電話応対でCS向上事例

‐指導者級資格保持者のための品質向上研究会レポート‐
コロナ禍の中、オンラインで開催!電話応対教育のカギを握る感情マネジメントとは

2022年1月7日(金)と1月8日(土)の2回、電話応対技能検定(もしもし検定)の指導者級資格保持者(第1期生~第28期生)120名を対象とした「品質向上研究会」が開催されました。今回は、「感情マネジメントがあなたの電話応対教育を変える」と題した産業能率大学経営学部教授・横井 真人氏の講演が行われました。

  • 講師 産業能率大学 経営学部
    教授 横井 真人氏

  • 専門委員会 委員長
    中京大学法務総合教育研究機構
    教授 稲葉 一人氏

コロナ禍の中、オンライン開催は4回目
感情マネジメントをテーマに講演を開催

 2022年初の品質向上研究会は、今回で4回目となるオンライン(Zoom Meetings)での開催となりました。開会の辞に続き、専門委員会の稲葉 一人委員長よりご挨拶があり、これまでの品質向上研究会についての振り返りが行われました。

 さらに、今回、感情マネジメントをテーマとした講演を企画した背景について稲葉氏は、「電話応対従事者や指導者は、企業の顔としてお客さまに対して笑顔を絶やさず、常に感情を乱さずに応対することが求められています。その上、電話応対では、相手の話を聴くだけでなく、相手の感情を聴くことまでも求められており、『感情労働』の観点からとらえると、その尺度の大変高い仕事と言えます」という理由が語られました。次に、電話応対の品質向上をテーマとしたグループワークによる勉強会が行われました。

 続いて、産業能率大学経営学部教授の横井 真人氏による講演「感情能力セミナー 感情マネジメントがあなたの電話応対教育を変える『話を聞くことは気持ちを聞くこと』」がスタートしました。途中、Zoomの「ブレイクアウトルーム(参加者を少人数のグループに分けてミーティングを行う機能)」を活用したグループディスカッションを交えながら、2時間にわたって講演が行われました。

コールセンター、コンタクトセンターは代表的な感情労働の一つ

 はじめに、横井氏は感情について、時には行動を妨げ、時にはモチベーションアップにつながるものだと説きます。「恐れや不信、嫌悪・怒り、不安は『感情の壁』となって人間の前に立ちはだかります。一方で、『不安だから準備をする』『怒りを感じたから見返すために努力する』といったように、『行動の源泉』にもなり得るのです」と述べます。感情は人間の本能に基づいているため、他者との対話ややり取りを上手に行うカギは本能を理解することにあると話しました。
 続いて、頭脳労働、肉体労働に続く労働と言われる「感情労働」について解説しました。感情労働は、狭義では「顧客の感情に配慮、演出する」を意味し、感情労働に属する職種としては、看護師や飲食業・宿泊業のスタッフ、そしてコールセンター、コンタクトセンターなどのカスタマーサポート部門などが挙げられます(図1参照)。
 感情労働を通じて生まれた負の感情が、職場環境をギスギスさせてしまうこともあり、メンタル疾患や離職といった事態を招く恐れもあるとします。それを防ぐには、職場での社員間の相互フォローが重要と話しました。

感情がビジネスに及ぼす影響は世界的な研究対象となっている

 ビジネスにおける感情の在り方を語る際に重要なキーワードとして、「感情能力(EI)」という言葉があります。感情能力は、感情を読み取る「読み取り力」、感情発生の理由を考える「理解力」、適切な行動を選ぶ「選択力」、気持ちの伴った行動をする「切り替え力」の四つの能力で構成されます(図2参照)。

 今や、感情がビジネスにどのような影響を及ぼすのかというテーマは世界的な研究対象となっています。例えば「個人の感情能力と状況対応の関係」というテーマでは、強い感情を抱いた際に気持ちを落ち着かせる「コーピング」ができる人ほど業務の上で高い成果を上げることができるといったように、コーピングと成果との相関が発見されました。とはいえ、激しい怒りや悲しみを感じた時、感情を落ち着かせることは難しいでしょう。横井氏は「感情をコントロールすることが不得手な社員について、コーピングを身につける訓練をするなどの取り組みが有効」と述べました(図3参照)。

 「管理職と感情能力の関係」のテーマについては、例えば、総合職と契約社員、派遣社員が同じような仕事をしている多様性のある職場において、チームをマネージするリーダーには高い感情能力が求められており、また、感情能力の高い上司の下ではコンフリクト(衝突)の発生率が低いことが分かったと言います(図4参照)。

「感情マネジメント」と「感情能力」の必要性

 続いて、横井氏はビジネスにおいて関係者と適切に関わるための「行動」として、「知識やスキル」「行動意識」に加えて、日常生活や業務の中で感情を賢く管理し、人間関係とコミュニケーションをより円滑に進める取り組みである「感情マネジメント」の必要性を説きました。横井氏は「重要なのはコントロールではなく、マネージすることです。コントロールは押さえつけることであり、ストレスにつながります。マネージすることが上手にできれば、コミュニケーションはスムーズになるでしょう」と述べました(図5参照)。

 さらに、横井氏は「コミュニケーションには、『論理面』と『感情面』の二つの側面がある」と解説します。自分の主張を伝えたり、相手の主張を受け止め理解したりするのは「論理面」です。その上で、自分の気持ちを伝える、相手の気持ちを受け止めるといった「感情面」のやり取りができていないと、真の意味でのコミュニケーションは難しいのではないかと話しました。
 そして、「論理面」と「感情面」のバランスをとることの重要性について、頭で分かる「論理面」と、気持ちが動いてやる気が出る「感情面」の両方が含まれていることがコミュニケーションには欠かせないものだと語ります。「相手に納得してもらうには、目的に対する論点の整理と解決策に向けた論理性だけでなく、共感してもらう必要があります。コミュニケーションにおいては、この感情を前向きに働きかけることが何より重要になってくるのではないでしょうか」と締めくくりました。
 講演を通じて横井氏は、画面から参加者を指名して、随時質問を投げかけていました。参加者は軽妙な口調に引き込まれつつ、横井氏と双方向のコミュニケーションをとりながら、能動的に参加されていました。演習やグループディスカッションも開催されたことで、オンライン環境でありながら、志を同じくする仲間ならではの共感と笑顔があふれた講演となりました。

※ コーピング(coping):ストレスを評価し、対処しようとすること。

図1~図5の出典:「感情能力セミナー」テキスト資料より
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