質改善の取り組みについてうかがいました。

御社の業務内容とお客さま応対部門の課題についてお聞かせください。

東京第一サービスセンター
教育チーム 課長
小谷 奈央子氏

小谷氏:当社は、信販会社として個人向け金融サービスを中心に、オートローンやショッピングクレジットなどの分割払いに対応する個品割賦事業、クレジットカードなどを活用したカード・融資事業のほか、銀行保証事業、決済・保証事業、海外事業の五つの事業を展開しています。サービスセンターは東西2拠点体制で、東日本エリアの東京第一サービスセンターは埼玉県ふじみ野市、西日本エリアは福岡にそれぞれ所在しています。私たちの在籍する東京第一サービスセンターでは、月間50万件程度のコンタクトを約150名のスタッフが応対し、主に初期の遅延債権に関するアウトバウンド業務を行っています。具体的には、お客さまへの支払案内や意思確認、支払方法の提案などについて、単なる案内ではなく対話を通じた解決の支援を重視して行うほか、お客さまからの折り返し連絡に対応するインバウンド業務も実施しています。コールの内容としては支払い関連が8割を占め、まれにクレーム関連の応対もあります。また、お客さまの収入のタイミングによって応対件数の増減があるため、月内で稼働の変動が大きい傾向があります。応対の品質向上については、お客さまアンケートの結果を活用し、また、平均処理時間や放棄呼率などの指標を用いて取り組んでいます。

東京第一サービスセンター
教育チーム 課長補佐
鈴木 日路子氏

鈴木氏:当センターでは、かつてオペレーターと管理者の双方が慢性的な課題を抱えていました。オペレーターの課題としては、まず応対時の画面操作の煩雑さが挙げられます。すでに専用システムを活用していたのですが、架電する際に顧客情報のほか複数のExcel資料を同時に開いて回答に備える必要があり、操作が非常に面倒でした。また、対応中にお客さまからカスタマーハラスメントにあたる発言を受けた場合、自ら手を挙げてスーパーバイザー(SV)に支援を求める必要があり、これが心理的な負担となっていました。さらに、管理者にカスハラに関する事後報告を行うために要件や要望をまとめる作業が発生し、これも手間のかかる作業でした。一方、管理者側としては、オペレーターが今どのような状況に直面しているかをリアルタイムで知る必要がありますが、本人からの相談がない限りすべてを把握することは困難なため、的確な支援やフォローが難しい状況でした。また、オペレーターの応対品質を評価するため、通話録音を活用したモニタリングを月間200件程度実施していましたが、フィードバックを行うため音声内容を手作業で文字起こしする必要があり、この作業が管理者の稼働時間のかなりの割合を占めるようになっていました。

導入までの経緯とAIソリューションの特長を教えてください。

【図1:コールセンター向けAIソリューションの構成イメージ】お客さまと会話の際に、顧客情報ほかさまざまな情報がナレッジとして画面に表示される。また、スーパーバイザーや管理 者は、オペレーターとお客さまがどのような会話をしているのかをリアルタイムで確認することができる API(Application Programming Interface):アプリケーションをつなぐ機能。異なるソフトウェアやプログラムを連携する。

小谷氏:業務の効率化と生産性向上の観点から新しいシステム導入の検討を始め、約2年をかけて導入に至りました。今回のコールセンター向けAIソリューション(図1参照)導入の鍵となったのは便利な機能が複数ある点です。代表的な機能の一つ目は、音声テキスト化です。これまではお客さまとの応対模様をオペレーター自身が入力していましたが、この機能により音声が自動でテキスト化されるので後処理しやすく、また、管理者もテキストを確認すればオペレーターがお客さまとどのようなやり取りをしているか分かるのが特異な点と言えます。二つ目は応対に必要なナレッジ(業務に有益な知識やノウハウ・スキル)が表示できる点です(図2参照)。応対時の会話で使われる言葉(キーワード)に対し、次のアクションや確認事項をナレッジとして事前に登録しておくことで、お客さまとの会話の流れに応じて画面に表示させることができ、これによりオペレーターはスムーズに対応できるようになります。ナレッジについては、Teamsの共有チャットを使い、すべてのスタッフから意見や要望を募るなど、内容を充実させる取り組みを現在も進めています。そして、三つ目はカスハラ対策のための機能の活用です。

【図2:画面イメージ ナレッジ表示】お客さまとの会話がテキストとして画面に表示される。また、特定のキーワードに対するアクションや確認事項が事前に登録されているため、必要な情報がナレッジ として表示される

AIソリューション導入でどのような効果がありましたか。

小谷氏:導入が2025年3月ですので、現時点(2025年9月)では十分な効果測定には至っていませんが、生産性向上と業務効率化の面では良い変化があったと実感しています。「音声テキスト化」は、管理者にとって大変役立つ機能です。オペレーターの応対品質を評価する際、通話音声とともに画面内に吹き出しとして表示されるテキストでも確認できるようになったため、聞き直しが少なくなり、結果として業務効率化につながりました。

東京第一サービスセンター
教育チーム 課長補佐
上野 真弓氏

上野氏:「ナレッジ表示」の機能は、オペレーターの生産性向上に貢献しています。これは先にも触れたように、音声情報を自動的に分析して該当のナレッジが表示される機能で、例えばお客さまとの会話で「金利」という言葉が出た際にナレッジとして金利表が表示されるといったものです。音声情報が自動的に分析され該当のナレッジが表示されるので、検索する手間もなく、生産性が劇的に変わりました。また、応対中にお客さまへ伝えないといけない情報も自動表示されるので、案内漏れ防止にもつながっています。また、「カスハラ対策」の機能については、教育チームを中心に運用体制を整備し、暴言と受け取れる単語やオペレーターが支援を求めたくなるキーワードを登録しました。これにより、該当する会話が検出された際、管理者へアラートが通知される仕組みを構築し、早期対応が取れるようになりました。

CX向上に向けた今後の予定について教えてください。

小谷氏:顧客体験(CX)向上に向けていくつかの重点施策を掲げて取り組んでいます。まず、データ分析を活用することで、最適なタイミングや方法でお客さまとの良好なコミュニケーションの実現を目指しています。また、COPC認証※1で培った考え方やスキームを活かした業務プロセスの見直しや、自動化領域の拡大による業務効率化・生産性向上にも取り組んでいます。さらに、SMS※2やIVR※3、チャットなど多様化する顧客接点に対応するため、社員のデジタル対応力の強化を進めています。これらの取り組みを通じて、改善行動が自然に生まれる風土の定着を目指します。

※1 COPC認証
米国のCOPC社(Customer Operations Performance Center,Inc.)が定めるコールセンターやBPO業務のパフォーマンス改善モデル。日本を含め世界40ヵ国で活用される業界規格。
※2 SMS
Short Message Service(ショート・メッセージ・サービス)の略。電話番号宛てに送受信できるメッセージサービスのこと。
※3 IVR
Interactive Voice Responseの略。顧客からの入電の際、あらかじめ用意された音声による案内や顧客の入電理由に応じた番号入力で、コミュニケーターへ対応の振り分けを行うシステム。
会社名 株式会社オリエントコーポレーション
創業 1954年(昭和29年)
本社所在地 東京都千代田区麹町5丁目2番地1
代表取締役社長 梅宮 真
事業内容 個品割賦事業、カード・融資事業、銀行保証事業、決済・保証事業、海外事業
従業員数 連結 9,032人 臨時従業員を含む(2025年3月31日現在)
URL https://www.orico.co.jp/
〔ユーザ協会会員〕  

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