電話応対でCS向上コラム

第22回 「電話のコミュニケーション」①よい電話応対とは?

「よい電話応対とはどのような応対ですか?」と問われたらあなたはどう答えますか?この人に会ってみたいと思う応対。最愛の人と話しているときの応対。特に正解があるわけではありませんから答えはさまざまです。今号から2回は、「電話のコミュニケーション」について考えます。

良い電話応対の条件

プロの電話応対の指導者たちに、よい電話応対の条件を挙げてもらいました。10項目にまとめると以下のようになります。

  • 話をよく聴いてくれる。

  • 用件に対する明快で的確な返答。

  • 確かな業務知識。

  • 手際の良い事務処理と応対。

  • 分かりやすい説明。

  • きちんとした復誦、確認、くり返し。

  • 温かい心くばり。

  • 適切な「間」、聴きやすいテンポ。

  • 明るく歯切れよく聴きやすい声。

  • 丁寧なことば遣い、正しい敬語。

いづれも誠にもっともな答えです。そこで今度は、この中で最も大事だと思うことを1点に絞ってくださいと求めました。答えはばらけました。中には絞れない人もいました。

お客さまは電話に何を求めるか

私の答えは「用件に的確に答えてくれたかどうか」です。その実現に必要なのは「聴きとり訊き出す力」と、「何を伝えるのかという判断力」そして「伝達力」です。お客さま満足の第一条件は、きれいな声でも完璧なことば遣いでもありません。用件に的確に答えてくれたかどうかなのです。つまり、電話応対教育のポイントは、そのための「聴く力」と「判断力」に置くべきだと私は思います。一部のコールセンターには、「判断力などは不要。マニュアル通りにきちんとやってくれればそれで良い」、と言う指導もあると聞きました。それも会社としての判断であり方針なのでしょうから否定はできません。

ポイントを「主」と「従」に区分けする

上記の10項目の条件は、よき応対者を育てるためのポイントを、大事な順に並べました。

ところが、実際の電話応対教育はこのランキングと逆の順で行われる傾向がみられます。上記の10.9.8.の項目が多いのです。発声が悪い。敬語が間違っている。早口だ。3コール以内で出なかった。トチリがあった。えーとや、あのーが気になる。名乗っていない。お礼を言わなかった。お詫びが事務的だ…。もちろんこれらの欠点は、プロとして直さなければいけないことです。但し、応対力としてはそれは「従」のスキルです。「主」はあくまで「用件に的確に答えてくれたかどうか」であり、何が大事かを聴き取り、訊き出し、判断する力です。「主」が欠けたときに、苦情、クレームが発生するのです。

マニュアル応対ことばの再点検を

しょっちゅう使っている言葉はパターン化して、心も力も失います。「いつもお世話になっております」「メモのご用意はよろしいでしょうか」「その件に関しましてはお受け致しかねます」「ご不明な点がございましたら私○○までお電話ください」「心よりお詫び申し上げます」「どの者がお電話お受け致しましたでしょうか」…。いづれも立派な接客敬語です。ではなぜこういう言葉を聴くと、むずむずとする違和感があるのでしょうか。言葉の丁寧さに心がついて行かないからです。マニュアル敬語にはそうした宿命があります。

マニュアル言葉に心を乗せる表現技術を研究すること。本当にその言葉しかないのか、もっと普通の言葉でよいのではないか。マニュアル言葉の再点検も必要でしょう。ことにお礼やお詫びの言葉は、状況に応じて言葉を選び、心を込められるか、それがお客さまに伝わるか。それは、自然な応対を目指す電話応対コンクールやもしもし検定の課題でもあります。

岡部 達昭氏

日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。

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