電話応対でCS向上コラム
第27回 人を動かすことば力 アナウンサーのノウハウから学べ夏はビールのおいしい季節。お酒が進むと仕事の愚痴も出てくるものですが、以前居酒屋で居合わせた男性客が「最近の若者は言われたことはやるが、自分で行動を起こさない。考える力がない」とぼやいていたのが印象的でした。確かにこうした傾向に悩む企業なども多いようです。そこで、今回は「考える力」を育む方法をご紹介します。
大切なのは、考える習慣とことば力
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これまでの知識偏重といわれた画一的な詰め込み教育の時代から、考える教育への転換に向かい始めたとはいえ、日本はまだまだ受験社会・塾社会が支配的で、考える教育の成熟には程遠い過程にあります。さらに読書量の減少も大人社会から考える力を衰退させる原因の1つと考えられます。この状況は、会社で部下の若者を責めても解決しません。そこで下記の会話例を見てみましょう。
部下に考えを持ってこさせるこの方法は、「経営の神様」と言われた松下幸之助さんの手法です。幸之助さんは部下が相談に来てもすぐには答えてくれません。逆に「あんたはどない思う?」と必ず問い返しました。
部下は自分の考えを持たずに行っても、社長は答えてくれないことに気付き、考えるようになるのです。
「考える力」を育むためにもう一つ重要なことは「ことば力」です。私たちはものを考えるときに、必ずことばで考えます。ことばが貧しい人は、考えることも貧しいのです。ですから、考える力を磨くためには、ことば力を高める必要があります。
ではどうやって「ことば力」を磨くのでしょうか? それには「本を読むこと」だと私は考えています。それもたくさん読むことです。視覚から入る映像情報は、思考力を鍛えるには不向きだそうです。つまりテレビや漫画では、ことば力や考える力は磨かれないのです。イスラエルでは、子どもがテレビや漫画を見ることを規制していると聞きました。むべなるかなです。
考えさせる会話例
とある企業の営業部にて
部下:「課長、ご相談があります」
課長:「なんだい?」
部下:「課長に言われて5 号店の決算の詳細を調べたところ、A商品が落ち込んでいまして、早急に手を打たないと、と思います」
課長:「分かった。君にはどんなテコ入れ案があるのかね?」
部下:「それが浮かびませんので、教えてもらいたいのです」
課長:「手ぶらで来るな! といつも言っているだろう。私に聞く前にもっと考えろよ」
部下:「はあ……」
課長:「例えばだなあ、まず不足から考えてみろ。そして3案ぐらいそろえてから来い」
部下:「不足から考えろってどういうことですか?」
課長:「全ての出発点は不足・不満・不便の『3つの不』だ。それをまず徹底的に調べて考えろ! そこから案が見えてくる」
部下:「はい、やってみます」
今回の振り返り
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相談に対してはすぐに答えを教えず、自分で考えさせる
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よい考えは、豊かな「ことば力」から生まれる。
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たくさん本を読むことでことば力を高める
岡部 達昭氏
日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。
このコーナーでは、「もしもし検定」の試験で出題された問題の中から、毎回1問ずつ掲載していきます。
■問題(※2級試験問題より)
電話応対について、先輩から後輩に以下のような指導をしています。
この中で不適切な指導はどれでしょう。次の中から1つ選びなさい。
1.「電話に出た人に伝言を頼む時には『メモのご用意はよろしいでしょうか』と言うのを忘れないでね」
2.「苦情電話を受けたら、まずはお客様に不愉快な思いをさせたことを一度お詫びしてから、詳細説明をするようにしてね」
3.「ビジネスの会話では『できません』とか『無理です』といった否定語はなるべく使わないこと」
4.「用件が複数ある時は、『用件が三つあります』のように、初めに用件がいくつあるかを話すようにしてね」