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電話応対でCS向上コラム

第22回 メディエーターに必要な資質~第三者として対話を支える~

メディエーション

公開日:2014/11/10

第三者が当事者同士の話し合いを促し、トラブルを解決に導くメディエーション(調停)。前回は、メディエーションの目的をあらためて整理すると共に、メディエーションの成功とは何かについてご紹介しました。今回は、第三者として調停に関わるメディエーターに必要な資質と対話に介入するうえでの注意点について、あらためて考えてみたいと思います。トラブル収拾の極意を学び、当事者同士の相互理解を促すコミュニケーションの基本を身に付けましょう。

メディエーターに求められる資質

メディエーターに必要なのは、いかに困難な問題に出会っても、当事者の困難さをそのまま捉えるのではなく、その困難を「どうにかできる」と感じられる能力です。これは、当事者の気持ちや立場には共感できるが、問題の困難さには共感できない、とも言い換えることができるでしょう。

気持ちや立場にだけ共感し、「どうにかできる」と思って動いても、善意の押し売りになってしまい、問題は解決しません。メディエーターはあくまで対話のサポートをする黒子ですので、第三者として関わりながら、対話を促さなければなりません。つまり、対話においてメディエーターは、あえて思考の補助線(当事者とは少し違った視線)を示し、その補助線をたどりながら、会話をコントロールする役割を担っているのです。

対話を進める中で当事者に質問をする場合にも、質的問いではなく、量的問いをメディエーションでは重要視します。「質的問い」とは、クローズ・クエスチョン(YESかNOで答えられる質問)のような二者択一の質問を指します。「量的問い」とは、オープン・クエスチョン(答える幅を相手に与える質問)のように自由回答のできる質問を指します。どれくらい、どのようにという質問です。しかし、当事者からすると、量的問いを重要視することで、問題をすり替えられたと感じてしまうケースもあります。

これを私は「問題のすり替え問題」と呼んでいます。たとえば、医療に関する問題が発生したとしましょう。遺族の方は「先生が悪いのではありませんか?」という疑問(質的問い)を病院側に投げかけます。メディエーターは、(責任があるかどうかを避けて)「まずは、何が問題だったのかを話し合いませんか」と、質問を量的問いにすることを提案する場合があります。しかし遺族の方はこれを、問題をすり替えられたと感じてしまう。これが「問題のすり替え問題」です。

メディエーターには、当事者の気持ちを察する能力も求められます。当事者の気持ちに配慮したうえで、対話が質的問いに偏り、停滞していると感じた場合には、対話のサポート役として量的質問をするよう、当事者を促しましょう。

問題を分解するための提案をする

それでも話し合いが進展しない場合には、目の前の問題を少し分解するために、条件を示したり、仮定形で考えることを提案することも大切です。

仮に、一方は100万円を要求し、もう一方が50万円しか払えないと主張しているとしましょう。もしこの時に、もう一方が55万円を払うと譲歩してしまうと、もっと出せないのかと一方が迫る場合もあるでしょう。これでは公平な話し合いとはいえません。こうした事態を未然に防ぐためには、メディエーターとして「もし、相手が何かを譲歩してくれたら、あなたは何を提供しますか?」と、“双方”から聞くと良いでしょう。

対話におけるさまざまなコントロールを求められるメディエーターですが、時に、対話を推進させようとして、別の問題に誘導してしまう危険性もあります。その点に十分に注意したうえで、第三者として対話をしっかりサポートしましょう。

稲葉 一人(いなば かずと)氏

中京大学法科大学院教授。東京・大阪地裁判事、法務省検事などを経て、現在本務のロースクールのほか、久留米大学医学部、熊本大学大学院などで教壇に立つ。また、日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定委員会委員・専門委員会委員を務めている。米国に留学し、ADR(裁判外紛争解決)を研究し、メディエーションの教育者・実践者である。JICAを通じた海外の裁判所における調停制度構築のプロジェクトを進め、2012年10月にモンゴル国最高裁から「最高功労勲章」を授与された。

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