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労務管理とは

記事ID:C10119

労務管理は、企業が持続的に成長し、従業員が安心して働ける環境を整えるための基盤です。本連載では、労務管理の基本的な定義や重要性、そしてその役割について解説し、実務に役立つ情報を提供します。全12回の連載となりますが、どうぞお付き合いください。

働く環境を整える労務管理

 人を雇う経営者も、雇われて働く労働者も、それぞれがバラバラに考えていては、仕事はうまくいきません。
 例えば勤怠。皆さんの会社の「定時」は何時でしょうか。その「定時」は誰が、いつ、どうしてその時間と決めたのか、分かりますか?
 9:00~18:00の会社が多いかもしれません。9:00~17:00の会社もあるでしょう。フレックスタイム制で、出退勤の時間が決まっていない会社もあれば、シフト制で毎日出勤時間が異なる場合もありますよね。これらの「定時」は、会社の運営が効率的に行えるように、会社ごとに決められています。
 このような、会社での働くルールを作ったりそれを運用したりすることは、企業が持続的に成長し、労働者が安心して働ける環境を整えるための基盤となるものです。今回は、その基本的な定義から、労務管理の重要性、そしてその役割について解説します。

労務管理の定義

 労務管理とは、企業が労働者を適切に管理し、労働条件や労働環境を整えるための一連の施策や手続きのことを指します。
 例えば、休日。皆さんの会社の休日はどのように決まっていますか?
 給与計算はどのような式で行われているのでしょうか?ハラスメントが起こった時、相談窓口はありますか?
 ルールを決めて運用し、働きやすい職場にする。そのようなこと全般が労務管理です。労務管理は、労働基準法や労働安全衛生法などの法令に基づき、企業が従業員との関係を円滑に保ち、法令遵守を確保するための重要な手段です。

労務管理の重要性

 労務管理というのは、人事以外で働く人にはあまり意識されていないかもしれません。しかし、考えてみれば、非常に重要なことなのです。
 皆さんは、給与明細を毎月確認していますか? どのような計算方法で計算されているか知っているでしょうか。労働時間の集計は適切でしょうか。働いた分、ちゃんと支給されているでしょうか。労働時間の適正な管理や給与計算が正確であることは、従業員が企業に対して信頼感を持つ要因となります。また、会社にはハラスメントなどの心配や問題が起こらないように、労働環境の改善を図る義務があります。
 労務管理について労働基準法などで決められた義務、そして会社がより良い働く場になるために独自で決めていること、その積み重ねで従業員の会社への信頼感は高まります。また、仕事への前向きな気持ちがあれば、会社の業績アップにつながることでしょう。さらに、法令に従った労務管理を行うことで、企業は法的リスクを回避し、社会的信用を維持することが可能となります。適切な労務管理は、企業が社会的責任を果たし、持続的な成長を遂げるための基本的な条件となります。

労務管理の役割

 「入社」というのは、雇用契約の開始ということです。「退職」は雇用契約の終了です。労務管理は採用から始まります。採用そして入社、働き方、有給休暇や休業、そして退職や解雇の流れ、そういったものがもし何も決まっていなかったら、どのように働いてよいのか分かりません。
 労務管理は、労働者の採用から退職までの一連のプロセスを管理し、労働条件、労働環境を維持する役割を担っています。採用時の雇用契約の締結、労働時間や休暇の管理、給与計算の正確な実施、安全衛生の確保、さらには従業員のメンタルヘルスケアなども含まれます。
 これらが適切に管理されることで、企業は従業員のパフォーマンスを最大化し、競争力を高めることができます。また、労務管理は、従業員との信頼関係を構築し、組織全体の安定性を保つためにも重要な役割を果たしています。
 この連載では、以降の各回で労務管理に関するさまざまなトピックを取り上げ、実務に役立つ情報を提供していきます。雇用契約に関する基礎知識やトラブル回避のポイント、労働時間と勤怠管理の実践的なアプローチ、給与計算における留意点、有給休暇やハラスメント対策の重要性など、具体的なテーマを掘り下げ、実際の事例を交えながら、労務管理の基本を解説していきます。

市川(いちかわ) (めぐみ)

1980年東京都生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。役者となる夢破れ一般企業に入社し、採用業務に携わる。転職を重ねフリーターや派遣社員を経て、2010年社会保険労務士試験に独学で一発合格。2012年社労士事務所を開業。現在は約60社の労務顧問のほか、講演やセミナーを行っている。2019年から配信しているPodcast「人事労務の豆知識」は登録者2万人。2021年からは社労士向けのオンラインサロン「# 社実研」を運営している。

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