電話応対でCS向上事例

-株式会社バンダイ-
膨大なお客さまの声を分析、関連部門と連携し、より良いものづくりのための改善を推進

記事ID:C20106

グループの中核企業としてキャラクターなどの知的財産を活かした玩具などを販売する株式会社バンダイ。VOC※1を分析・連携し改善につなげるための取り組みについてうかがいました

御社の業務内容とお客さま応対部門の課題についてお聞かせください。

プロダクトマネジメント部 相談センターチーム マネージャー 中田 京子氏(左) シニアアドバイザー 岩村 剛氏(右) 鈴木 里々歌氏(中央)

鈴木氏:当社は、子ども向け玩具のほか、菓子やガシャポン、カードゲームやアパレル・日用雑貨などの企画・開発、製造、販売を行っています。自主回収などの発生時、臨時に開設する窓口を含めると、全国7ヵ所に展開するお客様相談センターに約110名のオペレーターが所属し、コールセンター東と西、新宿センターで製品の不具合やおもちゃの遊び方に関する問い合わせに応対しています。年間約13万~14万件、月に1万~1万5,000件の問い合わせがあり、現在、電話とメールの受付比率としては電話が25%、メールが75%となっています。ちなみに、玩具の需要が増えるクリスマスシーズンには問い合わせが2万件以上になりますので、クリスマス前後になると土曜・日曜も窓口を開け、臨時対応を行っています。

同社ホームページのトップ画面

中田氏:お申し出(お問い合わせ)に関する対応やVOC活動は、プロダクトマネジメント部のみで完結するものではありません。社内の関連部門へ迅速に情報連携し、適切な対応や改善を講じる必要がありますので、これまでもデータを分析し業務に役立てるソフトウェアであるBIツール※2を活用していました。情報連携の流れとして、まずお客さまからの通話はIVR(自動音声応答)につながり、そこで優先度を区別し、内容に応じて複数あるお客様センターのうち適切な応対先へ接続します。優先度は安全面などを考慮し設定したもので、食品などはスピーディな応対が行えるようにしています。緊急性の高いもの以外に、初期不具合や取り扱いが原因で不具合となった製品の「交換」や、おもちゃの遊び方や発売日などの「お問い合わせ」があり、それぞれ半々の割合になります。オペレーターはお申し出を受けて、不具合内容の詳細をCRM※3に入力します。CRMはBIツールと連携しており、翌日には全社にフィードバックされています。従来から使用しているBIツールも品質改善を行う生産部門などの担当者が状況を理解するには有用なものでした。しかし、取り扱いアイテムが年間2万点と多い中、必要な情報に辿り着くまでの効率の悪さがありました。担当者は不具合内容を把握するため、まずは対象製品を探し出し、レポートを一件ずつ読み解き、グラフ化などの作業を行うのですが、これは非常に時間がかかる業務でした。また、製品サイクルが1ヵ月から3ヵ月程度と短いことも情報把握の妨げになっていました。このように、従来のBIツールだけでは本来連携したい情報を関連部門へフィードバックすることが困難になっていたのです。

ツール導入までの経緯をお聞かせください。

【図:テキストマイニングツールの活用イメージ】
顧客の声などを収集、記録し、分析することができ

岩村氏:私たち相談センターチームを中心に、他部門への適切な情報連携の手段について検討を始めました。私たちがまず知りたいのは、お申し出の傾向でした。そのために必要なのは、膨大なデータから共通した事象をピックアップし、該当製品に何が起きているのか一目で把握できる仕組みで、かつ関連部門へフィードバックする機能を備えたツールになります。そうした点から検討を重ね、2022年頃からテキストマイニングツール(図参照)の導入を検討し始めました。実は、10年以上前にも同様のツールを使える環境があったのですが、数年前にシステム改修のタイミングで停止していたのです。今回はVOCという明確な目的がありますので、相談センターチームが中心となり導入が一気に進みました。

鈴木氏:今回のテキストマイニングツール導入はBIツールとの連携とお申し出状況の可視化を目指したもので、2023年3月に稼働を開始しました。さまざまな機能がありますが、例えば可視化の機能としては、ある製品を検索すると、お申し出内容の中で頻出しているキーワードが表示されます。文字の大小で言葉の頻出度をビジュアル化しているため、即座に概況を理解できます。また、カスタマイズについては、お申し出内容をカテゴリー別にまとめたタブを、事業部ごとに作成できます。製造部門は、トイ事業部、ベンダー事業部、キャンディ事業部などの事業部に分かれているのですが、担当者は自身の事業部のタブを押すだけで、「苦情」や「交換」が1週間にどれだけあるのかをランキングで閲覧できるようになりました。

導入後の効果はいかがでしょうか。

岩村氏:明確な変化としては、相談センターチームが運営している社内用ポータルサイトのアクセス数が導入後に急増したことです。ポータルサイトではBIツールとテキストマイニングツールそれぞれの閲覧窓口を設けているのですが、BIツールのみだった頃のアクセス数が月100件程度であったのに対し、導入後は2~3倍近くになりました。相談センターチームのミッションの一つに、テキストマイニングツールの有用性をできるだけ多くの社員に知ってもらうということがありましたので、社内展示会を開き、「このツールを使えば簡単に分析ができますよ」といったプロモーションを行いました。そうした活動もアクセス増に貢献しているのかもしれません。
 このように、さまざまな部門の担当者がお客さまの声を即座にキャッチアップできる環境を創出できたことが、最大の効果と考えています。また、お申し出を分析することで、お客さまの自己解決への補助ができるようになりました。玩具も複雑化し電池の消耗が早いものがあります。電池が少なくなると誤動作により音が繰り返し鳴るといった現象が起きることがありますが、それを故障と捉えるお客さまが多いことが分析の結果から見えてきました。そこでサイトのQ&Aページに動画付きの説明を掲載したところ、メールや電話の件数が減少し、結果としてオペレーターの負荷を低減することができました。

鈴木氏:テキストマイニングツールの標準機能を使った取り組みとして、SNS上の話題をグラフとして示す試みも行っています。当社製品はテレビ番組と連動したものも多いため、放映期間はⅩ(エックス)のトレンド欄に表示され、注目を集めることがあります。当然問い合わせも増えるため、そうした傾向を事業部門や生産部門で共有できるようにしています。

今後の展開について教えてください。

岩村氏:テキストマイニングツールをさらに活用し、レポートの定期発信や関連部門からオーダーを受けて、苦情やご意見・ご要望を解説・分析したデータの提供により、社内の情報連携を強化したいと考えています。より良いものづくりと顧客満足度向上のため、VOC活動をますます活性化させていきます。

※1 VOC
Voice of Customerの略。「顧客の声」を意味し、顧客の意見を分析することで、製品、サービスの改善や、マーケティング戦略の立案など幅広い分野で活用すること。
※2 B Iツール
企業や団体が持つ大量のデータを集めて分析し、明確化することで経営や意思決定に役立てることができるソフトウェアツール。
※3 CRM
Customer Relationship Managementの略。コールセンターや顧客サービス業務で使用される、顧客情報の管理と顧客対応の向上を図るためのシステム。
会社名 株式会社バンダイ
設立 1950年(昭和25年)7月
本社所在地 東京都台東区駒形1-4-8
代表者 竹中 一博
事業内容 玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品、アパレル、生活用品などの企画・開発・製造・販売
従業員数 903名(2025年3月1日時点) 
URL https://www.bandai.co.jp/
〔ユーザ協会会員〕

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