電話応対でCS向上コラム

第17回 部門間の対立を乗り越える

記事ID:C10095

他部門と話をする時に、利害が対立することがあります。対等に話し合うためには、双方の課題を共有しつつ共通の目的に向かって対話を進めていくことを意識しましょう。

部門間の対立を乗り越えるために

 同じチームや同じ部門であれば、多少のコミュニケーションの対立や衝突があったとしても、“同じ土俵”、つまり部内の共通の認識や言語、前提条件やゴールが共有されているため話を進めやすいものです。しかし、相手が他部門である場合、つまり“同じ土俵”にはいない相手と利害がぶつかってしまうと、アサーティブに話し合いを進めていくのが難しい場合があります。例えば、営業 vs 開発部門、管理部門 vs 現場、制作 vs 企画、など、価値観も優先順位も異なる間で生じる衝突は、枚挙にいとまがありません。
 担当者間のコミュニケーションがうまく取れず、「あの部門はこちらの状況を理解してくれない」という不満をためてしまうと、相互の協力関係を築くことが難しくなります。たとえ対立する立場にあったとしても、同じ目標に向かって協力関係を築くには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

例えば…無理な要求をしてくる営業担当に

 木村さんは技術部門でシステム設計の担当をしています。営業担当の北山さんから、顧客のX 社から6週間後の納期を1ヵ月に短縮するよう要望が来たという話がありました。「それは対応できません」と伝えても「お客さんの強い要望だし、これまでも何とかしてくれているじゃないですか」と一方的に押し切られてしまいました。今回は期間内に仕上げることができましたが、今後もこのような無理難題が続いては困るので話をしたいと思います。

立場ではなく利害(本当の困りごと)を誠実に話す

 話し合いの軸を「6週間 vs 1ヵ月」とすると、それぞれの「立場」のぶつかり合いとなるため、どちらかが折れるという結果になりそうです。このような場合、期間という目に見える理由ではなく、その裏にある本当の理由や願い(利害)について腹を割って話し合い、双方が満足する結果を導き出そうとするのが、アサーティブな話し合いとなります。つまり、「立場上、困ります」ということでの対立ではなく、こちら側が何に困り、本当は何を優先したいのかを、丁寧に説明することから始めるのです。
 具体的には「納期が短くなることで、品質が下がること」が一番の懸念事項となるでしょう。言わなくても分かるはずと考えず、自分たちが大切にしているのは品質であり、何を優先し何を避けたいかを、しっかりと説明する必要があります。
 「6週間であれば検証を3回できるが、1ヵ月になることで検証の回数が減り、その結果バグが発生する率が高くなることを私は懸念しているのです。こちらとしては、質の担保を最優先したいので、最低限6週間を確保したい」と、具体的にこちらの事情を伝えます。

相手の事情や懸念を正しく聞き取る

 同時に必要なのは、相手側の事情や懸念事項を正しく聞き取ることです。北山さん(営業側)が考えている状況や、顧客との関係で懸念していることは何かを丁寧に聞き出します。
 「顧客が納期を早めたい理由は何か、先方が懸念しているリスクは何か」など、北山さんが持つ情報を具体的に聞き出し、確認をしていきます。「なるほど、顧客としては〇〇と××を懸念しているのですね。よく分かりました」
 北山さんは“敵”ではなく、問題解決のパートナーです。本当の理由を正しく引き出すことで、こちら側も協力や譲歩できる線が見えてくるかもしれないのです。

共通の目標に向かって協力関係を築く

 双方の共通の目標は何でしょうか。それは、自社で作る成果物を通して顧客に満足してもらい、自社のビジネスを拡大するということです。技術部門と営業部門とが協力しながら、最終的に顧客に対して最善の提案をするためにこそ、解決策を話し合っていくのです。
 「自分も相手も満足する最善の結果をどのようにしたらよいだろうか」を共通の目標としながら、誠実に対等に話し合う。その結果が双方にとって満足するものであれば、担当者同士の協力関係の土台は確実に築かれていくに違いありません。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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