電話応対でCS向上コラム

第19回 発言しない新人にどう関わるか

記事ID:C10101

会議での発言を促す際には、「発言して大丈夫」と感じられる場の空気と人間関係があると同時に、上司や先輩が「I(アイ)メッセージ」で発言を促してあげるといいでしょう。

発言しない新人にどう関わるか

 会議を活発にしたいのに、発言するのはいつもベテランばかり。若い世代の意見を反映させて、チームに新しい風を入れたい。でもチームの新人や若手はなかなか意見を言わず、議論がベテラン目線になってしまう。どうしたらよいかと悩むことはないでしょうか。
 「〇〇さん、意見はありますか」と聞くと、委縮したり上手く言えなかったりで発言が出てきません。そうした新人や若手に対し、アサーティブな関わり方はあるのでしょうか。

例えば…新人に意見を言ってもらいたい

 課長の高木さんは、入社半年になる新人の三田さんが、チームの会議で発言しないことに頭を悩ませています。普段からなるべく全員が発言できるように工夫し、三田さんには「新人としてのフレッシュな意見を出してください」と伝えて発言を促すのですが、三田さんは「特にありません」と言うばかりです。
 ミーティングがオンラインに移行していく中で、高木さんは三田さんとどのような関わりを持てばいいのか真剣に悩んでいます。自分と二まわり以上年齢差のある彼女に、あまり馴れ馴れしくするのは良くないし、とはいえ何もしないで放っておくわけにはいきません。どのように発言を促せば良いのでしょう。

発言の仕方を教える

 若手が会議の場で発言をしないのは、さまざまな理由が考えられます。そもそも意見がない、意見の伝え方が分からない、という考え方やスキルの問題もあれば、会議の席での心理的安全性(安心して発言できるか否か)という環境や人間関係の問題もあります。
 スキルが問題であれば、発言の仕方を具体的に教えてあげましょう。「会議で黙っていると、『三田さんは何も考えてない』という評価になってしまう。それはとてももったいない。そんな時は『よく分からないので、次回までに調べてみます』と発言するといいよ。あなたの前向きな姿勢が伝わるし、周囲の評価も変わってくるから」という感じです。
 高木さんにそう言われれば、三田さんも「なるほど、そう言えばいいのか」と理解するので、実際に話をしやすくなるでしょう。

「I(アイ)メッセージ」で気持ちを伝える

 三田さんが会議の場で「発言しても大丈夫」と感じられていない心理的安全性の問題も考えられます。その場合は、自分の意見を受け止めてもらえると感じられる環境や人間関係を意識的に作っていく必要があります。ここでは、高木さんが、「I(アイ)メッセージ」で発言を促すことがカギとなります。
 立場が上でかつ経験値も高い高木さんから、年の離れた新人の三田さんに対して意見を促す時に、私たちはよく「You(ユー)メッセージ」と呼ばれる、相手を主語とした伝え方をしがちです。
 「会議でもっと発言してほしい」「意見を言ってほしい」という言い方です。内気な三田さんには、少し一方的な印象を与えてしまうでしょう。
 一方、I(アイ)メッセージであればどうなるでしょう。自分を主語とするので「私がどう思うのか」を基軸にして話を進めていくことができます。
 「三田さんの考えが分からなくて、僕自身、ちょっと困っていてね。この案件に対するチーム一人ひとりの意見を、僕が理解したいんだよ。だから三田さんの話もぜひ、聞かせてもらえないだろうか」
 このように、高木さんが「僕が〇〇を理解したい」と自分を軸にして促すと、三田さんも自分の気持ちを発言しやすくなるのです。
 一人ひとりが大切にされる会議の場をどう作るかは、過去も現在も難しい課題です。ただ、多様な意見が反映される会議の場は、今後さらに必要となるに違いありません。その時に、“発言してよい”と感じられるような環境や人間関係を作ることや発言を促す方法を持つことは、とても大切なことなのです。多様な意見が出やすい場を作るためにも、アサーティブなコミュニケーションを使っていけると良いかもしれません。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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