電話応対でCS向上コラム

第28回 ともに生きる気持ちに寄り添う-医療法人辰川会 山陽病院-

記事ID:C10008

 病院では入院されている患者さまご本人だけでなく、ご家族との関わりもとても重要です。書類へのサインのお願いや物品の購入など、ご家族へご承諾をいただくためにこちらから電話をかけることがあります。

怒りに潜む感情

 ある日、物品購入のご相談で患者さまのご家族の携帯電話へ連絡しました。しかし電話はなかなかつながらず、留守番電話もないため、伝言も残せずにいました。しばらくして、そのご家族から折り返しの電話をいただきました。電話に出ると明らかに怒った女性の声。「もう!いい加減にしてよ!こっちは急いでいるのに何回も何回も電話させて!」と、こちらの要件どころではなさそうです。まずは落ち着いていただこうと状況をお尋ねすると、車の運転中に着信があったことに気がつき、あわてて近くのお店へ駐車して電話したものの、話し中でつながらないし、つながっても途中で電話が切れてしまう。次の用事まで時間がないと焦る中、何度も電話してようやくつながったとのことでした。彼女は一通りお話しされると少し気持ちが落ち着いたのか「で、要件は何?」と、問いかけます。私は、お急ぎの中何度もお電話していただいたお礼と、なかなか電話がつながらなかったことをお詫びし、要件をお伝えしました。「良かった。急ぎじゃなかったのね。病院からの電話はいつも何事かと思ってドキドキするのよ」「ご心配をおかけしました」「でも、良かったわ、何でもなくて。言いすぎちゃってごめんなさいね」と安心した様子で話されました。

 こちらの要件を伝えようとするために、謝罪しただけでは分からなかった相手の話を聴くことで怒りに潜む感情を知り、その気持ちに寄り添うことの大切さを実感した出来事でした。

「かもしれない」の心

 入院されている方がいるご家族にとって、病院からの着信は「良くない知らせかもしれない」と、不安な気持ちになりやすいものです。特に現在、当院は新型コロナウイルスの影響で面会制限があります。患者さまに直接会えないのはストレスでもあり、今まで以上に心配、不安な気持ちで過ごされているご家族が多いように感じます。電話をする私たちが、ご家族は入院されている患者さまの様子が分からず不安な気持ちかもしれないという心構えで電話をすることで、言葉選びや声のトーン、ご家族に与える印象も変わります。冷静に話したつもりが「冷たい」とか「事務的」と思われがちな電話だからこそ、寄り添う心が電話応対には必要です。「知っている」から「できる」に変わることで、対面の場面にも応用できます。相手の気持ちに寄り添いながらも、親しさとなれなれしさを履き違えないよう自分自身も試行錯誤を重ねながら、電話応対技能検定(もしもし検定)の心を広げていきたいと、日々過ごしています。

次回の講師は、尾道国際ホテルグループの岸上 美紀さんです。接遇課長として、社内でのもしもし検定実施などでご活躍されています。電話応対コンクール選手時代からの変わらぬ向上心と温かいお人柄、笑顔と優しい声も魅力的な指導者です。

福江 安代氏

医療法人辰川会 山陽病院リハビリテーション科所属。シャープ健康保険組合在職中に電話応対コンクールへ参加、他社選手の応対に感銘を受ける。「いつも優しい心で応対するために、自身の心を安定させる必要がある」と、アンガーマネジメントファシリテーター※の資格を取得。電話応対技能検定指導者級資格保持者として指導、審査を行う。
※怒りの感情と上手に付き合う方法を教え、講演、研修、トレーニングなどを行うことができる、日本アンガーマネジメント協会の認定資格。

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