電話応対でCS向上コラム
-株式会社アド・ダイセン-第53回 言葉にしていない心情・背景まで知ろうとする応対
記事ID:C10073
アド・ダイセンは、ダイレクトメールによるリテンションマーケティングを中核事業とし、デザインから、加工、発送までをトータルで行っています。そのダイレクトメールがお客さまに正しく、良い品質で届いているかを確認するため立ち上げたコールセンターは、今ではアウトソーサーとして通販や各種問い合わせ窓口など複数のクライアント企業さまの顧客対応を担っています。
正しく応対したはずなのに お怒りのお客さま
それは、阪神大震災から数年を経て、神戸の街がようやく活気を取り戻し始めた頃のことです。私は通販のコミュニケーターとして仕事を始めて2ヵ月ほど。新しいカタログの配布直後ということもあり、朝から注文の電話が鳴りやまず、大忙しの日でした。次から次へとお客さま対応を続けていた時、一人のお客さまから「あなた、新人さん?」と訊かれました。静かな口調でしたが、お怒りという様子が伝わってきます。私は手順どおり正しく応対したのにどうしてお怒りなのだろう……と思いましたが、何と答えてよいか分からず黙りこんでしまいました。
教えていただいた大切なこと
「あなた、そんなに早く電話を切りたいの?こっちだって言いたいことがあるのに……」。お怒りはごもっともです。お客さまは購入したジャケットを少しでも早く届けてもらいたいと言いたかったのに、私は早く次の応対に進むため、急いで終話の挨拶を始めていたのです。実は、私が配送予定を案内したあと、お客さまから再度「いつ頃届くの?」と質問を受けていたのですが、「1週間前後です」と同じ案内を繰り返しただけ。お客さま一人ひとりにドラマがあり、まだ言葉にしていない心情や背景があるかもしれない、「何かご都合があるのでは?」「お急ぎでは?」と想像し、質問すべきだったと、初めて気づいた瞬間でした。それからはお客さまの最後の一音まで耳を澄まし、お気持ちを感じ取ろうと集中するようになりました。この姿勢は、今も応対指導の際に大切に伝え続けています。
「察する」「分かろうとする」 応対を目指して
一定レベル以上の応対品質を保つためには、スクリプトなど「型」を教えることが必要です。けれども、用意した言葉や手順だけではお客さまの真の満足は得られません。お客さまの心情や背景も含めてしっかり「聴く」。そんなコミュニケーターを増やすため、当社では今年から応対評価基準を大きく見直し、新たな育成体制を築こうとしています。その一員として、私もさらに学びを続け、指導に励んでまいります。
お客さま室 コンタクトセンター教育チームのチーム長として、応対教育・品質管理、人員配置なども含め幅広くご活躍。とても頼りになる方です。
加地 倫子氏
株式会社アド・ダイセン アド・テレサポート本部所属。電話応対技能検定(もしもし検定)指導者級資格保持者(18期)。トレーナーとして電話応対教育全般、もしもし検定の企業内実施などを担当しています。