電話応対でCS向上コラム

-有限会社カスタマーケアプラン-
第48回 一受講者が伝承・共有・平準化できる研修へ

記事ID:C10056

クレーム対応の研修講師をして25年。受講者である企業のクレーム対応担当者たちへ、私自身がクレーム対応担当者だった経験を基にした指導を繰り返してきました。ただ、講師としてうなだれてしまうこともありました。それは、研修で教えたことが、実際の現場で伝承・共有されていないことを知った時です。

伝承・共有しやすい指導とは?

 私が関わる企業のほとんどは、「クレーム対応担当者となった新任者」への指導を求めており、担当企業で新任のクレーム対応担当者が着任した際の指導依頼も多いです。そんな中、ある企業の新任のクレーム対応担当者に「昨年の担当者には、***と教えたので、昨年の先輩の対応を見ると良いですよ」と伝えたところ、「でもその先輩は、実際に***の応対はしていません」 と言うのです。話を聞くとその企業の受講者は、その都度私の指導を理解して現場に戻るのですが、結局指導した対応方法を取り入れることなく、その組織のこれまでのやり方を続けていたのです。そのようなことでは、私から受けた指導時間もコストも無駄になります。そこで私は「クレーム対応の技術が伝承・共有しやすい指導をしなければならない」と思い、暗中模索していました。

「思考」の指導から「行動」の指導へ

 その結果、「クレーム対応への考え方を教えるのではなく、クレーム対応の演じ方を教えること」をテーマに指導するように改善しました。具体的には、「どうしたらお客さまが喜ぶか」を考えさせるのではなく、「クレーム客が引き下がってくれるための」クレーム対応の初動から一次クロージングまでのトークや、難渋客の“いちゃもん”に対する返答トークなどの応対方法を具体的に教えることにしたのです。

 そのように指導の方向性を変えたことで、私の指導を受けた企業の担当者たちは、学んだ対応方法を社内で伝承したり、共有したり、平準化対応に活かしてくれるようになりました。例えば、私から提供したトークを基に、よくある事例別トークマニュアルを作成し、朝礼などの時間に音読をしたり、また、トークマニュアルどおりにお客さま対応をしているかどうかの応対診断をしたりしています。そうなったのは、私の指導が「思考」の指導ではなく「行動」の指導に変容したからだと言えます。
 現場のクレーム対応担当者が欲しているものは、「お客さまが満足するお客さまとの向き合い方」ではなく、「お客さまがクレームに終止符を打ってくださるための自分の具体的な行動」だと痛感しています。

次回の講師は、ヤマトコンタクトサービス株式会社の楠見 由佳さん(電話応対技能検定指導者級資格保持者・24期)です。同社コールセンターの品質担当として、応対研修や電話応対コンクールの指導に従事されている方です。

中村 友妃子氏

有限会社カスタマーケアプラン 代表。大阪産業大学経営学部経営学科非常勤講師。消費者教育学会関西支部役員。講師として25年にわたり「企業のクレーム対応担当者を対応の疲弊から救うこと」を理念に、クレーム対応技術教育研修・応対診断・マニュアル作成指導などを実践。電話応対技能検定実施機関として12年の実績を持つ。電話応対技能検定指導者級資格保持者(4期)。テレビ出演実績「ワイド!スクランブル」「ホンマでっか!?TV」など。

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