電話応対でCS向上コラム

第24回 「電話のコミュニケーション」③心が伝わる電話応対

上手な電話応対とは?と問われれば、誰しもがそれなりに答えられるでしょう。しかし、心が伝わる電話応対とは?と訊かれると、ほとんどの方が答えに窮すると思います。それだけ、これは電話応対にとっては大きなテーマなのです。A社お客さまセンターで最高の評価を得ているベテランコミュニケーターSさんの応対ぶりを追いながら、心が伝わる電話応対について考えます。

Sさんの応対を分析する

彼女の応対のどこが良いのでしょうか。しばらく傍らで聴かせてもらいました。

  • まず絶妙な“間”です。決して流暢に澱みなく話しているわけではないのです。話すというより適度な相づちを打ちながら、ほとんど聴いているだけという印象なのです。

  • 電話で話すというより、相手のお客さまが、まるで目の前にいるように話しているのです。ですから、顔の表情や身ぶり手ぶりだけでなく声の表情が実に豊かです。ことに相づちが自然で多彩で、話に引き込まれます。

  • 説明をするときに、問いを受けて即答するのではなく、相手のお客さまの言葉をしっかり聴いて、考えながら話しているのがよく分かります。「えーと」とか「そうですね」といった冗長語もかなり入っているのですが、それが自然で少しも気になりません。大事なことは、念を押すようにくり返したりもしています。そこにはマニュアルの存在は全く感じませんでした。一つひとつの言葉を真剣に聴き、誠実に答えているのです。

心を伝えるとは、まず相手の心を知ること

Sさんに「心を伝えるにはどうすれば良いですか?」と訊きました。Sさんは一瞬の間のあと、きっぱりと答えてくれました。「まずお客さまの心を知ることだと思います」と。

彼女も、若い頃はテキパキとした流暢な応対を目指して、応対マニュアルを完璧に覚え、業務知識を増やし、言葉づかいに習熟し、難しい電話にも率先して出ていたそうです。電話応対コンクール全国大会に入賞し、後輩たちの指導も任されるようになった頃には、電話応対が楽しくて楽しくて、自信に満ち溢れた応対にますます磨きをかけていました。

「あなたの応対は事務的で感じが悪い!」

その頃、Sさんに一つの転機が訪れました。いつも通りにテキパキと応対していたSさんでしたが、お客さまから「あなたの応対は事務的で感じが悪いね」と言われたのです。大変なショックでした。録音をとって聴いてみました。慣れとともに、知らず知らずのうちにお客さまを捌いていたのです。自分では気がつかなかった語調の冷たさ、語尾の強さ、音色の固さ、お客さまを急きたてるような間の不足、省エネで話す抑揚の単調さ、などの現実を突き付けられて愕然としました。お客さまを大切に思う気持ちを忘れたことなど、一度たりともないと思っていたのに、実際にはお客さまが見えていませんでした。見えていたのは言葉だけ。ですから、声にしたときに、その気持ちが全く伝わらない甘さを知らされたのです。

心が伝わる温かい応対を目ざして

その日から、Sさんの心と表現力のメンテナンスが始まりました。名乗り一つでも、ただ名乗るのと、本当に自分の名前を覚えてもらおうと思って名乗るのとでは、言い方も伝わり方も全く違うことを知りました。

有難うございます・お待たせしました・申し訳ございません・よろしくお願い致します。これらの言葉を、様々な場面を想定して、地の声、息の声、裏声などを織り交ぜて言ってみる。高低、緩急、強弱を変える。録音をとって比較する。何が違うか。どこが違うか。こうしてSさんの表現力は磨かれました。やがて、心と言葉、そして表現のスキルが合致したSさんの温かい応対は、多くのお客さまに支持されるようになったのです。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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