電話応対でCS向上コラム

第14回 相談のない後輩を注意する

記事ID:C10087

なかなか相談をしてくれない新人や後輩に、どのように声がけをしたらよいのでしょう。一方的でも遠慮しすぎることでもない、アサーティブな対応を考えてみましょう。今回も前号に続いて、ケーススタディで解説していきます。

「ちゃんと相談して」では変わらない

 相談や連絡が遅れて期限に間に合わない、問題が大きくなった後で発覚したなど、相談や報告にまつわる問題をよく耳にします。特に在宅勤務が進んだ昨今の職場では、社内のコミュニケーションが減り、相談しづらくタイミングを逸してしまうという状況もあるようです。
 とはいえ、この問題に対して一方的に注意をしても、反対に遠回しに言っても伝わりきらず、問題がくり返されるリスクがあります。チャットやメールでの注意は、温度感や危機感が伝わりづらいため、あまりおすすめできません。
 今回は、抱え込みがちな後輩がもっと報告や相談ができるように、注意する側がどのように工夫できるかを考えてみましょう。

例えば…後輩からの相談がないことを注意したい

 まじめで業務に一生懸命取り組んでいる後輩がいるのですが、頼んだ書類の提出締め切りに遅れることが何度か続いています。「なるべく早めに提出してね、難しい場合は声をかけてね」と話してはいるのですが、相変わらず相談がなかなか上がってきません。どんな風に注意をしたらよいのでしょうか。

相手の行動の理由を正しく理解する

 報告や相談がないということは、視点を変えれば、相手の中に「報告や連絡をしてよい」と感じられる安心感がないとも考えられます。この「安心感」は『心理的安全性』とも言われ、自分の発言に対してすぐに否定や批判をされることがないと感じられる関係性を示します。こちらとしてはいろいろと言いたいことがあったとしても、まずは相手がどのような理由で相談できないかを丁寧に聞き出し理解することを、第一のステップとして考えてください。
 その時に「どうして?」「何が問題だったか話して」という詰問口調では、相手は責められたと感じて、ますます心を閉ざしてしまいます。大事なことは、“相手が答えやすい質問を投げる”、を意識することです。「声をかけるタイミングがつかめなかったのだろうか。それとも、忙しそうで聞いてはいけないと思っていたのだろうか。何か理由があるなら教えてもらえますか」など、複数選択肢を示して理由を聞くと相手の本音が出やすくなります。
 相手が相談できない本当の理由を知ることが、正しい解決につながることを忘れないでおきましょう。

「相手」を責めるのではなく「問題」にフォーカスする

 伝える時には、「相談しない後輩」が悪いという言い方ではなく、「相談がないことで○○という影響が生じていること」という「実際に起きている問題」にフォーカスします。解決すべき問題を、具体的に説明するようにしてください。
 例えば、「私が最終まとめを行っているため、ギリギリになるとミスにつながりそうで心配している」という風に。

相手ができることを提案する

 その上で、提案はどんな時も具体的に伝えます。「自発的に・・・・報告してほしい」「早めに・・・相談して」という表現は、まずは相手に正しく理解されないと思ったほうがよいでしょう。あいまいな指示は推測の幅が広すぎて、行動に結びつけるのが難しくなるからです。
 指示や提案は具体的にして「次回は、締め切りの2日前に30分くらい相談の時間をとる、というのはどうだろう」というように、相手ができること、行動に移すことのできるアクションとして提案することを心がけてください。
 相談や報告という結果も確かに大切ではありますが、アサーティブな会話が目指すのは、報告や相談を率直にできる関係づくりそのものです。相手の行動を改善するだけでなく、また何かあった時気軽に相談できる関係づくり、今後も話し合いを続けていける信頼関係を築くことも視野に入れながら、日々のコミュニケーションを取っていってください。

森田 汐生氏

NPO 法人アサーティブジャパン代表理事。一橋大学社会学部卒業後、イギリスの社会福祉法人でソーシャルワーカーとして勤務。その間、イギリスでのアサーティブの第一人者、アン・ディクソン氏のもとでアサーティブ・トレーナーの資格を取得。主な著書に『「あなたらしく伝える」技術』(産業能率大学出版部)、『なぜ、身近な関係ほどこじれやすいのか』(青春出版社)など多数。

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