電話応対でCS向上コラム

第20回 対話を始める前に必要な準備~解決できる、という自信~

第三者が当事者同士の話し合いを促し、トラブルを解決に導くメディエーション(調停)。前回は、人によって態度が変わる同僚に対して感じた違和感を例に、“相手に配慮する”ということについて考えました。今回は、以前ご紹介した給湯室の問題を例に、対話を始める前の段階で、参加者たちが持つべき心構えについて考えてみたいと思います。トラブル収拾の極意を学び、当事者同士の相互理解を促すコミュニケーションの基本を身に付けましょう。

自分の思いは表裏なく伝える

今回は、以前ご紹介した給湯室の片付けの問題を例に、対話をする上で当事者同士が持っておくべき心の準備についてご紹介したいと思います。

Hさんの会社では、女性社員が仕事終了後に、給湯室の茶碗やゴミの片付けをするのが慣例となっていました。しかしそれを、Hさんは拒否しました。

これについて、当事者のHさんと先輩の女性社員で対話の場を持ちましたが、話は平行線のまま解決には至りませんでした。そんな時は一度、違うテーマ、たとえば「配慮とは何か?」について話し合いをしてみると良いでしょう。例えば、「配慮とは」、自分の意見を一旦横において、相手の意見を「とりあえず聞いてみること」、相手が本当は何を言おうとしているのかを考えながら聴くこと、自分の言動が相手方にどのように受け取られているのかを考えながら発言する、などと出れば、ウォーミングアップとしては十分です。そして、参加者が自分の意見を発言することに慣れてきたら、あらためて対話を再開しましょう。

とはいえ、やはりHさんとしては、本題となると本音を話しづらいかもしれません。しかし、本音をぶつけ合わなければ問題は解決には至りません。メディエーターは、Hさんに「ご自身の思いは、表裏なく伝えることが大切です」と言って背中を押してあげると良いでしょう。

するとHさんは「慣例だからというだけで押し付けられるのは嫌ですが、わたしは決してゴミの片付けが嫌だから、というわけではありません」と率直な気持ちを話してくれるかもしれません。

次に、Hさんの先輩にも意見を聞いてみましょう。

すると、Kさんからは「こちらとしては当然と思っていたことに異議を差し挟まれて驚いた、というのが本音です。しかし、この話がこじれたのは、わたしたちのかたくなな態度にも問題があったと今は思っています」と、以前よりも柔軟な意見が出てきました。

大事なことは人によって違う

人は、目の前にある具体的な出来事に向き合うと、どうしても自分の思いにこだわり、話し合いがうまくできないことがあります。このような場合には、本題に入る前に、違うテーマで話し合いなどをし、対話の参加者に「自分たちは話し合えばできるのだという自信、自分たちで解決できるのだという自信」を持ってもらうことが大切です。

参加者が対話に対して自信を持って参加できれば、雰囲気や相手に対する思いにも変化が生じてきます。そしてこの自信を持てるように促すことは、メディエーターの重要な役割のひとつでもあります。

こうした問題は「個人間の問題であるが、職場全体の問題でもある」と捉えることができます。このような問題が職場にあるということを社内に知ってもらい、職場全体の問題であることを認識してもらうことは、社内コミュニケーションの円滑化にもつながります。生活の大半を一緒にする職場の中で、少しでも気持ち良く過ごせるよう、一人ひとりが意識を持つことが重要なのです。

稲葉 一人(いなば かずと)氏

中京大学法科大学院教授。東京・大阪地裁判事、法務省検事などを経て、現在本務のロースクールのほか、久留米大学医学部、熊本大学大学院などで教壇に立つ。また、日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会委員・専門委員会委員を務めている。米国に留学し、ADR(裁判外紛争解決)を研究し、メディエーションの教育者・実践者である。JICAを通じた海外の裁判所における調停制度構築のプロジェクトを進め、2012年10月にモンゴル国最高裁から「最高功労勲章」を授与された。

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