電話応対でCS向上事例
-日本郵政コーポレートサービス株式会社-応対品質に関する課題に取り組み、お客さまファーストな応対を実現
記事ID:C20107

労働者派遣事業や請負事業を行う日本郵政コーポレートサービス株式会社は、日本郵政グループにおける間接業務を一手に担っています。グループ内の一次受付窓口として応対品質の向上に取り組むお二人に話をうかがいました。
事業概要についてお聞かせください。

九州BPOセンター
オペレーション2部
担当部長 森本 さなゑ氏
森本氏:日本郵政コーポレートサービス株式会社は、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の4社から成る日本郵政グループ約40万人分の給与計算、年末調整、住民税や社会保険の手続き、マイナンバー関連などのBPO (ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業務を行っています。また、グループ企業への人材派遣で培った総合力で、グループ外の企業にも人材ソリューションを提供しています。契約社員を含む約1,000名の体制で運営する九州BPOセンターでは、大量な事務処理に対応する仕組みとナレッジを備え、BPO 業務を請け負っています。コールセンターは九州 BPO センター内でも受託業務ごとに分かれており、主にグループ企業の各担当部署からの問い合わせに対応しています。
もともとコールセンターは2007年の郵政民営化後、給与管理システム操作に関する給与部門担当者のヘルプデスクとして開設されたもので、BPO 業務の拡大によって人事・経理関連のさまざまな業務の一次受付窓口としての役割を担うようになりました。電話でのお問い合わせ数については1日平均500~700件ですが、業務が重なる4月ごろは1日3,000件もの問い合わせに対応しています。

九州BPOセンター
オペレーション2部
係長 田尻 朋絵氏
田尻氏:コールセンターにおける業務ですが、給与計算業務を例に挙げますと、まずグループ企業の給与担当者が管理システムに入力する際に、入力方法や処理の仕方について不明な点があると、ヘルプデスクへ問い合わせてきます。私たちはその問い合わせに回答し、その場での回答が難しい場合、他部署と連携して二次回答を行います。また、マイナンバー関連の業務についてはグループ外から業務を請け負うこともあり、一般企業の方からの問い合わせにも対応しています
回答に対する満足度に疑問の声も
電話応対に関する課題とその対策について教えていただけますか。

コールセンターは、受託業務ごとに分かれており、各オペレーターは1日約30 ~40件の問い合わせに対応する
田尻氏:コールセンターはグループ内の一次受付窓口であるため、これまで正確さとともに迅速さを優先した応対を行ってきました。しかし、法改正や業務拡大に伴う運用ルールの変更といった複雑な状況の中、お客さまからは柔軟な応対が求められるようになり、正確性に加えて応対品質の向上が今後の応対業務には不可欠と感じることが多くなっていました。例えば、問い合わせてくる方の中には多忙のため短時間で解決したいという方もいらっしゃいますので、前後の説明を省いて回答のみを伝えることもありました。お客さまも必要最低限の回答は得られ、コールセンター側の生産性も上がるのですが、「満足度の面でどうか」といった疑問や、「きつい言葉と受け止められてしまうのでは」という意見が挙がるようになりました。そこでオペレーター自身が音声確認を行い、監督者のモニタリングによる対応チェックも実施し、気づかいの言葉を添えるといった丁寧な応対を推奨するようにしました。こうした取り組みにより、最近ではお客さまに寄り添った応対への意識がコールセンター全体に浸透してきていると感じています。
電話応対コンクールの経験が社内教育の枠組みを広げる
電話応対コンクール(以下、コンクール)に取り組んだきっかけと経緯を教えてください。
田尻氏:普段応対する相手はグループ内の方ですので、グループ外の企業や個人のお客さまとの電話応対がどのようなものなのか知る機会がありませんでした。そうしたことから応対品質に課題があるのではと感じていた中、以前から紹介されていたコンクールへ参加することを思い立ち、2021年の初参加以来、毎年4~5名が参加するようになりました。コンクールへの取り組みを通して、さまざまな効果が出てきていると実感しています。一例を挙げると、コンクール前に開催される研修や、参加者が自身の応対音源を聞いて点数化する作業を通して気づきを得ることができ、言葉づかいや言い回し、話の組み立て方の面で改善することができました。また、そうした取り組みを経験することで、社内教育の枠組みを広げることにもつながりました。社内研修はチームごとに行うことが多いのですが、同じチームに勤続年数の長いスタッフと入社1~2年目のスタッフが混在しています。処理スピードや使う言葉・フレーズの異なる社歴の長い人と短い人とをあえてペアにして、「スムーズに意図を汲み取ることができる質問」や「お客さまに操作してもらうための分かりやすい伝え方」について話し合い、練習を繰り返すことで、話をしっかり受け止めて提案するというお客さまファーストな応対ができるようになってきたと感じています。それらの活動の結果、お客さまから直接お褒めの言葉をいただくことがあり、オペレーターの励みにもなっています。
また、参加者の中には人前で話すのが苦手のように見受けられる人もいましたが、練習を重ねた結果、地区大会でスムーズな応対を行うことができ、本人も「しゃべれた!」と驚いていました。その後、通常業務でも緊張することなく応対できるようになり、コンクールに取り組むことで本人の自信につながったと感じています。さらに、そうした参加者を応援する雰囲気がコールセンター内に醸成されてきている点も、参加による波及効果として挙げられます。
人と温かみを大切にした応対
最後に、今後の目標について教えてください。

明るく広々とした休憩室
田尻氏:今、グループ全体でDXへの取り組みが進み、コールセンターにおいてもこれまで紙で運用していた業務がデジタルに置き換わるなど、ここ数年で大きな変化が生じています。これまで電話とメールが主だった問い合わせ窓口の一部に、IVRでの自動音声応対やチャットボット、生成AIを利用したサービスの導入を進めていることもその一つと言えます。そうした中、お客さまが一人として取り残されることなくサービスをご利用いただけるよう、システムの改修やマニュアルの整備を進めてきました。これからも、「人がサービスを支えます」「人に優しく、人を活かして」といった経営理念の言葉通り、信用・親切・進取の三つの「しん」により行動し、お客さまを支えることのできるコールセンターでありたいと考えています。
森本氏:AI の登場やテキストマイニング活用などにより応対部門においてもデジタル化が進むとともに、コスト削減と効率化への動きが本格化してきています。DXを推進しながら、「人と人との対応による温かみ」を大切にしたコールセンターを目指してまいります。また、BCP の観点から、さまざまな状況を見据えてフレキシブルなコールセンター運営が実現できるよう、今後も取り組んでいきます。

会社名 | 日本郵政コーポレートサービス株式会社 |
---|---|
設立 | 2007年(平成19年)7月 |
本社所在地 | 東京都港区赤坂8-4-14 青山タワープレイス5F |
代表取締役社長 | 赤尾 法彦 |
事業内容 | 労働者派遣事業、有料職業紹介事業、請負事業 |
従業員数 | [社員]2,117名、[派遣社員]1,353名(2025年3月31日現在) |
URL | https://www.jp-cs.jp/ |
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