電話応対でCS向上コラム

東京海上日動安心110番株式会社-
第70回 お客さま本位の対応をするために必要なこと

記事ID:C10128

 私が勤務する東京海上日動安心110番は、損害保険の事故受付センターです。自動車事故を始め、火災、落雷、船の事故など、さまざまな事故に遭われたお客さまからご連絡をいただきます。
 当社では長年の積み重ねから、独自の事故受付のトークスクリプトが作られています。お客さまから順番にお聞きすると10~20分で受付が完了するよう構成されています。
 事故の後、落ち着いた状況でご連絡をくださるお客さまであれば、トークスクリプト通りにゆっくりお聴きしていけばよいのですが、事故現場にいらっしゃるお客さまや、お仕事や家事の合間に連絡をくださったお客さまの中には、忙しい時に10分も20分も時間を取られたくないという方もいらっしゃいます。

事故現場から

 Iさんというベテランのコミュニケーター(受付員)がいます。ある日、事故現場にいらっしゃるお客さまからご連絡をいただきました。最初にお客さまからいくつか質問がありました。Iさんはトークスクリプトには入らず、まずはお客さまの質問に一つひとつ丁寧にお答えしました。そして、これから10分ほどお時間をいただいて受付させていただいてよいかと確認したところ、あまり時間がないとのお話でした。Iさんはできるだけ早く済ませますと伝え、その言葉どおり2分で受付を完了したのです。しかも必要事項はすべて聴取できていました。なぜなら、最初にお客さまの質問に答えながら、受付に必要なことはほとんど聴き取っていたのです。

臨機応変な対応

 当社では、SV(スーパーバイザー)が数名のコミュニケーターを担当し、毎月応対内容をモニタリングし、コーチングでフィードバックしています。担当しているIさんのコーチングの時に、お客さまの状況に合わせた臨機応変な対応が素晴らしいと伝えました。すると担当SVのおかげですと言うのです。担当SVは何もしていませんよと伝えると、「SVからスクリプト通りではなかったねと指摘されると、次回の対応ではついお客さまの状況よりもスクリプトに沿ってこちらが訊きたいことを優先してしまいます。でも私の担当SVはイレギュラーな対応を分かってくれるという信頼があるから、安心してお客さまに寄り添った対応ができるのです」と言われました。

試されているのはSV

 コミュニケーターが安心してお客さま本位の対応をするためには、SVとの信頼関係が大事なのだと気づかされました。臨機応変な対応を支えるのは、コミュニケーターとSV相互の信頼です。このような気づきがたくさんあるから、私はコミュニケーターとの面談が大好きなのです。
 ちなみにこの時のお客さまから、後日「事故直後からとても丁寧な対応をいただきました」と感謝のお言葉をいただきました。

宇賀神 由美子氏

東京海上日動安心110番にスーパーバイザーとして勤務。電話応対技能検定・指導者級資格保持者。電話応対コンクールの模擬応対者、電話応対技能検定の社内講師として活動。

「次回の講師は、株式会社ドゥファイン 執行役員 楠田 奈美さんです。電話応対コンクールの模擬応対の時に大変お世話になりました。全国大会の審査員もなさっています。フレンドリーでとてもチャーミングな方です。温かい心配りにいつも感激しています」

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