電話応対でCS向上コラム

第15回 ベテランメンバーと率直に話す

記事ID:C10090

経験や年齢が上の相手に対して、遠慮しすぎることなく、自信を持ってはっきりと自分の意思を伝えるには、どのような点に気をつけたらよいのでしょう。今回も前号に続いて、ケーススタディで解説します。

ベテランメンバーに遠慮してしまう

 自分よりも年齢も経験も上のメンバーに対して、指示や指摘が難しいという声をよく耳にします。例えば、チームの責任者として、ベテランメンバーに指示を出さなければならない時。一回りも二回りも年上の社員に対して、仕事の進め方を変えてもらう必要がある時など、どんな風に伝えたらよいか迷ったことはないでしょうか。
 年齢や経験が上、押しが強い、プライドが高いなどということで、ベテランメンバーに必要以上に気をつかい、下手(したて)に出て話をすることは効果的ではありません。反対に正論という武器で相手を説得しようとしても、反発を招くだけです。アサーティブは「率直に」「対等に」が原則です。とすれば、どのようなことを意識すればよいのでしょう。

例えば…新しいマニュアルに従ってほしい

 自分は現場の作業チームでリーダーをしています。年上でベテランの竹下さんは、新しくなった作業マニュアルに従わず、これまで通りのやり方で進めています。何度かお願いしていますが、なかなか新マニュアルに従ってくれません。どう話せばよいのでしょう。

率直に話し始める

 職場の多様性が広がるということは、立場や経験値が必ずしも一つの尺度で測れない関係性が存在することです。これまでのように、「経験がある者がない者に指示を出す」であればすんなりことが運ぶのでしょうが、ここでは経験も年齢も「下」の自分が「上」の人に指摘をしなければなりません。
 まずは話し始めを工夫しましょう。遠慮して遠回しになったり、前置きが長くなりすぎたりしないように、“率直に”話し始めることを意識します。
 「竹下さん、新しいマニュアルについて、一つご相談があるのですが、今いいですか」
 こんな風に、端的に率直に話し始めるとよいでしょう。

お願いは行動レベルにして具体的に伝える

 「ちゃんとマニュアルに従ってほしい」などの表現はおすすめしません。竹下さんは竹下さんなりに“ちゃんと”業務に取り組んでいるからです。
 曖昧な表現を極力避け、具体的な行動レベルにしてお願いをしましょう。
 「…のリスクを避けるために、X工程については必ず××の手順で進めていただきたいのです。竹下さん、ご協力をいただけますか」
 相手に今後どのように行動してほしいのかを、具体的な行動レベルに落として伝えるようにしてください。

自分の責任を認め協力する旨を伝える

 「相手が100%悪い」「100%変わるべきだ」という考えでは、コミュニケーションは進んでいきません。自分自身も問題解決の当事者であると考え、自分の責任を認めます。
 「自分の方でも、新しいマニュアルや手順の重要性について、竹下さんにきちんと説明してこなかったと思います。その点については、こちらにも責任があります」
 自分の側の責任を謙虚に認めることで、相手と敵対するのではなく、問題解決に向けての協力関係が築きやすくなることを覚えておきましょう。
 その上で、自分も相手に協力する旨を伝えます。
 「マニュアルで使いづらい点などがありましたら、ぜひ聞かせてください。皆が使いやすいマニュアルになるように、私もしっかりとフォローしていきたいと思います。引き続きよろしくお願いします」

相手は問題解決の協力者

 多様化する職場環境の中で、一つ普遍的なものがあるとすれば、それは、複雑かつ難しい問題を解決するには、異なる者同士が協力するしかない、ということではないでしょうか。
 世代の違い、経験の違い、年齢の違いをマイナスに捉える必要はありません。相手は問題を起こした“悪者”ではなく、問題を解決するための“協力者”である。その視点をもって粘り強く話し合うことで、職場の協力関係や信頼関係の土台を作っていくことも可能になってくるでしょう。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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