電話応対でCS向上コラム

第20回 ハラスメントを予防する〈その1〉

記事ID:C10104

ハラスメントには“グレーゾーン”の領域があります。制度や法律でカバーできないハラスメントのリスクに対しても、アサーティブなアプローチがあります。

グレーゾーンのハラスメントはコミュニケーションで解決できる

 ハラスメントを予防するためにできることの一つに、いわゆる「グレーゾーンのハラスメント」を認識し、そこにきちんと対処できるようになっておくことが挙げられます。
 違法行為、業務の適正な範囲を超えるような指導、明らかにパワハラ、セクハラに該当する言動は、相談窓口などにつながりやすいのですが、言い方や振る舞いに問題がある、ハラスメントかどうかの判断に迷う場合では、その場の対応に迷うことも多いものです。
 「グレーゾーン」とは、このようにブラック(完全にアウト)ではないが、ホワイト(ハラスメントに当たらない)でもない、という領域です(図参照)。この「グレー」領域の状況を放置していると、のちの「ブラック」に発展してしまうことがあります。
 アサーティブなコミュニケーションは、自分がハラスメントを起こさないだけでなく、周囲のグレーゾーンの言動に介入する場面でも活用することができるのです。
 ハラスメント予防を“言葉狩り”として捉えるのではなく、私たちの他者と関わり方やコミュニケーションの取り方として考えるとどうなるのでしょうか。

図:グレーゾーンの領域

事例 上司の言動がセクハラに

 医療現場で働く主任の小笠原さん。50代の元気な嶋田師長と仕事をしています。先日嶋田さんが若いスタッフに対して、「彼氏はできたの?」「早く子どもを産みなさいよ」などとアドバイスをしていたのを耳にしました。小笠原さんとしては、嶋田さんに悪気があってのことではないことは分かりますが、「セクハラです」と直接的に伝えるのも気が引けます。これを嶋田さんだけの問題にせず、職場のコミュニケーションの在り方として、前向きな提案をしたいと考えています。

率直に、端的に切り出す

 アサーティブに伝える時のキーワードは「率直」です。何を言われるだろうか、どんな反応が来るだろうかという怖れや不安は横に置いて、まずは率直に切り出すことを意識しましょう。
 「今朝の会議の後、一つ気になったことがありまして。今、お話してもよろしいですか」と率直に切り出します。回りくどい言い方よりも率直で真剣な口調で始めるほうが、こちらの真意を伝えやすくなります。

「実際に起きたこと」を話す

 伝えるべきことは「実際に起きたこと」です。言いづらいからといって「スタッフに個人的な話題を振ってましたよね」などの曖昧な表現では伝わりません。セリフで、具体的に説明することを覚えておきましょう。
 「先ほど〇〇さんに『彼氏いるの?』『結婚は?』とお話されていましたが、覚えていらっしゃいますか?」
 そこで嶋田さんも「あの時のあのことだ」と思い出すことができます。その上で、事実が引き起こす問題点を簡潔に説明します。
 「個人的なコメントを不快だと感じるスタッフもいますし、必ずしも“彼氏”ではない可能性もあり、セクハラのリスクがあることを正直心配しております」
 事実とリスクについての具体的な説明をすることで、何気ない行動が引き起こす事の重要性にハッと気づきやすくなるのです。

具体的な提案と協力の意を示す

 最後に具体的な提案を一つしましょう。相手を“悪者”として責めることではなく、問題を意識化し一緒に解決する“協力者”だと考えて提案をするのです。
 「今後ですが、本人のプライベートに関わるコメントはなし、で、行きませんか。私も気づいたら声をかけるようにしますし、嶋田さんも、私の言動で気づいたことは何でも指摘してください。良い職場環境を作るために私も頑張りたいので、ぜひご協力をお願いします」
 私たちは誰もが当事者であり、どんな時もハラスメントをする側になる可能性から逃れることはできません。だからこそ、グレーゾーンを見逃すことなく、小さな問題についても率直に話し合える関係を築く必要があります。アサーティブは、そこでも活用することができるのです。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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