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電話応対でCS向上コラム

第78回「話し癖を直す」

書き癖、弾き癖、走り癖、寝癖、読み癖、話し癖など、人間の動作には、人それぞれに癖があります。その癖はいつの間にか身についたもので、本人は案外気がついていないものです。中でも悪癖は人に注意されて初めて知ることが多いのですが、その癖を直すのは容易ではありません。今回は、厄介な話し癖の一つ、“語尾伸び”について考えます。

語尾が伸びる

 損保会社に新卒で入社した女性から相談を受けました。入社早々に先輩から叱られたそうです。「あなたの語尾伸び何とかならないの。そんな話し方ではお客さまに失礼よ!」自分の語尾が伸びるなんて、これまで一度も意識したことがなかった彼女はショックだったようです。アドバイスを求めても、先輩は、「自分で録音して聴いてごらん!」と冷たく言っただけで、具体的な矯正方法は教えてはくれませんでした。確かに語尾は伸びてはいるけれど、これが問題になるとは彼女には思えませんでした。

皆が伸ばせば怖くない

 念を押すように語尾を強調して伸ばしたり、半疑問という妙なイントネーションをつけた話し方が若者たちの間で流行りだしたのは、昭和の末期頃かと思います。そのうちに消えてゆくだろうと思っていましたら、これが意外にしぶとく生き残っています。と言うよりも益々勢いを増して、平成、令和と、今やどっしりと、日本語社会に根を下ろしているのです。それも、若者ばかりか中高年層にも感染が広がってきました。正確に言えば、語尾伸びを伝承した昭和・平成の若者たちが、その後、矯正することもなく、中年になり高年になってきたのでしょう。

語尾伸びのルーツは?

 日本語の話し言葉の表現を変えてしまったこの語尾伸びは、いつ、誰が主導したのでしょうか。確かな学問的証拠は持ち合わせませんが、昭和20年代の初頭、日本が戦後の民主教育に切り替わった頃、神奈川のK小学校の教員たちを中心に「ね・さ・よ排斥運動」という活動が起こりました。「ね・さ・よ」という女言葉があるのは男女同権に反すると言うのです。この運動が、思いを同じくする先生方の組織を通じて、燎原の火の如く全国に広まりました。「私はね、〇〇先生がさ、言っている通りだと思うのよ」この発言から「ね・さ・よ」を取ると、取った部分が何となく「間」が抜けてしまいます。そこで「私はあー、〇〇先生があー、言っている通りだと思うのおー」と、語尾を伸ばすようになったというのです。語尾伸びの発祥にはもう一説あります。これも昭和20年から30年代、活発に思想闘争をしていた全学連のアジ演説がその起源だというのです。「我々はあー、日本帝国主義のおー、復活をー、絶対にー、許してはなりません」言葉を切りながら、語尾に力を入れて強調するのです。

難しい語尾伸び矯正指導

 ルーツはともかくとして、語尾伸びは、今私たちの言葉社会に悪しき定着をもたらしています。昨今の若い親や教師の多くは、日常的に語尾伸びで話しています。言葉をもって生業としている作家や俳優、アナウンサーの中にも、程度の差こそあれ、語尾伸びに感染している人はかなりいます。電話のオペレーター、インストラクターもその例外ではないでしょう。語尾伸びのすべてを否定はできません。思いや意味を効果的に伝えるために、意図的に語尾を伸ばすこともあり得ます。また、語尾伸びが定着している方言もあるでしょう。しかし、無意味な話し癖となっている語尾伸びは、日本語の美しさを損ない、話し手への信頼感も、話す内容の価値も下げているのです。

 インターネットを覗きますと、語尾伸び矯正へのアドバイスがいろいろ書かれています。語尾は強めにはっきり言って止める。録音して、きれいな語尾を真似る。各フレーズの語頭を立てることで語尾伸びが防げる、などなど。いずれも投稿者の苦心の方策なのでしょうが、私は語尾伸びという話し癖は、部分のスキルでは容易には直せないと考えています。方策はただ一つです。自分の話し方を客観的に聴いて、語尾伸びが如何に不自然であるかを知ることです。それを納得することです。その認識さえできれば、日常の自然な会話から、語尾伸びは徐々に消えていくでしょう。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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