電話応対でCS向上コラム

-合同会社オフィスシュエッテ-
第68回 改めて思う、相手の立場に立つとは

記事ID:C10120

相手の立場に立つとは……

 講師の仕事の一つとして、高齢者や障がい者の方々への介助や接遇スキルを学ぶ民間資格、「サービス介助士」の講座を担当しています。近年では多様性(ダイバーシティ)の考え方が少しずつ浸透してきた感はありますが、実効性の観点から見るとまだまだ十分とは言えないのが現状です。相手を尊重し、その違いを自然に受け止め行動できるようになれば、との思いで講師を務めています。こう言うとかっこ好いのですが、指導している立場でありながら、相手の立場に立ったつもりが思い込みや決めつけで行動していることに私自身が気づかされることが多くあります。

「人それぞれ」を大切に

 講座の中で、「電車やバスで席を譲った時に、断られたことのある方はいますか?」と受講生に問いかけると、多くの手が挙がります。「では、断られて良かった!と思った方はいますか?」そう聞くと皆怪訝(けげん)そうな表情になり、手が挙がることはこれまで一度もありませんでした。この質問は、事故で半身不随になり、車椅子ユーザーになった方が講演会で会場の参加者に投げかけた質問です。その方はこう続けました。「断られたら、良かった!と喜んでください。なぜなら、人のサポートがなくても一人でできるんだ、それは良かった、と」。それは考えも及ばない視点でした。そして、「障がい者はいつも誰かのサポートを必要としている訳ではなく、できることもたくさんあります。断るには理由があり、それを受け入れ認めてほしい」という言葉は、“目から鱗”の気づきになり、それ以来講座で伝えています。
 また、ある視覚障がい者の方は「お手伝いしましょうか、と言われたらほとんどの場合断りますが、そばにいますからと言ってくれるだけで安心します」とちょっとした一言があるだけで安心感につながることを教えてくれました。私たちは障がい者は困っている方、お手伝いが必要な方と決めつけていたのです。ある日、電車で席を譲ろうとした時に「一旦座ると立つのが大変なので立っているほうが楽なんです」と丁重に断られたこともありました。本当にそれぞれの事情や考えがあることに気づかされました。
 電話応対でも、高齢のお客さまだからといってまるで子供に話しかけるようにゆっくり話し過ぎると「子供扱いしているのか」とお叱りを受けるオペレーターもいます。良かれと思ったことが必ずしも「その方の望む対応」ではないかもしれません。思い込みで応対していないかをつねに考え、お客さまの立場に立って、ご事情や状況を理解し「人それぞれ」を忘れずに、これからも求められる応対を実践していこうと思います。

小野 由美子氏

合同会社オフィスシュエッテ 代表。電話応対技能検定指導者級資格保持者。フリーアナウンサーとして数々の番組のキャスター・レポーターを務め、その経験を活かしてコミュニケーションをベースにした企業研修の講師として活動。電話応対コンクールの指導や審査員、障がい者や高齢者対応の接遇研修や電話応対研修も行っている。

「次回の講師は、株式会社 Safari の西岡 幸恵さんです。長年広告マンとして仕事をされており、言葉のセンスは流石です。電話応対技能検定の実施機関としても活躍されています。エレガントな雰囲気でとても素敵な講師ですが、海外にまで行かれるサーファーという意外な一面もお持ちです」

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