電話応対でCS向上コラム
第3回 お客さまの声を「聴く」ことの大切さ-ダイキン工業株式会社-本当に「聴く」ことができているのか
電話応対のCSを向上させるには、「お客さまのお話を聴く」ことが大切です。企業の人間として、お客さまのお話を聴かない人はいないと思います。ですが、自分ではお話を聴いていると思っているだけで、実際には「聴く」よりも「話すテクニック」に重きを置いていることに気づいていないこともあるのではないでしょうか。現在、私は品質管理チームにおりますが、数年前までコミュニケーターとして働いていました。これは、そんなコミュニケーター時代の話です。
配慮と共感の言葉を省略したことによる後悔
空調機製造メーカーである弊社は、機器修理の受付やエンジニアの修繕訪問も直接行っています。
ある日、販売店から空調機の修理依頼があり、訪問日程についてお客さまと直接お話しするよう指示を受けました。このような購入ルートからの依頼では、事前に受け取っているお客さま情報には書かれていない、CSに重要な背景事情が隠れている場合があります。例えば、お客さまが修理を依頼されてから弊社に連絡が入るまでに数日が経過していたり、お客さまの心情の問題が大きい場合など背景事情はさまざまです。そのため、電話をかける時には想像力を働かせて配慮や共感を示し、寄り添うよう気をつけて応対します。電話ではまず「ご連絡が大変遅くなり申し訳ございません」のお詫びから開始し、訪問日程をご案内する際も「お許しいただけるならば(○日にお伺いさせていただきたいのですが)」などの配慮の言葉が大事です。しかし、その時私は多忙に加え、配慮や共感の言葉の効力に疑問を抱き始めていた時期でもあり、それらの言葉を使わずにお話を進めていたのです。そのお客さまは当初穏やかな印象でしたが、突然きつい口調でこう言いました。「私は寮母です。部屋に一台しかない機器が昨日から動かず、寮生が困っています。体調も心配ですので『今日は修理に来てくれるはず』と声かけもしていましたが、電話も遅いし、訪問も遅い。私は寮生になんと言ったらよいのですか!」
私は衝撃を受けました。一瞬、共感の言葉を端折ったことを後悔したのです。
“寄り添い”の第一歩
しかし、すぐに気がつきました。お客さまが不愉快に思われた真の問題は「聴く」の欠如であることに。
この時の私は、お客さまのお話を聴かず、お客さまのことを理解せずに応対していました。もし、お困りの状況をしっかりとヒアリングできていたら、状況に合わせてお話を進め、お客さまに不快な思いをさせることは無かったはずです。
この時「お客さまのお話を聴き、お客さまの状況やニーズを知る」ことが、“寄り添い”の第一歩であることを知ることができたと思います。この経験から、現在は指導者として「聴く」ことの重要性を日々伝え続けています。
水倉 直美氏
ダイキン工業株式会社 西日本コンタクトセンター 品質管理チーム所属。コミュニケーターの電話応対品質の向上、サービスエンジニアやグループ会社の電話応対及びマナーの向上業務に従事している。(公財)日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定指導者級資格保持者。