電話応対でCS向上事例
-指導者級資格保持者のための品質向上研究会レポート-会議や研修の質を向上させるためにビジネスに欠かせないツールや注目のICTキーワードを理解しよう
記事ID:C20100

2025年1月10日(金)、電話応対技能検定の指導者級資格保持者(第1期生~第34期生)を対象とした「品質向上研究会」が開催されました。今回は、情報処理安全確保支援士でMicrosoft認定トレーナーの資格を持つ阿部 晋也氏による講演「『いま学びたい!』―コミュニケーションツールのあり方と知識のポイント―」についてレポートします。
業務に欠かせないコミュニケーションツール

講師
情報処理安全確保支援士
阿部 晋也氏
2025年初めての研究会は、今回もオンライン(Zoom Meeting)での開催となり、多くの受講者が参加しました。専門委員会稲葉委員長の講話ののち、情報処理安全確保支援士である阿部 晋也氏が講演・ワークショップを行いました。
阿部氏は、Microsoft系ツールの使い方を教えるインストラクター、SEプログラマーなどの経験を活かし、講師業を中心に活動しています。講演では、職場におけるコミュニケーション手段が様変わりする中、コミュニケーションツールのあり方やビジネスチャットツールに関するポイント、情報セキュリティ対策や生成AIといった項目ごとに、知っておくと日常業務で役に立つポイントを解説しました。
冒頭では、コミュニケーションツールに関する話題として、「研修業界においてここ数年間で何が起きたのか」について触れました。「以前は対面形式の研修が主流でしたが、コロナ禍によりオンライン以外の選択肢がないような状況になっていた」と言い、「Zoomなどでの環境を受け入れて実施するか否かに悩まれていた方が多かった」と語ります。現在では、阿部氏が依頼される研修のうち7割以上がオンラインだと言います。
そうした中、企業ではミーティングツールを業務に積極的に活用しています。種類としてはTeams、Zoom、Slackなどのチャットツールや、Google Workspace、Notionなどのコラボレーションツールがあります。また、DropboxやOneDriveといったファイル共有サービスの出現で、数名で一つのファイルを共有して使うスタイルが広まりました。そうしたツールの登場で、現在では対面とオンラインそれぞれの良いところを利用したハイブリッドな働き方が浸透してきています(図1参照)。

図1:コミュニケーションツールのあり方〜変化するコミュニケーションツール
その後、ブレイクアウトルームに分かれた受講者は、オンライン形式のメリットとデメリットについて話し合いました。発表の中でメリットとして多く挙げられたのは、距離に関係なくコミュニケーションが取れてコストがかからず、スケジュール的な問題が解消されたといった点でした。デメリットとしては、音声表現が中心なので表情がつかみにくく、真意が伝わりにくいこと、操作スキルに講義の質が左右される点や通信環境によるトラブルが発生することが挙げられました。阿部氏は、オンラインのやり方に関しては、まだまだ工夫が必要な点が多いとし、環境については受講側の環境に依存する部分も多いため、中には端末を貸し出して講義する研修会社もあるといった事例を示しました。
メールとチャットツールとの違いを理解し使い分けを

図2:ビジネスチャットツールで知っておくべきポイント
さらに、ビジネスチャットツールで知っておくべきポイントとして、メールとチャットの違いについて解説しました(図2参照)。いつ返信が来るか分からないメールに対し、チャットはリアルタイムでスピード感のあるやり取りのできる点が特徴ですが、丁寧さに関してはメールが勝ります。以前、阿部氏がコンサルタントとして関わった組織では、文章を考えて書くメールではなく、気軽に会話文で伝えられるチャットを使うよう指示があったと言います。チャットの便利な機能にも触れ、例えば「メンション」は特定の相手やメンバーに@を付けることで迅速な対応を促すことができる機能として説明。「個別に注意喚起ができ、直接意見を伝えたり、タスクを依頼する際に使用できます。また、特定の話題やプロジェクトごとに分けたコミュニケーションの場が必要な場合は、チャット機能が便利。公開か非公開かを選んで設定することができるので、特定のメンバー間でやり取りできるチャネルを用意することができる点がポイントです」と語りました。
続いて、仕事上どのようなオンラインツールを活用しているかというテーマとなりました。Teams、WebexやChatwork、Slackなど多様なツールを選択できる状況で問題となるのは、参加するグループごとに使用するツールも異なることがあり、また、お客さまからの希望であればそのツールの使い方を学習する必要があるといった点がデメリットとして挙がりました。多くのツールがある中、何をポイントにツールを選べば良いのかという悩みに対して、阿部氏から、いわゆるグループが作りやすいかどうかが一つの判断基準になるのではという示唆がありました。
巧妙化するサイバー攻撃への対策として

図3:情報セキュリティ対策、実践できていますか?
続いて、情報セキュリティ対策の話題に移ります(図3参照)。昨今、セキュリティ上の脅威として被害が増えているものに「ランサムウェア」があります。コンピューターウイルスの一つで、金銭を騙し取ることを目的とした不正プログラムですが、どのように感染し被害が広がっていくのかについて阿部氏が解説しました。「無差別に攻撃を仕掛ける以前のサイバー攻撃と違い、最近ではセキュリティ上の脆弱性を見つけて特定の企業や組織を標的にし、身の代金を支払わざるを得ない状況を作るという標的型攻撃を仕掛けてくる」と言います。「対策としては、ウイルス対策をしっかり行い、重要なデータはバックアップを取るといった基本的なことが有効で、怪しげな添付ファイルが来たら開かないといった意識を持つことも大切」と語ります。
可能性が広がる生成AI活用

図4:生成AIと従来のAIとの関係性
午後からは、「生成AI」に関する講義を行いました。阿部氏はAIについて、「人間の知能そのものをコンピューターで再現する仕組み」と定義し、生成AIと従来のAIとの関係性について解説しました(図4参照)。また、生成AIの代表的なサービスであるChatGPTについて、文章作成や画像認識、ディスカッションの相手役といった活用シーンを紹介しました。さらに、入力データがOpenAI社のモデル学習に利用されることを示し、個人情報を入力しない、虚偽情報が含まれる可能性を理解し裏付けを取るなど、注意点にも触れました(図5参照)。

図5:生成AIのためのガイドライン(抜粋)
ブレイクアウトルームでは、生成AIの活用状況が話し合われ、大量のデータの整理や議事録作成、FAQの作り変えやメール文章の作成といった業務上の利用とともに、レシピの提案など幅広い活用例が挙がりました。阿部氏からは、「著作権やプライバシー、セキュリティなどへ配慮しながら、無料で使える範囲も多いのでこれを機会に生成AIに触れてみてはいかがでしょうか」という提言がありました。講義後、受講者からは「会社から生成AI活用を推進されていたが、二の足を踏んでいた。分かりやすく説明してもらい取り組む気になれた」といった声が多数聞かれました。
利便性を増すコミュニケーションツールやビジネス上知っておくべき知識など、押さえておきたい情報が日々増加している中、今回の講演では一つひとつを丁寧に捉え直す貴重な機会となり、受講者の皆さんの間でも活発な討論が行われる意義深い講演となりました。
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