電話応対でCS向上コラム

第6回 ポジティブな言葉は人間関係の土台

記事ID:C10063

言いづらいことを伝えることだけが、アサーティブな主張ではありません。相手を尊重し認めるためのポジティブな表現も、アサーティブな人間関係を作る土台となります。

「ほめる」「ねぎらう」は 人間関係の土台

 今やビジネスでは、チャットやメールでのコミュニケーションが主流となり、私たちは今まで以上に「発する言葉」「受け取る言葉」に対して敏感になっている気がします。文字のやり取りの中でも信頼できる間柄であれば、「相手がこう言うのは、きっとこれが理由だろうな」と、言葉の裏にある意図や気持ちを想像しながら話すことができるでしょう。しかし、それほど関係ができていなかったり、お互いの利害がぶつかる相手である場合、文脈や背景が共有できていないため、ちょっとした一言で相手を傷つけたり、意図せぬ形で相手に伝わったり、ということが起こりやすくなってきます。
 今回は、コミュニケーションの中でもお互いの信頼関係の土台となる、肯定的な関わり方について触れたいと思います。

ポジティブなメッセージを 伝えるとは

 仕事を進めていくにあたり、良くない点や改善すべき点というのは、目につきやすく指摘しやすいものです。「これはダメ」「ここは変えてほしい」については気づきやすいものですが、できている点や評価できることについては、「それくらいできて当然」、「わざわざ言わなくても」などの理由で、あえて言葉にしないことが多くはないでしょうか。
 多様なメンバーのいるチームを活かすためには、一人ひとりが価値を認められ、それぞれの力が発揮できる状況を作っていく必要があります。その意味で「ほめる」「ねぎらう」というポジティブな言動は、私たち一人ひとりの価値を高めていくメッセージとなります。
 とはいえ、ポジティブな気持ちを伝えるのは、案外難しいものです。
 例えば、後輩をほめたいけれど何と言えばよいかに迷ったり、先輩に対して「すごい!」「さすが!」などと持ち上げるような言い方になったり。反対に、「若いのにしっかり発言できているね」、「女性/男性なのに、…で素晴らしい」などのステレオタイプを含んだ表現になってしまったことはありませんか?
 「すごい」や「さすが」などの、自分を卑下して相手を持ち上げるようなほめ言葉の場合、相手は「いやいや、そんなことはない、あなただって」と逆に居心地が悪くなってきます。社会的なステレオタイプを含んだほめ方は、場合によっては相手を見下した表現になる場合があり、かえって相手を不快な思いにさせてしまうこともあるので、気をつけてください。

アサーティブなほめ言葉は、 「具体的に」「対等に」

 アサーティブなほめ言葉の原則は、誠実、具体的、対等に、ということです。
①具体的に伝える
 「いつもがんばっているね」というほめ言葉も良いのですが、観察して気づいたことを、エピソードを交えて具体的に伝えるともっとストレートに届きます。
 「午前中、難しいお客さまに対しての対応がとても的確で、横で見ていてもとても素晴らしいと思った」など、相手の言動に言及しながら具体的に伝えると良いでしょう。
②ほかの誰かと比較しない
 例えば誰かと比較して「〇〇さんより、ずっと仕事が早い」と言うのは、別の第三者を下に置くことになり、対等ではありません。また、「私が入社したころは全くできなかったのに、君はできていてすごいよ」と自分を卑下することも、相手への対等なほめ言葉にならないので要注意です。
 原則は、“本人の行動の何が良いか”を具体的に伝えること、そして、比較するのであれば過去の本人と比べることです。「お客さまとの対応が丁寧で正確で、半年前に比べてとても良くなったと思うよ。がんばったね」。そんな言葉を伝えてみましょう。
③普段から良い点を見つける
 ポジティブなメッセージを伝えるためには、普段から小さなことでも相手の良い点を探しておきましょう。「以前に比べて成長しているのはどこか」「この人がチームに貢献しているところは何か」「ほかの人にはない、ユニークな点は何か」など。そして、言葉にする時は、小さなことを、なるべくその場で、本人に伝えることをお勧めします。
 以上のことは、対面であっても、チャットやメールであっても、原則は同じです。お互いの良い点や評価できる点について、面倒くさがらず、照れることなく、具体的に対等に言葉にしていくことで、率直に話のできる関係の土台ができます。信頼関係を築く大切な出発地点として、アサーティブなほめ言葉を意識してみてください。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

関連記事

入会のご案内

電話応対教育とICT活用推進による、
社内の人材育成や生産性の向上に貢献致します。

ご入会のお申込みはこちら