電話応対でCS向上コラム

第11回 感情的になりそうな時は

記事ID:C10078

強い感情を扱うために必要なのは、それを適切に表す語彙(ごい)を持つことです。実際に伝える時には、現在と未来に関して要望を言葉にしましょう。誠実に、率直に、簡潔に、を意識します。

自分の感情にふたをしない

 「感情的になった時、どうしたらアサーティブになれますか」という質問を、先日いただきました。頭に血が上った時や動揺した時、ショックで涙が出そうな時に、アサーティブに振る舞うことはとても難しいですよね。
 私の答えは「感情的になった時は、アサーティブに何かを言おうとしなくてよい」です。その場で何かを伝えようとしても、たいていの場合うまくいきません。怒りを爆発させてしまうか、言葉よりも涙があふれてしまうことになるからです。
 アサーティブであるとは、自分の感情にふたをして何でも理性的に話すことではありません。自分の感情にふたをすると、自分が本当は何を感じてどうしたいのかをつかみづらくなりますし、自分にも相手にも誠実になることが難しくなります。
 感情的になるなんて大人げない、と言われるように、強い感情は否定的な評価を受けがちです。でも、実は決してそれだけではありません。不正や差別に対する怒りは、社会変革の原動力ともなってきました。相手や自分を責める怒りではなく、建設的な怒りとして表現する方法はありますので、次に見ていきましょう。

時間を取って心の中で言語化する

 アサーティブであれば、ネガティブな感情を隠したりふたをすることなく、時間を取って心の中で整理し、「言語化」することに取り組みます。気持ちを一旦受け止めて、「怒っているな」「動揺しているぞ」と心の中でつぶやいてみると、その感情に振り回されることから少し離れることができます。
 強い感情の裏には、さまざまな感情が隠れています。「疲れている」こともあれば、「心配だ」「期待しているから」ということもあります。裏の感情をキャッチして、それを合わせて心の中で「言語化」できれば、第一歩としては成功です。

アサーティブに表現するには

 自分の強い感情を実際に表現するアサーティブなポイントとしては、次の三つを参考にしてください。
 ①言葉を選ぶ
 「いい加減にして」「ひどい人だ」「許せない」のような、相手を攻撃する表現は、アサーティブではありません。感情は、相手にぶつけるものでも恨みを晴らすものでもなく、自分の状況を適切な情報として表現するためのものだからです。
 相手を責めない表現として公の場で使えるものとしては、「遺憾です」「残念だ」「懸念している」などの表現がよいかもしれません。その時に、裏の感情も合わせると、なお分かりやすくなります。「期待していたので、残念に思いました」「この状況を心配し、危機感をいだいています」という感じです。
 ②理由を簡潔に述べる
 自分の感情が大きく揺れた状況や理由を簡潔に説明します。「今朝ほどの…を後から報告を受けて、とても動揺しました」「今回のミスがクレームにつながることを懸念しています」など、なるべく簡潔かつ具体的、客観的に述べていきます。
 ③長期的な解決を見据えて伝える時は率直に
 私たちが長期的に何を求めているのかを、射程に入れながら話をしましょう。変えたいのは、過去、ではなく未来であるはず。なので、要望は未来に対してのものになるよう意識します。「あの時、○○してほしかった」ではなく、「これからこの点を変えていきたい」という形です。現在と未来については変えることができますが、過去を変えることはできません。
 ネガティブな感情を持つこと自体を、責める必要はありません。感じることはそれでよし、でも問われるのは、「それで、自分はどうするのか」です。爆発させるのか黙るのか、それとも問題解決のための具体的な行動を起こすのか。
 相手や自分という個人を対象にするだけでなく、問題の原因となった状況や環境に対して照準を当てる。そして長期的な課題解決のために、粘り強く対話をしていきましょう。ネガティブな感情を恐れる必要はありません。私たちはそれに対応することはできるのです。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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