電話応対でCS向上コラム

-offre M’s(オッフルエム)-
第65回 お客さまから教わったクレーム応対

記事ID:C10111

「ドアの色が違う」とクレームの電話

 講師になる前は建設会社の本社の総務部に所属し、電話応対が主な仕事でした。ある日、終業時間近くに電話が鳴りました。注文住宅の建主の奥さまからのクレームです。「ドアの色が注文したのと違うんです。輸入資材のドアをカタログで見て素敵だなぁと思って頼んだのに、全然違うの。それを現場担当の方に言ったら『輸入物ですから、こういうことはあるんです』って、あまり取り合ってくれなかったの。確かによくあることかもしれないんですけど、それってあんまりじゃない?」と切々と訴えてこられました。

聴くだけで気持ちは落ち着く

 住宅部門は別の社屋です。取り次ぐにも一旦用件をうかがわなければいけません。「は、はい、そうですか。えー、そうなんですね」と、しどろもどろになりながら話をうかがいました。気の利いたことも全然言えない応対でしたが、とにかく注文住宅という一生に一度の買い物を大切になさっているお客さまの話をうかがわなければ!という一心でした。
 すると、奥さまはヒートアップした状態から段々と落ち着いてきて、ぽつりと「現場の方に言っても聞いてくれなかったから本社に電話したんです。でも……もう一度、現場の方に相談してみます」とおっしゃいました。さらに「なんだかごめんなさいね。話を聴いてくれてありがとう」とお礼までいただいて受話器を置いた瞬間、どっと汗が吹き出しました。時計を見ると20分ほど経っていましたが、何とも言えない達成感に浸ったのを覚えています。

「まず聴くこと」を再確認

 住宅部門に電話でお客さまの様子を含めて報告後、数日経って(くだん)のお客さまから「無事にドアを取り寄せてもらえた」とお礼の電話をいただきました。当時は対応の仕方も分からず、ただ相づちを打っていただけでしたが、今にして思えば「ドアの色が違うんですね。では現場の担当からお電話差し上げます」だけでは、お客さまの「話を聴いてほしい、どんなに大変だったか理解して寄り添ってほしい」という気持ちが置き去りになっていたでしょう。お客さまの不満が大きくなっていたと思います。
 講師の仕事をするようになり、仕事先でお客さま対応をすることもあります。困っている、不満があるお客さまがいらしたら、話をまず聴く。受け止める。言いたいことをおっしゃっていただく。共感する。お客さまが感情の浄化をして次のステップに進んでいただくには「まず聴くこと」と改めて実感しています。

田原 美晴氏

建設会社に在職中、電話応対コンクールと出合ったおかげで退職後は講師への道が開けました。現在はフリーランスでコンクール指導やマナー研修、電話応対技能検定(もしもし検定)の指導者級資格を取得して講習・試験実施に携わっています。

「次回の講師は、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の伊地知(いじち)さんです。電話応対コンクールの元県チャンピオンで、その実力を活かして電話応対コンクールの模擬応対や社内講師を務めています。温かいお人柄で、いつも周りを笑顔にしてくれる講師です」

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