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第20回 気持ちよく動いてもらえる 依頼メールの書き方【最終回】

記事ID:C10018

仕事は、何かを依頼したり、されたりすることの繰り返しです。その連絡方法は口頭や電話、メールとさまざまで、相手や場面に応じて使い分けます。限られた業務時間の中で、なすべき仕事をスムーズにやりとげるための肝となるのは、依頼の仕方と受け方だといえるでしょう。そこで今回は依頼メールの書き方について解説します。

依頼する時の心構え

 人に用件を頼む時に大切なことは、気持ちよく動いてもらえるように伝えることです。相手に配慮しないで自分の都合や希望を押しつければ、一方的で強引な印象を与えます。

 メールに「○○をお願いします」とだけ書いてあったら、どう思いますか。対応したことがある内容であれば、用件だけを手短に指示されても、素早く作業に入れるかもしれません。仕事が立て込んでいたら「依頼の仕方がちょっと雑だな」と配慮されていないように感じるかもしれません。どうしたらいいか分からなければ「○○を、どうすればよいのでしょうか」と質問や問い合わせをしなくてはなりません。「○○を、こうすればいいのだろう」という推測がずれていたら、作業を完了して報告したり、成果物を提出したりしても「そうではない」「これではない」ということになり、修正や追加作業が発生します。

 伝え方を誤れば、誤解をまねき、気分を害し、ミスを生み、トラブルに発展することがあります。それは自分と相手の双方の問題になります。依頼を気持ちよく受け取り、正確に、無駄なく動いてもらえるかはすべて伝え方次第なのです。

用件と期限は具体的に

 メールで依頼する時のポイントは、用件と期限を具体的に伝えることです。用件がはっきり分からないと、メールを受け取った人は困ります。依頼だと読み取れなければ、作業にはとりかかりません。作業にとりかかっても、求められているのと違うことを行えば無駄になります。対応したのに遅いと思われるのも心外です。

 そうしたボタンの掛け違いが起こらないように「何を」「いつまでに」してほしいという目的と求める行動を明確にします。

 まず、件名を見れば、何を求められているのかが分かるようにします。例えば、件名が「資料について」では、資料について何がしたいのか分かりません。「資料作成について」とあれば、資料を作成することに関する連絡だと分かっても、作成を依頼されるとまでは読み取れません。「資料作成のお願い」とあれば、資料の作成を依頼されることは分かりますが、何の資料を作成するのかは分かりません。「○○社提案資料作成のお願い」とあれば、○○社へ提案するのに必要な資料の作成を依頼されることが読み取れます。

期限を設定するのは失礼!?

 そして、本文では、件名に書いたことに関する詳細を伝えます。日々たくさんの業務にとりかかっていると、期限のないものは後回しにしたり、忘れたりすることがあります。頻繁にやりとりしている内容で、期限の目安に共通の認識がある時は、期日が書かれていなくても問題は起きないでしょう。期日を書くと、かえって失礼になることもあります。そのような場合を除いて、期限がある時は「いつまでに」を伝えます。

 期限を伝えることは失礼ではありません。ただ、メールを受信した日時から期日までに間が短いと失礼になります。期限は余裕を持って設定します。急を要する時は「こちらの都合も考えずに無理を押しつけている」という不快感を与えないために、理由を添えると受け入れてもらいやすくなります。

 気持ちよく動いてもらうための工夫は一つではありません。相手に思いをめぐらせて言葉を選び、タイミングを計ってメールを送りましょう。

 本連載は今回で最終回となります。最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。ビジ
ネスメールの書き方や送り方に悩んだ時、困った時に、本コラムが少しでも皆さまのお役に立つこと
ができれば嬉しいです。

直井 章子氏

一般社団法人日本ビジネスメール協会 株式会社アイ・コミュニケーション 専任講師。ビジネスメール教育の専門家。ビジネスメールの教育研修プログラムの開発、実態調査や検定試験に携わる。官公庁や企業などでのビジネスメールや文章に関する研修やセミナーでの講演回数は100回超。新聞や雑誌、ウェブ媒体などでの掲載多数。著書は『このフレーズが決め手!伝わるモノの書き方のコツ』(ナツメ社)など3冊。

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